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小野寺麻里奈は全校男子の敵である  作者: 田丸 彬禰
第十一章 光と闇の邂逅
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続 がーるずとーく Ⅶ

 千葉県の田舎にある千葉県立北総高等学校通称北高。


 その敷地の端にポツンと建つ古い木造校舎の一室では、この部屋を部室として占拠している関係者たちが唯一の男子部員の恥ずかしい行為を嘲笑しながらとりとめのない会話を楽しんでいた。


 それはまったく中身のないものである。


 しかし、彼女たちのことをよく知るすべての北高関係者は口を揃えてこう言う。


「部活動がおしゃべりをしているだけ?結構なことではないか。彼女たちがお菓子を食べて雑談しているだけで済むなら我々にとってこれほど幸せなことはない」


 教師たちが畏怖する彼女たちが属する組織。


 その組織こそ、悪名高き創作料理研究会であり、それを統べるのが、小野寺麻里奈なのである。


 さて、今回は六月中旬のある日の会話である。


 その日の朝、始業前のティータイムを楽しむためにまみとともに部室にやってきた春香は、同じ目的でやってきていた先客であるコーヒーカップを片手に雑誌を睨みつけている顧問に声をかけた。


「おい、守銭奴教師。何をしている?」


「見ればわかるでしょう。乙女の必須アイテム『In April』を見ているのよ」


「何が乙女だ。朝から笑わせてくれる。暇なおばさん限定アイテムの間違いではないのか?」


「ひどっ」


「そうですよ、春香さん。乙女のものかはともかく、『In April』は女子高校生の愛読書で、クラスの女子もみんな読んでいますよ」


「それなら、私はそのみんなに入らないようだな。それにまりんだってヒロリンだってその雑誌には興味がないようだぞ」


「それはそうですが……」


「そして、まみたんは大事なことを忘れている」


「な、何でしょうか?」


「そこにいるのは女子高校生ではなく、ただのおばさんだ」


「なるほど。それはそうですね」


「ひどいよ。まみたんまで」


「すいません」


「謝る必要などない。おばさんはおばさんだ。それとも『ケチな』と付けたほうがいいのか」


「それ、絶対違うから」


「まあいい。そのおばさんが女子高校生のフリをしてそれを読んでなぜ涙しているのだ。もしかして読み終わってから買ったことを後悔しているのか?言っておくが、私は九割引きでも買わん」


「失礼ね。違うわよ。……ほら、これよ」


「ん?ムムム」


「私の言いたいことはわかるわよね」


「もちろんだ。これは思い出したくもないあの悪夢の再現ではないか。おい、強欲教師。たった今この本は強制接収されることが決定した」


「何でよ」


「もちろん、教室に戻って、これからまりんとともにやってくるこいつを問い詰めるためだ。何が六花だ。まったく忌々しい」


「それにしても随分きれいに撮れていますね。モデルさんふたりがいいのはもちろんですが、さすがプロのカメラマンさんというところでしょうか」


「まみたん」


「はい?」


「橘と一緒にお仕置きされたくなければ間違っても今の言葉をヒロリンの前では言わないように」

作中に登場する雑誌「In April」の名は、ROUND TABLE featuring Ninoの曲より拝借しました。

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