The Dark Side of The Moon 13
麻里奈たちも通学時に利用する北高近くの駅。
その朝、改札口を出た直後の大学生風の気の弱そうな若い男を両側から挟み込むようにふたりの男が声をかけた。
「お兄さん、ちょっといいかな」
「な、何ですか?」
話しかけてきた男のひとりが持っていたスマートフォンの画面を見せた。
「ほら、これはさっき君が電車の中でやっていたことを撮影したものだよ。まずいよね~。女子高校生をスカートの中を盗撮している大学生。それともプロの盗撮魔かな」
「……」
「このまま警察に行ってもいいけど、手早く……いや、穏便に事を済ませたいので協力してくれるかな」
「……穏便ねえ」
「許してください」
「それは君次第だよ。とにかく一緒に来て話を少し聞かせてもらうよ。それから、せっかく撮影したのに申しわけないけど撮影データを私たちにがもらう。そうすれば警察には内緒にしておくよ」
「……はい。ありがとうございます」
「結構。それにしても盗撮とはいい趣味だね。親が泣くよ」
「い、いや、これはですね。その……つい、出来心で」
……護衛について三日目で四人。ターゲットの松本まみとやらは確かにこの辺では人気があるらしいが、それでもこの数は多すぎる。これは誰かがこのガキどもを雇ってこの娘のスカートの中を盗撮させているとしか思えないな。
……さすがお嬢様というところでしょうが、こうなると今までどれだけ撮影されていたかわからないですね。
……そうだな。今まではデータ没収して絞めていたが、今回の彼はその前にゲロさせてみるか?
……素人相手に力技を使うということですか?尾上さん。
……失礼なことを言うな。そこは我々の技術と言ってもらおうか。
……それは結局拷問ということでしょうが?まったく気の毒なことです。彼も。
……ところで、神門。俺は女子高校生のスカートの中を撮影した写真を見たいなどとはちっとも思わないのだが、大金を払ってまで見たい理由とは何だ?
……なぜ、それを私に訊ねるのですか?
……おまえさんなら彼らの気持ちがわかるのではないかと思ってな。同好の志だろう。彼らと。
……彼と一緒に硫酸のプールに放り込みますよ。




