続 がーるずとーく Ⅴ
千葉県の田舎にある千葉県立北総高等学校通称北高。
その敷地の端にポツンと建つ古い木造校舎の一室では、この部屋を部室として占拠している関係者たちが日々妄想癖のある男子部員が語る夢物語を聞き流しながらとりとめのない会話を楽しんでいた。
それはまったく中身のないものである。
しかし、彼女たちのことをよく知るすべての北高関係者は口を揃えてこう言う。
「部活動がおしゃべりをしているだけ?結構なことではないか。彼女たちがお菓子を食べて雑談しているだけで済むなら我々にとってこれほど幸せなことはない」
彼女たちが属する組織。
その組織こそ悪名高き創作料理研究会であり、それを統べるのが小野寺麻里奈なのである。
さて、今回は再びあの話である。
「先生、随分機嫌が悪そうだね」
「あの顔は小銭を落としたな」
「いや、安いものを買ったと得したつもりで、よく見たら隣の店にもっと安いものがあったに違いない」
「安物買いの銭失いという可能性もあります。まみたんはどう思いますか?」
「え~と」
「あなたたちは私が不機嫌になる原因がすべてお金絡みだと思っていない?」
「思っている」
「当然だろう」
「右に同じ」
「それ以外に考えられません」
「ということは、別の理由なのですか?」
「まみたんまでひどいよ。もちろん違うわよ」
「それは驚きだ。だが、理由はわからないが、そういう時には橘を一発殴るといい。スッキリするぞ」
「ふざけるな。そのようなことで殴られてたまるものか○%×$☆♭♯▲!※」
「橘君なんか殴って面白くないわよ。どうせ殴るなら……」
「殴るなら?」
「あの忌々しい田代玲子を殴りたい」
そして、涙ながらに語られた不機嫌の理由。
「……ということは、田代先生がいつものあいさつを今日は三回もやったということですか?」
「そういうことよ」
「それはご愁傷様です」
ちなみに、恵理子の言う「あの忌々しい田代玲子」とは恵理子と北高の男性教師の人気を二分している恵理子のライバルである北高の数学教師の名である。
そして、この田代玲子は恵理子とは対照的に胸が大きい。
恵理子にとってはライバルの玲子に胸の大きさで差をつけられているだけでも由々しき事態なのだが、彼女が憤慨しているのはそれだけが理由ではない。
挨拶と称して貧乳ネタで恵理子を弄っているのだ。
しかも、当初はふたりだけのときの嫌味だったそれは最近では男性教師の前でも堂々と披露され、しかも男性教師に大うけなのだという。
「ひどいでしょう」
「それはたしかにひどい。先生の気持ちは十分に伝わったよ」
「春香、わかってくれたのね。それで、どうにかして余分な脂肪を自慢するあの性格ブスの田代玲子をギャフンと言わせたいの。何かいいアイデアはないかしら」
「うん、だが残念ながら今すぐにはいいアイデアは思いつかない。とりあえず今はこれで我慢しよう」
「○%×$☆♭♯▲!※○%×$☆♭♯▲!※」




