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小野寺麻里奈は全校男子の敵である  作者: 田丸 彬禰
第九章 人災は忘れなくてもやってくる
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閑話「創作料理研究会の携帯電話事情」 番外編

 あの日から数日が過ぎた部室。


「まりん、ひとつ聞いてもいいか?」


「何?」


「いや、たいしたことではないのだが、聞きたいこととは実は橘のことだ」


「もしかして春香は恭平が好きなのか?」


「そのようなことがあるわけがないだろう。私が聞きたいのは、なぜあの馬鹿だけが『公開処刑事件』を知らなかったのかということだ」


 公開処刑事件。


 それは、五月の連休直後におこなわれた初めての定期試験後に起きた校内中を揺るがしたあの大事件のことである。


「翌日には学校中の話題になっていたアレをなぜあいつだけが知らなかったのだ?あの馬鹿がガラケー愛用者だったからか?」


「それは違うだろうな。あれだけ口コミでも広がっていた話だ。さすがにクラス唯一のガラケー保有者である恭平が情報弱者だから知らなかったということではないだろう」


「それではどのような理由なのだ?」


「簡単だ。普段の恭平を見ていればわかるだろう。恭平の頭には自分にとって都合の悪い情報を自動的にブロックするという素晴らしい機能がついている。そして、おそらく例の話は恭平にとって都合が悪かったのだろう。だから、その重要情報は完全遮断された。まあ、言ってしまえばいつものことだ」


「なるほど。絶対成就しないことをいつも以上に必死になってやっていた橘の姿は私たちにとっては滑稽以外の何ものでもなかったのだが、なるほどあれにはそういう理由があったのか。しかし、今でもヒロリンが自分よりも出来が悪いと橘が信じているとは呆れるばかりだ」


「もっとも、今回の結果は恭平にとっても悪いことばかりではない」


「というと?」


「仮に恭平の企みが成功し、ヒロリンが補習教室に戻っていったとしたら恭平はどうなっていたと思う?」


「さあ。どうなった?」


「怒り狂った教師たちによる表裏両面での集団リンチに遭っていただろうな」


「……それはそれで見たかったな」




 たしかに麻里奈の言うとおり、事情を知らない彼にとっては不本意な結果となったそれは、実は彼にとってラッキーなことだったとも言えなくもない。


 だが、このときに博子の本当の実力に気がつかなかったことが、次回の定期試験での悲しい出来事に繋がることになるのだから、やはり知るべきことは知るべきときに知るべきなのだろう。

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