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小野寺麻里奈は全校男子の敵である  作者: 田丸 彬禰
第七章 その恐ろしき料理の名は
56/130

がーるずとーく Ⅶ

 千葉県の田舎にある千葉県立北総高等学校通称北高。


 その敷地の端にポツンと建つ古い木造校舎の一室では、この部屋を部室として占拠している関係者たちは唯一の男子部員がおこなう小心者と言われるにふさわしい恥ずかしいふるまいの数々を笑いものにしながらとりとめのない会話を楽しんでいた。


 それはまったく中身のないものである。


 しかし、彼女たちのことをよく知るすべての北高関係者は口を揃えてこう言う。


「部活動がおしゃべりをしているだけ?結構なことではないか。彼女たちがお菓子を食べて雑談しているだけで済むなら我々にとってこれほど幸せなことはない」


 彼女たちが属する組織。


 その組織こそ悪名高き創作料理研究会であり、それを統べるのが小野寺麻里奈なのである。


 さて、今回はあの「ヒロリンの創作料理お披露目会」前々日に起きた小さな出来事についての話である。


 昼休みに自称天才料理人ヒロリンこと立花博子に緊急召集された部員たちが第二調理実習室に集まっていた。


「お集りの皆さん。昨晩すばらしい映像を入手しましたのでご披露申し上げたいと思います。では、たっぷりとご覧あれ。タイトルは『恵理子先生のひとり宴会』」


 そして、その十五分後。


「……この悪徳おばさん教師はまったくろくなことをしない。だいたい夜中にこっそりと部室に忍び込んでやることがこれとは情けないにも程がある。しかも、材料はすべて私のお金で買ったものではないか」


「ケチだ、ケチだと思っていたけれども、ここまでとは思っていなかったよ」


「でも、たしかにやっていることは悪いことですが、やっぱり専門家ですね。本当に手際よくおつまみをつくっています。かたづけも完璧です」


「まみたん、今は褒める場面じゃないから」


「あっ、すいません」


「だが、まりんに悪事の証拠をつかまれたこの悪徳教師には哀れな末路と悲しい結末しか待っていないことは間違いないだろう」


「そして、これでたとえどんな悪人も小野寺麻里奈にはかなわないということも証明されたということ%×$☆♭♯▲※○%×$☆♭♯▲!※」


「失礼な恭平だね」


「そうです。橘さんは失礼です」


「もう一発殴っておくか」


「ついでに私もやっておこう」


「○%×$☆♭♯▲!※○%×$☆♭♯▲!※」


「橘を殴ってスッキリしたところで、ちょっと賭けをしないか?」


「賭け?」


「先生がこれについてシラを切るかどうかを賭ける。どう?」


「いいね。じゃあ、私はシラを切る方」


「私も当然シラを切る方に賭けます」


「では、私もそれでお願いします」


「もちろん、私もあの強欲守銭奴教師が白々しくシラを切る方に賭けるぞ」


「俺だってシラを切る方だ」


「橘、貴様はダメだ」


「なぜだ?」


「申し込みの締め切りが過ぎたからに決まっているでしょう」


「定員オーバーでもあります」


「しかも、こちらは常識人限定だ。世界一のヘタレでしかも宇宙一の変態でもあるおまえにその資格などはない」


「ふ、ふざけるな」


「とにかくダメなものはだめだ」


「ずるいだろう。俺だけにハズレに賭けさせるのは。どうせ、そうやって無理やり俺だけハズレにかけさせておいて、罰ゲームと称して理不尽な暴力を振るうつもりなのだろう」


「失礼なことを言うな。それに、おまえに与えられるのは理不尽な暴力ではなく、お仕置きという名のご褒美だ。そうだ、せっかくだから今日は特別厳しいお仕置きを用意してやる。どうだ。これで賭ける気になっただろう?」


「なるか」


「それに恭平君までシラを切るほうに賭けてしまったら賭けになりません。諦めてみんなの明るい明日のために男らしく犠牲になってください」


「何が明るい明日だ。俺だけが明るくない明日などはいらない」


「まったく男らしさの欠片もない奴だ。仕方がないので、ハズレの場合におこなう厳しいお仕置きの回数を一回減らしてやってもいい。それとも『大変厳しいお仕置き』を『まあまあ厳しいお仕置き』にレベルダウンしてやってもいいぞ」


「こんなときにだけ男らしさを持ち出すな。とにかく絶対に嫌だ」


「橘、当たった場合はひとり勝ちだぞ。その場合、おまえはまみたんに好きなだけお仕置きできるぞ」


「うっ、それはなかなか……いや、そのようなことで騙される俺ではないぞ。そう思うのなら、おまえが賭けろ」


「ふざけるな。私はこういうことに負けるのが大嫌いなのだ」


「○%×$☆♭♯▲!※○%×$☆♭♯▲!※」

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