チョコレート戦争 Ⅵ
……ある三人の幼なじみによるバレンタインデー当日夜の会話。
「……麻里奈、お願いがあって……」
「あんたがバレンタインデーに私の家をやってきた時点で何が目的なのかはわかっているわよ」
「本当に情けない恭平君です。今年も戦果はゼロだったのですか?」
「ああ」
「はい、私からの心がまったく籠っていない義理チョコ」
「そして、これが私からのスーパー義理チョコです。ちなみに、まりんさんも私も今年も男子にはチョコはあげていませんから、恭平君は実に貴重なチョコを受け取ったことになります」
「味わって食べてよね」
「あ、ありがとう。ところで……」
「まだ何かあるの?」
「もうちょっと……」
「はあ?」
「その……もうちょっと分けてもらいたいというか……」
「あんた、私たちがあげたチョコでは不満だと言うの?じゃあ、今あげたチョコを返しなさいよ」
「そういうことではなく、これは実にありがたいのだが……」
「はっきり言いなさいよ。男らしくないわね」
「由佳に麻里奈とヒロリンからもらったチョコはもらったうちに入らないとか言われて、勢いで、その……その他にもお前が腰を抜かすくらいの数のチョコを持って帰ると豪語してしまった」
「あらら」
「知らないわよ。由佳ちゃんに土下座して泣いて謝りなさい」
「お前たちもあいつの性格を知っているだろう。お願いだ。少しでいい。分けてくれ」
「どうしたらいいと思う?ヒロリン」
「そうですね。土下座して泣いて頼んだらいいことにしましょうか」
「土下座でも何でもする」
「……兄貴のところに届いたのでもいい?」
「もちろん」
「わかった。じゃあ、見繕ってあげる」
「ありがとう。……それから」
「まだあるの?」
「できれば、その中に松本の……○%×$☆♭♯▲!※」
「あんた、裏口からまみたんの本命チョコを手に入れて、誰にどうやって自慢するつもりなのよ」
「それどころか、男子に知られたらまちがいなく公開処刑になる案件です」
「……すいません。今のは聞かなかったということでお願いします」




