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小野寺麻里奈は全校男子の敵である  作者: 田丸 彬禰
第五章 聖なる館

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がーるずとーく Ⅰ

 千葉県の田舎にある千葉県立北総高等学校通称北高。


 その敷地の端にポツンと建つ古い木造校舎の一室では、この部屋を部室として占拠している関係者たちが唯一の男子部員の並外れた小物感を満喫しながらとりとめのない会話を楽しんでいた。


 それはまったく中身のないものである。


 しかし、彼女たちのことをよく知るすべての北高関係者は口を揃えてこう言う。


「部活動がおしゃべりをしているだけ?結構なことではないか。彼女たちがお菓子を食べて雑談しているだけで済むなら我々にとってこれほど幸せなことはない」


 教師たちが畏怖する彼女たちが属する組織。


 その組織こそ、悪名高き創作料理研究会であり、それを統べるのが、小野寺麻里奈なのである。


 さて、今日の彼女たちの会話は彼女たちが部室を手に入れた直後の話である。


 諸々の事情と偶然の産物により現在部室にいるのは、麻里奈、博子、春香という創作料理研究会が誇る「悪の三巨頭」だけだった。


「春香のおかげで、エアコンが入ったから部室も少しは快適になったよ。明日には備品も入るし、これでやっと本格的な部活が開始できる」


「そうですね。ハルピ、ありがとうございます。ところがですね……」


「どうしたの?ヒロリン」


「問題が山積していまして……」


「問題山積と言う割には、嬉しそうな顔をしているよ。ヒロリン」


「そうですか?」


「もしかして、また第一調理実習室を不法占拠している悪の秘密結社料理研の妨害か。そういうことならすぐさま料理研の小姑どもを殲滅しに行こう」


「いえいえ、もっと身近で、もっと重大な問題です」


「……何?」


「もちろん問題とはまりんさんが備品の設置許可を学校から取っていないことが発覚したことです。もちろんこのクーラーについても設置許可も取っていません。ついでにいえば、まりんさんは明日の備品類の搬入も学校に知らせていません」


「ありぁ~それは大問題だ」


「そういえば、そういうこともあったね。すっかり忘れていた~」


「忘れたのではありません。まりんさんは手続きが面倒になって意図的にやらなかっただけです」


「まあ、そういう言い方もできるが、結果は同じだからたいした差はない」


「いやいやいや、それ全然違うから。それでどうするの?無届けで大型トラックを乗り付けて搬入するというのはさすがにまずくない?恵理子先生もこういうことにはちっとも役に立たなそうだし困ったね」


「そうですね。しかし、今から行っても搬入許可は下りない可能性が高いので、ここは搬入を強行し設置を全部済ませて既成事実をつくってから事後承諾を求めるのが得策でしょう」


「ふんふん。たしかにそれは私好みの策ではある。しかし、違法搬入を考え着くとはヒロリン、おぬしも相当な悪じゃの~」


「何を言っているのですか。それもこれもすべてまりんさんが怠けたことが悪いのです。できないのならできないと言えばよかったのではないですか?そうすれば私が代わりに話をつけてきたものを。見栄を張ってできるなどと言った結果がこれですか」


「まったくだ。それで、ヒロリン。ヒロリンは簡単に言うけれど、校長たちに事後承諾をさせられるだけのものが何かあるの?もしかして校長たちに金を掴ませるの?」


「たしかにそれもいい案ですが、そこまでしなくても、校長たちをコロッといかせる方法はなくはないです」


「あるの?そんなこっちにだけ都合のいい方法が」


「あります。アレを使います」


「アレ?……なるほど、アレか。確かにいいね。アレ」


「アレ?アレって何?」


「恭平君を引き入れる時にまりんさんが使ったもののことです」


「あ~なるほど。私が弄ったあの写真か。だが、確かにアホの橘は見事に引っかかったが、それは橘が愚かだからであって、校長たちも橘と同じように引っかかるとは思えない。ここはやはり金を掴ませるほうが確実だと思うけどね」


「いや、男など年齢に関係なく全員アホだから必ず引っかかる」


「前回よりもレベルをあげる必要はあるでしょうが、私も成功すると思います。ちなみに、恭平君は今でもあの写真が本物だと心の底から思っています」


「そういえば、この前も私のところにあの時の写真をくれとか言ってきたな」


「愚かだ。実に愚かだ。だが、橘が愚かなのは今に始まったことではない。それでどうする?」


「やるさ。もちろん」 

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