橘恭平 妄想日記 Ⅱ
麻里奈に泣いて頼まれたのでガマンして入部してやった創作料理研究会の打ち合わせが最近頻繁に通っている駅前のハンバーガーショップ「ネフェルネフェル」でおこなわれた。
小さなトラブルはあったものの、概ね平穏に会議は終了したといえるだろう。
ちなみに、俺は口だけはよく動くバカメガネ立花博子がつくる料理を試食する係と雑用係を受け持つことになった。
雑用係が何をするのかは知らないが、重要なのはもうひとつの方である。
もちろん俺だって特殊な性癖や変わった趣味などない健全な男子高校生であるから、学校一らしい大きな胸以外のすべてが寂しい見栄えの悪いバカメガネなどではなく、全校男子の憧れの的である周辺でいちばんかわいい松本まみがつくる料理の試食係になりたかったのは当然ではある。
しかし、そう決まったからには役割を完璧にやり遂げる自信はある。
なにしろ俺には「ザ・パーフェクト」という異名があるくらいにすべてのことを完璧にこなす男なのだから。
それから、これは後々誤解のもとになるかもしれないので忘れないように明記しておくが、俺があのバカメガネの試食係になった経緯には不正もなければ裏取引もない。
もうひとつ今日の会議後に俺の人生で最大の戦果といえるものを手に入れたことも書き留めておきたい。
その戦果とは何か?
なんと、これまで散々迷惑をかけ続けられた忌々しい麻里奈の尻尾を遂につかまえたのだ。
具体的なことは麻里奈とふたりで交わした契約書に書かれているが、大事なことは、もし約束を破ったら、麻里奈は女子としてどころか、人間としても生きていけないくらいの辱めを受けるということだ。
もちろん俺にも同様の条件がついているが、安心と信用の男と呼ばれている俺と約束は破るためにあると思っている麻里奈のどちらが約束を破り辱めを受けることになるかなど自明の理といえるだろう。
まあ、俺は人間としての器が大きい名門北高の生徒の手本となる寛大な男であるから、麻里奈が土下座をしてこれまでの罪をすべて告白し泣きながら許しを請えば、罪一等くらいは減じてやることもやぶさかではないが、どっちにしてもすぐにやってくるその日が楽しみだ。
ということで、今日の一句。
「楽しみだ あ~楽しみだ 楽しみだ」




