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黄金の夜明け

 日本における政治の中心地である永田町。


 そして、そこに関わる者の多くが一度はその住人になることを夢見るという首相官邸。


 その建物の現在の主の名を牟田口馨という。


 かつてある人物は最近の世相をこう評した。


「手にした権力を私利私欲のためにだけ行使する人間のクズが国を動かすとは世も末だ」


 実に辛辣ではあるが、それは牟田口という政治家を表す的確な言葉でもある。


 だが、父親以上の毒舌家である彼の娘はさらに厳しい評価を牟田口に下していた。


 曰く、「熱狂的な愛国者を気どり国民を巧みに煽動しながら、実は愛しているのは自分の地位と名誉だけである牟田口馨はもっとも権力を与えてはいけないタイプの小物政治家です。案の定牟田口馨は一度手にした自分の地位と権力を維持するためだけに権限を行使し続けているわけですが、このような人間がこの国のトップに居座って取り巻きたちとともに私利私欲を貪りわが世の春を謳歌していても、国民が何事もなく平和に暮らせる日本という国は本当に偉大だと思います」


 だが、悲しいかな、事実を知らない多くの国民は巧言令色の見本のような彼を熱狂的に支持し、本来は国民の幸福のために使用されるべきその権限を与党内のパワーバランスと自らの地位を維持することにのみに使った結果、良識派と呼ばれる議員は次々に排除され、代わって与党内には腰巾着とリトル牟田口が溢れかえり、結果牟田口の権力基盤はさらに盤石なものとなっていた。


 この悲しい状況についても、先ほどの彼女は端的だが状況をよく知る者を唸らせる比喩を使ってこのように表現している。


「悪貨は良貨を駆逐する」


 さて、悪貨の代表であるその牟田口はこの夜ある人物と会っていた。


「まずはこの前はいい思いをさせてもらった。改めて礼を言わせてもらおう。それで、今日こっそりと会いたいという理由は何かな」


「総理にひとつ提案をするためにやって参りました」


「また、何かうまい儲け話を見つけてくれたのかな」


「最終的には」


「それは楽しみだ。では、聞こう。その宝とは何かな」


「闇に巣食うあの忌々しいネズミどもの莫大な財」


 ……私怨か。


 彼は知っている。


 自分の目の前にいる男が裏で糸を引いていたある儲け話が立花家が実質的オーナーである橘花グループが関わっていたプロジェクトとぶつかり、このプロジェクトを指揮していた橘花グループのエースである一の谷和彦と墓下晶のふたりに完膚なきまでに叩きのめされ大損をしていたことを。


「なるほど。……それで、大井戸さんはあれらをどうしたらいいと思っているのですか」


「もちろん潰す。それしかないでしょう」


「ほう。それは随分勇ましいご意見だが、あれらはなかなか手ごわいですぞ。具体的な方法は何かあるのですか?」


「簡単なことです。あいつらには強大な力があると言われていますが、それは噂だけで実際にそれだけの力を持っているかは甚だ疑問です。私に言わせればやつらはその噂を利用しているだけのただの惰弱なネズミ。ですから、ここ日本は法治国家であり、その権力を掌握しているのは我々だということを教えてやればよいだけのことです。あれだけ好き放題やっているのだ。叩けばいくらでも埃が出てくるでしょう」


「まあ、叩いて埃が出るのはお互い様でしょうが」


「たしかにそうでしょうね」


 それはお互いに相手を指した言葉だった。


 だが、ここでふたりの差というものが露わになる。


「……おっしゃるとおりです。まったくお恥ずかしいかぎり。アハハ」


「それほどお気にすることはないでしょう……」


 一方は自分をよく知り、そして自らを笑いものにできたが、もう一方はそれができなかった。


 それは実に小さなことである。


 しかし、この小さい出来事で見えた些細な差がのちにふたりの命運をわけることになる。


 鏡に映った醜い自分に気づきもせず、ただただ自らに酔ったその男の言葉は続く。


「……なにしろ権力を握っているのは我々ですから。そこが我々と奴らの違いです。さて具体的な策ですが、まずわが党お抱えのマスコミ、それから金を握らせている評論家やコメンテーターだのを使ってあいつらを大々的に叩き、平行して総理も得意とする戦術、すなわちわが党の飼い犬どもを使って大量の扇情的な書き込みをして単細胞のネットの住人たちを洗脳しSNSで情報を拡散させて世論形成をします。そうやって、やつらを白日の下に引きずりだして簡単には身動きできない状態にしてから、天誅を下す使者として警察を動かす。最終的にはやつらを取り潰し不当に蓄えた資産をどさくさに紛れてそっくり頂く。元々表に出せない金だから訴えることもできない。いかがですか?」


「……安い報酬で我々に協力してくれている方々や重要な支持基盤である人たちに対して、そのような言い方をすることを私は好まないな」


「フフッ。総理だって心の中では私と同じことを思っているでしょうに」


 ……たしかにそうだ。しかし……。


 たとえ内心でそう思っていても、そのようなことをライバルの前で軽々しく口にしないことこそがここの住人になる秘訣なのだと、口の軽い相手を心の中で嘲ったものの、口に出したのは別の言葉だった。


「……それはそれとして、聞いているだけではまあ結構な話だが、私が知っているかぎり、あれらの財産の大部分は例のアレを除けば正規に取得した国債と株だ。たとえ、すべてがうまくいってもそう簡単に奴らの資産を横取りするのは簡単ではないだろう」


「いいえ。もし、そうであってもやりようはいくらでもあります。たとえば脱税容疑をでっちあげて没収し国庫を経由した横流しで手に入れるとか……」


「それに、あれらが抱える硬軟取り揃えた私兵は非常に強いと聞いている。そう簡単にはいかないように思うのだが」


 もちろん、そこには先日、大井戸の儲けの話を叩き潰した例のふたりも含まれていたのだが、言われた方はどうやら牟田口の嫌味にまったく気がつかなかったらしく、なおも勇ましい言葉を並べ立てる。


「そもそも日本国内で武器を持ち歩いていること自体法律違反なのですから遠慮する必要などないのです。それに武装しているといっても所詮チンピラの類。やつらの力などたかが知れている。たとえ、やつらが本当に強くても大した数は揃えていない。警察にもあの程度の無頼なら簡単に抑え込むだけの組織はありますし、万が一それでも足りなければ……」


「……自衛隊か」


「そうです」


「しかし、あれらも一応は日本国民だ。国民に対して自衛隊を使うのはまずかろう」


「重武装したテロリストが国家転覆を狙ったとでもレッテルを貼ればいいでしょう。その辺の情報操作はお任せください」


「だが、そのやりかたは法律的には色々と問題がありそうだ」


「そのための権力ではないですか。目障りなネズミを葬ってしまえばこっちのもの。その後の法解釈の変更など容易いですし、それでも足りなければ新たな法律をつくるなり現行の法律を改正すればいいでしょう。まずは実力行使です。とにかく私にネズミ退治の指揮を執らせていただければ、総理が満足する結果を出してご覧にいれます」


「そこまで言うからには相当な自信があるのだな。よかろう、承知した。……それで、その見返りは何かな。言うまでもないことだが、ここにいるのは我々ふたりだけだ。時間の無駄になる腹の探り会いはなしということでお願いしたい」


「そういうことなら……まず、次回の内閣改造で然るべくポストを頂きたい。そして、こちらがより重要なのですが、あなたの後継者の地位を約束していただきたい。そして、最後に没収したやつらの資産の二割」


 ……この前の大損の穴埋め程度にしておけばいいものを。欲深な守銭奴め。


「随分な要求に思えるが」


「そうですか?私にはそれほど不当なものとは思えませんが」


「……わかった。すべて約束しよう。だが、それはあくまでそのネズミ退治とやらに成功したらの話だ」


「もちろんです。では、さっそく準備に入ります。まずはネズミを日の当たる場所に引っ張り出してご覧にいれましょう」




 ……甘いな。あれらをチンピラの延長程度と思っている時点で、すでにその計画は破綻している。


 ……それにあれらがその程度の小物ならなら私がとっくにやつらのサイフに手を突っ込んでいるだろうが。


 ……そもそもデカい口を叩いているが、頼りにしているその力を持っているのは私ではあり、私が手を貸さないかぎり何もできないではないか。何のことはない。おまえさんは他人の褌で相撲を取っているだけだ。それで、次期首相をねだるとはおこがましいにも程がある。


 ……この程度の男があれらに手出しして望みを成就できるはずもないことは当然だが、問題は自分たちに対して手をあげた相手をあれらが許すはずがないことだ。まあ、大恥をかいての議員辞職くらいは免れないな。どっちにしてもこれで私の地位を脅かす者が一人減ったことになる。


 ……有力なライバルが勝手に泥船に乗って溺れ死ぬなど願ったり叶ったりだが、その泥船に自分も乗るなどまっぴらごめんだ。


 ……さて、私はどう動くべきか。


 ……考えるまでもないな。では、それを実行するとしよう。




「親父、学校を休ませて博子まで呼び寄せるほどの重要案件とは何だ」


「実は昨晩永田町から電話が入った」


「金の無心か?それとも外交上のもめ事の仲裁か」


「いや、その程度なら博子まで呼び出す必要などないだろう。その情報によれば近いうちに我々を狙い撃ちにする企てが始まるそうだ」


「ホワイトハウスの強欲セールスマンか。それにしてもエアフォースワンを棺桶にするのがお望みとはあれもずいぶん変わった趣味をお持ちのようだ」


「いや、相手は日本人だ」


「ということは、あのボンクラ総理か。自分が手にした権力を過信しているようなら、それが大いなる勘違いであることをたっぷりと教え込んでやる。もちろん授業料はやつの命だ」


「お爺様、その情報は永田町の誰からのものですか?」


「そこにいる血の気の多い単細胞が言うところのボンクラ総理だ。牟田口が直接電話してきた」


「何だと。ということは、相手はボンクラではないということなのか」


「牟田口のところにそのプランを持ち込んできた者がいるのだ。牟田口はそれを我々に知らせてきただけだ」


「裏は?」


「取った。間違いない」


「その無謀な人物は誰なのですか?」


「大井戸真一」


「弁舌爽やかな首相候補のひとりと呼ばれている人ですね。独身ですしイケメンだと女性にも人気があるとか。残念ながら私の趣味ではありませんが」


「親父は気骨ある男だったが、奴は顔だけで売っている世論に乗っかったただの風見鶏だ。それに博子は弁舌爽やかなどと言ったが、教養のなさをその場しのぎの美辞麗句で胡麻化しているだけであいつの話は本当に中身がない。言語明瞭意味不明瞭とはあいつの演説のことを言う。それにあの男の実績とは何だ。たしかに選挙の時は人寄せパンダとして活躍はしているが、国民のためにこれをやったと自慢できるものが何かあるのか?国民のためになにひとつやってはいないあんなやつがなぜ国民に人気があるのか俺にはまったく理解できない。だが、あの口だけ男はボンクラ総理と仲が悪かったはず。それがいきなりたいそうな話を牟田口に持ち掛けたというのか」


「いや。どうやら裏でつながっていたようだ。まあ、政治家だからそれくらいは当然だが、こいつは牟田口以上に金に汚い。そして、それ以上に女性関係がひどい。こいつの甘い言葉に騙された女性たちがこれを見たら泣くぞ」


 三人で一番年長の男が放りだした彼に関する資料を眺めると残りふたりも苦笑する。


「……これを日の当たる場所に出すだけでこいつの政治生命は終わりだろう」


「……本当に。これはひどいですね。この乱れた女性関係は好きになれません」


「それで女好きのこの低能はどうやって我々と勝負しようというのだ」


「まずマスコミが我々を大々的に取り上げるのだそうだ」


「口だけ男がどんなに騒ごうがどこも動くわけがない。そんな話に飛びつくのは名もない三流週刊誌だけだ。そんなところがいくら書き立てようが恐れることはないだろう」


「しかし、蟻の穴から堤も崩れるということわざもあります。小さすぎて直接的な力が及ばないのなら間接的にでも圧力をかけて絶対に記事にさせないことが肝要です」


「私もそう思う。さすが博子。おまえも少しは娘の用心深さと冷徹さを見習え」


「……それで、それから後は?」


「最終的にはここに乗り込み我々を皆殺しにするそうだ。そのときは警察どころか自衛隊まで使うなどと息巻いているらしい。そして死人に口なし、残った財産は与党の幹部で分配するそうだ」


「牟田口首相はそれを許可したのですか?」


「やれるものならどうぞお好きにと言ったとか。もっとも今回の企てをあやつも成功すると思っていないようだな。だから、大井戸が失敗した後の火の粉が自分のところに飛んでこないようにいち早く我々に知らせてきたのだろう」


「ずる賢いボンクラめ。とりあえず、まずあいつを消すか」


「だが、あの男がすぐに知らせてきたのは事実だ。相手が動き出せばすぐにわかることだったが、情報は早ければ早いほうがいいのもたしかだ。とにかく牟田口は見逃してやろう。さて、ここからが本題だ。どうする?」


「私にいいアイデアがあります」




 それから二週間後。


 大井戸真一は病室にいた。


 それは彼にとっては予定外のことが続いた結果だった。


 十日前、小さな出版社が発行する週刊誌が彼が複数の女性と交際をしていることを伝えた。


 ここで腰が低いように見えるが、実は傲慢な性格である大井戸が大きな過ちを犯す。


 相手が小さな出版社だと甘くみた彼は週刊誌の内容を強く否定しただけでなく、週刊誌を名誉棄損で告訴すると息巻いたのだ。


 だが、その発言の直後、今度は大手週刊誌が別の女性との交際を報じ、彼らのライバル誌がさらに別の女性との交際を伝え、さながら彼の女性関係暴露合戦となる。


 そこに絶妙なタイミングで不正献金や口利き疑惑などこれまで知られていなかった大小さまざまな怪しい錬金術が露わにされる。


 まさに彼が立花家に仕掛けるはずだったことが自らの身に降りかかってきたのだ。


「肝心なときに余計なことをする三流記者どもが」


 怨嗟の言葉を口にしたものの、まずは足元の火事をなんとかしなければならない。


 すでに「若く、爽やか」というイメージ、いやメッキは完全に剥がれていたのだが、まだ知られてはいない多くの闇を抱えていた大井戸がこれ以上の延焼を防ぐために頼ったのが、自分自身と彼の取り巻きがこの手の不祥事を再三再四起こし、そのたびにもみ消し成功していた牟田口だった。


 だが、牟田口の対応は冷たかった。


「大井戸さん、この状況では私がしてやれることはない。それよりも知り合いの病院を紹介するから、そこでしばらく息抜きをしたらどうだろうか。人の噂も七十五日とも言うし」


 彼を立花家に売り、この状況を演出している者たちに間接的に手を貸したことになる牟田口が今更火中の栗を拾うような真似をするはずがないのだが、まさか相談したその日のうちに密談した相手に自分が売られていたなどとは思ってもいない大井戸は電話口で逃げを決め込む牟田口に不平を並べたてたものの、彼自身もそれ以上の選択肢が思い浮かばないこともあり、渋々それに従うこととなった。


 もっとも、牟田口が薦めた病院に逃げ込む、駆け込み寺的入院は都合の悪いことが起きた場合に多くの政治家が使う常套手段でもあり、また意外にもこれは逃げ切ることができる確率が高い策でもあったのだが、残念ながら彼は逃げ切りに成功したひとりとしてその列に加わることができなかった。


 もちろん、それは彼が対した相手があまりにも悪かったからなのだが、彼はそれに気がつくことがないままその時を迎えることになる。


「回診です」


 その日、朝食が終わってしばらくすると、白衣姿の医師らしき男ふたりが彼の個室にやってきた。


「回診?そんなものは必要ない」


 大井戸は面倒くさそうに手を振って追い返そうとしのだが、ふたりはお構いなくベッドに近づく。


「まあまあ、そう言わずに」


「医院長には話をつけてある。回診など不要だと聞いていないのか?」


「はい。聞いていません」


「なにしろ、今日来たばかりなもので」


「何だと。とにかく、もうすぐ客が来る。出ていけ」


「そうはいきません。それにあなたの新しい愛人は来ませんよ」


「どういうことだ」


「こちらで丁重なお断りの連絡をしておきました。あなたの死亡を確認してもらうのはやはり医院長がいいと思いまして」


「余計なことを……おい、今何と言った?」


「あなたは今から首を吊って自殺すると言っているのですよ」


「ふざけるな。今すぐ出ていけ」


「おっと、これは遠慮してもらいましょうか。まあ、ナースコールをいくら鳴らしても誰も来ませんが」


「おまえら医者ではないな。何者だ。もしかしてウグっ……。」


「名乗るのを忘れていました。そうですね……では、あの世からのお迎えとでもしておきましょうか。死ぬまでの僅かの時間お見知りおきを」


「自分の愚かさを後悔しながら死ね」




「なるほど。そうなったか」


 大井戸の首つり自殺を知らせる一報が届くと牟田口はそう呟き、表面上は沈痛な面持ちをつくったものの、心の中では自分の判断が正しかったことを再確認し笑みを浮かべていた。


「総理、記者たちがコメントを求めていますが……」


「わかった。すぐに行くからもう少し待たせておけ。ところで、事件や事故の可能性ないのかな」


「警察からは他殺の証拠はまったくなく、また記事は正しく迷惑をかけて申しわけなかったという内容の自筆の遺書も残されていることから自殺で間違いないとの報告が届いています」


「そうか。そうだろうな」


 ……自殺なものか。親を殺してでも自分だけは助かろうとするあの傲慢で図々しい男がこの程度のことで遺書に反省の弁をしたためて自殺などするはずがない。


 ……大井戸はあれらに殺されたのは間違いない。過去の例から考えてもあれらが証拠を残すことはないだろうが、それにしても警察の報告は早すぎる。病院だけでなく、警察にもあれらの協力者がいるのかもしれないな。今後のために調べておく……いや、やめておこう。余計なことをしてあれらに疑いを持たれては面倒だ。


……とにかく、あれらとは絶対に争うべきではない。だが、こちらから手出しさえしなければあの毒牙にかかることがないのもまた事実。まさに触らぬ神に祟りなしだな。




「さすが神門と鏑木のコンビ。鮮やかな手際だった。村崎を始めとした支援グループも完璧な仕事だ。もちろんあの男を病院に押し込んだ博子の計画もすばらしかったぞ」


「ありがとうございます」


「たしかにあの手の仕事が本職であるあいつらを千葉から呼び寄せたのは正解だったな。だが、毒薬を塗り込んでやればもっと簡単に殺せただろうに」


「それでは殺人ということで警察も動かざるを得なくなる。その点自殺となればそこで終了だ」


「しかも、わかる相手にだけはメッセージが届きます」


「そういうことだ」


「ところで、ニュースで遺書があったそうだが……」


「『週刊誌の記事はすべて事実であり、そのようなことをしでかしたおろかな自分はこの世に存在する価値がない』と本人に成り代わり私が書かせてもらいました」

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