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小野寺麻里奈は全校男子の敵である  作者: 田丸 彬禰
第二章 ふたりの新入部員
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チョコレート戦争 Ⅰ

 ……ある中学校の男性教師たちの会話。 


「今年もあの日が近づいてきたわけだ」


「そして、今年が最後の年だ。決戦の日は迫っている」


「憂鬱だ」


「滝川先生が憂鬱になるのはこの時期の恒例行事ですね」


「丹羽先生は、松本まみの担任だから当確でしょうが、私なんか週一回しか顔を合わせない。今年も厳しいかな」


「努力が足りないということでは?勝又先生のような努力をされてはいかがですか」


「あの恥知らずの真似などできるか」


「だが、たしかに見上げた努力とは言える。ヤツは当確だな」


「嫌がらせの為に校長に頼んで、ヤツを遠いところに出張させましょうか」


「そういうことなら、今日の職員会議でチョコの受け渡しを禁止するように提案したらどうなのですか?滝川先生」


「それは去年やったやつがいる」


「どうだったのですか?」


「男性教師ほぼ全員の反対で粉砕してやった。ついでに言えば、提案したその佐久間という教師はすぐに異動になった。というか、追い出してやった」


「……怖いですね。ちなみに、皆さんは松本まみのチョコレートが欲しいから反対したのですか?」


「まあ、それは否定できない。実際に私も欲しいし」


「たしかに、それもある。だが、それ以上の理由がある。この学校でバレンタインデーチョコを禁止などしたら間違いなく学内暴動が発生する。我々はそれを恐れているのだよ、明智君」


「いいえ、僕は明智ではなく織田です。それで、何ですか?その問題とは」


「小野寺麻里奈だ」


「小野寺麻里奈?三年生の。彼女がどうかしましたか?」


「織田先生、彼女の見た目はどう思う?教師の立場ではなく、男として」


「まあ。美人ですね。松本まみはかわいい、小野寺麻里奈はきれい。こんなところでしょうか」


「まあ、そうだろうな。ところが……」


「ところが?」


「小野寺麻里奈は男子にはまったく人気がない」


「そういえば、男子からそんな話を聞いたことがあります。人格的に問題があるとか」


「まあ、それも当たっている。だが、それ以上に男子が小野寺麻里奈を敵視している理由がある」


「それは?」


「絶大な人気を誇っている。女子に」


「はあ?」


「はあ?ではない。明智君、君は本当にわかっていないな」


「だから、僕は織田です」


「織田先生はあの惨状をまだ見ていないから仕方がないでしょう」


「柴田先生だって去年だけでしょう。私や丹羽先生はあれを二回も見せられている。あれだけのものを見たのだから、松本まみのチョコをもらってもバチはあたらないはずだ」


「滝川先生の気持ち、この丹羽にはよくわかります。あれは男として見てはいけないものです」


「まったくだ」


「何ですか?それは」


「我々男性教師の間ではそれを『バレンタインデーの惨事』と呼んでいる」


「バレンタインデーの惨事?」


「そうだ。信じられないだろうが、この学校では本命チョコの多くが小野寺麻里奈に集まっている。これを惨事と呼ばずに何と呼ぶのだ」


「え~と」


「しかも、毎年増えている」


「えっ」


「小野寺麻里奈が一年の時に彼女のもとに集まったチョコは約七十個。これだって圧倒的な数だったのだが、去年はそれが百五十個に増えた」


「百五十……それは、女子の三分の二ということですか?」


「そうだ。そして今年の予想は二百、すなわち、ほぼ全校女子。しかも義理チョコなし。それに対して男子に届くのはこれでもかと思えるくらいのあからさまな義理チョコ。どうだ?」


「……たしかにそれは大惨事です」

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