閑話「創作料理研究会関係者『まりん道』を語る」
千葉県の田舎にある千葉県立北総高等学校通称北高。
その高校の一室でおこなわれた休憩時間のたわいもない雑談。
そこで誕生した「まりん道」の存在を麻里奈本人が確認したのはそれから二日後のことだった。
だが、わずか二日しか経っていないにもかかわらずそれは驚くべき速さで進化を遂げていた。
ひとりの少女の思いつきだった当初はレベルゼロからレベル5までの六段階しかなかったものが、いつの間にか初級から始まる階級を上り一級から初段、最終的には十段までの本格的なものとなり、さらに「まりん道」を華道や茶道と同様に乙女の嗜みとするための同好会まで誕生していたのだ。
「それで、その『まりん道』とやらは何をするのだ?」
不機嫌の極みのような顔をした麻里奈に嫌がらせのようにそう訊ねたのは机の上で胡坐をかぐ北高一スカートが短いことを誇りにしている馬場春香だった。
「知るか。なぜ部外者である私に聞くのだ?」
麻里奈の露骨にみせる不機嫌な顔を楽しむように春香の言葉続く。
「部外者?一番の関係者だろう」
「誰が何と言おうと私は部外者だ。だいたい、そういうことを聞くのは私ではなく……」
春香の言葉を強く強く否定してから、視線を送ったのはもちろん自他とも認める「まりんさんラブ」の松本まみだった。
「確かにそうだな。どうなの?まみたん」
「同好会の会長はB組の紺野さんで、昇級をふくめて彼女がすべてを仕切るようです。入ったばかりでまだ初級である私がわかることはそれくらいです」
「まみたんを初級としている時点で、その組織は眉唾だ」
「まあ、それはそうだな」
「言い忘れていましたが、私以外の創作料理研の関係者は自動的に段が与えられるそうですよ」
「まりん愛好会だからまりんが名誉なんたらになるのは当然だろう」
「いらん。それに何がまりん愛好会だ……ん?今、創作料理研の関係者と言わなかった?まみたん」
「そのとおりです。ちなみに、まりんさんに段を与えるなどおこがましいということでまりんさんには段はないそうです」
「よし。そこだけは許す」
「ということは?」
「ヒロリンは名誉十段、先生は名誉八段、春香さんは名誉初段が与えられると言っていました」
「まりん愛好会の名誉初段?まみたんと違いまりんを恋愛対象などにしていない私にはそのようなものは必要ないと言いたいところだが、先生に負けるのだけはどうも納得いかない。その差はどこから出るのだ?」
「あふれ出る人徳の差でしょう」
「なおさら納得できんではないか」
「では、胸の大きさかしら」
「おい。チョット待て、そこの守銭奴貧乳教師。私が胸の大きさで学校一の巨乳であるヒロリンに負けているのは認めよう。だが、なぜこの私があるかないかもわからないかわいそうなバストの持ち主であるがめついだけのおばさん教師よりも下にされなければならないのだ」
「それは客観的事実というか、現実というか……ねえ、橘君」
「○%×$☆♭♯▲!※○%×$☆♭♯▲!※。何も言う前に俺を殴るな」
「人徳でも胸の大きさでもないのは間違いないがどっちにしても納得できないのは事実だ。ここはやはり橘をお仕置きして憂さ晴らしを……そういえば橘はどうなる?意気地も根性ないお仕置きされるために生きている取り柄のないつまらぬ生き物ではあるがとりあえず性別はオスだから除外されるのか?」
「おい、春香。とりあえずとは何だ。しかも、その言い草では俺は人間でもないように聞こえるぞ。言っておくが、俺は名門北高男子と呼ばれるに相応しい立派な○%×$☆♭♯▲!※○%×$☆♭♯▲!※」
「……橘さんは……まりんさんの下僕なので特別に初級見習いとして入会を認めてあげるそうです」
「よかったですね、恭平君。仲間に入れてもらえて」
「いいわけないだろう。断固拒否だ。誰が麻里奈ごときの下僕など○%×$☆♭♯▲※」




