38.
ひどく長い時間に感じる。
目の前ではルイがリュウとライと俺に怒っている。
「可愛い子には旅をさせよってやつだろ。リュウもたまには危険を冒したっていいじゃないかよ、な。」
「ロイ!あなたは無責任なことを言わないで!」
「へーい。」
そんな俺たちを、ソニヤと女の子が不思議そうな顔をしてみている。
触らぬ神に祟りなし、俺はそっとルイから離れ二人に近づいた。
「やあ、燈。はじめまして。」
ソニヤが即座に通訳してくれる。
「あなたの名前は?」
「ロイ・ゼラルだ。お前の兄貴の友達だよ。」
「お兄ちゃんは今何をしているの?」
「レイは十歳ころ我々宇宙警察SPACE軍によって保護された。それ以降本人の希望もあって、そこで働いている。」
「宇宙警察……聞いたことある。ここに大人がいたころ、皆怖がっていた。」
「悪者を捕まえるからな。奴ら側からしたら怖いだろう。」
「じゃあ、あなたたちは本当にいい人なの?」
いい人かと問われて自信をもって頷くのは難しい。
「それはどうだろう。俺は正しいことをしていると思っているが、お前の言う大人みたいな人からすれば俺たちは間違った存在、悪い人だ。」
「隊長、何言っているんですか。」
ライの呆れたようなため息が聞こえた。
「我々宇宙警察SPACE軍はどんな国の力も受けない、永久中立軍として設立されました。宇宙戦争に嫌気の差したいろんな国の人が集まってできた組織です。」
燈はじっとライの話に聞き入っているようだった。ソニヤの翻訳が追い付いていないような気がしたから日本語に翻訳するように設定してから携帯端末を燈に渡した。
「戦時中は、不要な抗争を起こさないために中立者として戦場に立ち審判をしたりしていました。戦後となった今、主な業務として宇宙戦争で生じたゴミの片付けや紛争の鎮静化なんかをしています。」
「それで、あなたたちがここに来たのはこの船がゴミだと認識されたからなのね。」
「それは違うわ。」
疲れた表情のルイが会話に参加する。
「正体不明の船だったの。これは。不届き者が根城にしているかもしれないし危険じゃない?だから調査しに来たのよ。」
この船を解体する目的は伝えないのか、と疑問に思った何か考えがあるのだろう。黙っていることにした。
「お兄ちゃんは、悪い大人に連れていかれたけどそれはあなたたちじゃなかったのね。」
「そうだ。俺は副隊長としてレイの救出に携わった。その船はこんなでっかい船じゃなくてもっと小さな船だったぞ。」
「ごめんなさい。疑って。」
しょんぼりした様子の燈だったが、やがてパッと顔を上げた。
「お兄ちゃん!」
この任務で俺は新しい日本語を覚えた。それはお兄ちゃん、だ。
翻訳などされずとも、それが何を意味するかわかっていた。
「レイか?」
幹の入り口を振り返るが、その姿は見えない。
「この屋上庭園にお兄ちゃんが入ってきた気配がするの。なんかうまく言えないんだけど、ひきつけられる感じ?」
翻訳を見てライがうんうんと頷いている。
相違やあいつも、親族が近くにいるとそわそわするみたいなことを言っていたな。
「レイに正確な場所を伝えていないみたいだけど、ここまでたどり着けるのかしら。
」
ルイも振り返った姿勢のまま燈に尋ねる。
「もちろん。お兄ちゃんとわたしの秘密の場所だったから、わからないわけない。」
それからずっと、燈は落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たりしていた。




