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37.
そこで我に返る。
目の前の扉には手書きで屋上庭園と書かれていた。
横には踏み台にちょうどよさそうなビール箱が転がっている。
「ここは、俺と燈が初めて連れてこられた宇宙船か。」
ノブに手をかけ、少し体重をかけるとさび付いた音を立てながら扉は開いた。
目の前には岩場が広がる。
『お兄ちゃん。あの時の場所で待っているよ。』
燈の声が聞こえた。
ここには一度しか来たことがないから、あの時の場所と言えばあの木下だろう。
昔より、視線の高くなった今ではその木を見つけるのはたやすかった。
「全然変わってない。」
記憶が一つ一つよみがえる中、震える身体を無視して岩の隙間に身をねじ込んむ。
かつては余裕で通れたのに、ずいぶん大きくなったなと他人事のように思いながらもなんとか森の入り口まで来た。
あそこだな。
巨木のほうを向けば、そちらにルイたちの位置情報が現れた。
もう過去の幻影には惑わされない。
俺は走り出した。




