10.
「あの、ルイさん……。」
大きな体をしていながら、消えてしまいそうな声で話しかけられた。
ここ数年で急成長した身体はとっくに私より大きくなっていたが、まだ顔にはあどけなさが残っている。
いつまでも子供で居て欲しい、と思う一方成長が嬉しくもある。
「どうしたのリュウ。」
「いえ……もしあの不明船に……やっぱりなんでもありません。」
リュウの固く握られた手に気付く。
生存者についてだろう。
この子は優しいからすぐそうやって見えもしない、居るのかもわからない存在に感情移入してしまう。
幼いころリュウは不審船から救助されたから、人よりもそれに関して思い入れが強いのかもしれない。
「大丈夫とは言い切れないけど、例え船の中に人が居ようとも全力で護ろう、ね?」
「はい。僕がルイさんに助けられたように僕も誰かを助けます。」
大きくなったその背中をなでてやると、落ち着いたようだ。昔は小さくてかわいかったのになあと感慨に浸ってみる。
「では、僕はコントロールセンターに行ってきます。何かあったらすぐ呼んでください。」
そう言い残すとリュウは颯爽と会議室から出て行ってしまった。
考えが自分の中で煮詰まってしまうとリュウは、こうやって私のもとに来ては胸の内を吐露してゆく。
「人を助けるなんてそう簡単にできることじゃないからね。」
閉まった扉に向かって一応説教をしておく。
助けられなくてもしょうがない、助けられればラッキーなものだ。変に気張って、本来の目的を見失ってほしくはないし、気を病んでほしくもない。
「まあ、リュウなら大丈夫でしょうね、たぶん。」
いくら思い悩んでいても、何かが変わるわけではないと割り切り私も会議室を後にした。




