続の章
ミロードは憤り、腰に下げている魔法書を持ち、開く。
「本当に鬱陶しいクソガキですね! なら、お望み通り! 本気でぶち殺して差し上げますよ! 『全て飲み込め、深淵よ!』《デザイヤオブダークマタ》!」
ミロードの頭上に、闇の渦が展開される。そして触手のようなものが、ハイト目掛けて飛来する。
その魔法を見たハイトは、ニヤッと笑い、サインを投げ捨てた。
「サイン! 隠れてろ! 『我が管理から放れた、異端の魔書よ、今を持って廃棄とする! 権限せよ!』」
そう文言を唱えている間に、触手の攻撃がハイトに直撃し、土煙が上がり、触手がハイトを覆う。
「はっ! 自らを犠牲にするとは愚かな……。ん?」
触手に覆われた姿を見て、勝ち誇ったミロード。だが、触手から突然、ブチブチと音が鳴り、紅き手甲が、突き破って現れる。
次の瞬間、触手は弾け飛び、そこには紅き手甲を着け、黒きコートを身に纏ったハイトの姿があった。
「『規律を守る原初の魔法書』《ザ・ブック・オブ・ブック》」
この姿には訳がある。ハイトはとある魔法書によって一命を取り留めた事があった。その時にその魔法書と一体となって融合した事をきっかけに、本来、権限した魔力の塊で行使する、魔法をハイトは自分の体を使って発動したのだ。
「んな!」
ミロードが驚愕している隙に、ハイトは、一気に距離を詰め、ミロードの持っている魔法書を殴る!
「『規律の守れぬものを破壊せよ! 『本を管理する者』《ザ・ブック・オブ・オーダー》!』」
ハイトの拳が、ミロードの魔法書に突き刺さった時、ミロードの魔法書は、まるでガラスが割れたような音を出して、粉々に砕け散った。
【ⅩⅡ】
その後、ミロードには逃げられたが、結果としては上場だった。
十二星座魔書を、二つも回収出来たのだ。一つはミロードの〝蠍〟、もう一つはハルトキアの秘宝〝射手〟。これで残りの十二星座魔法書は七つ。それで良かった事にする。
ハイト達は、ハルトキアを後にし、次の目的地に向かう。
「ハイトよ、腹が減ったのじゃ」
「次の町まで我慢しろ」
こうして今日も、街道には二人のどうでもいい話が響き渡る。
魔法書売りの少年と魔法書な幼女の旅は、まだ続く。
これにて完結です。場合によっては続きを書くかも知れません。
ちなみに明日も違う作品で投稿は続けます。
そちらも読んでいただけると幸いです。