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始の書

毎日午前七時に投稿します。

楽しく読んでいただければ幸いです。


 少年はかつて、大きな闇の渦に飲まれる光を見た。


 ある日、不思議な話し方をする幼女に会い遊んだ後、その子に手を引かれ深夜、森の開けた場所で、幼女が空に昇ると、世闇に光が無数に広がり、世界が現れた。

 空の暗黒には、無数の光の粒が散りばめられた。光の粒は、他の光の粒に繋がる輝く線を出し、その線は繋がって行くと、やがて十二の形となった。

 それは、そんな風に見えないのに、何をどういう意味で模しているのか、その少年には分かってしまった。


 羊、牛、双子、蟹、獅子、乙女、天秤、蠍、射手、山羊、水瓶、魚。その全てが穏やかに空を泳ぐように、大きく大きく回っていた。


 しかし突然一つの模様が消えた瞬間、空の中心には大きな渦が現れ、それが模様から光を奪った。。

一つの光の模様が消えた事で起こる、大いなる闇の渦、それは空全体に散らばる光をも貪りつくした。

 空から光が消え、灯火もとらない暗黒に包まれた世界。

そこに先ほどの幼女が、一つの光の模様と共に降りてきた。


 少年は慌てて、幼女を受け止め、抱き抱える。

 幼女と共に降りてきた光の模様は、少年の前によって来ると、天秤を持つ美しい女に姿を変えた。


『我らが世界(そら)の終焉を見届けたそなたに、頼みがある』


 女は少年に、優しく語りかける。


「なあに?」


 少年は幼子を抱えたまま、話をする。


『我らの主人であるそのお方を助けて欲しい。そして守って頂きたい』


「この子を?」


『そうだ。主人は傷ついていたのだ。愚かな人間の性で。だが、そなたは、主人の心を癒してくれた。主人の力が弱まった事で我らは離れねばならなくなった。このままでは主人は、その存在が危うくなってしまう。そこでそなたに、我と主人を託したいのだ。頼む』


 女は頭を下げて少年に頼む。すると少年はその女の頭を撫でて言った。


「困ってるんだよね? いいよ。お姉さん達を助けるよ」


『本当か!?』


「うん! 死んだ婆が言ってたから! 『困った人を見過ごす人間になるな。男なら、命を張ってでも人を助けろ』って!」


『…………っ! 頼んだぞ、少年』


 無邪気な少年の笑顔に女は救われ、そして幼女と力を託し、女は幼女の中で眠りについた。



【ⅩⅡ】



 それから十年の月日がたった。


「暇だの――――。ハイトよ。まだ王都には着かぬのか?」


 小さな小屋の様に大きな馬車で幼女が寝転がる。


「まだ半日かかるから、大人しくしてろよ。サイン」


 その馬車の御者台には十六歳になった少年が、馬を引いている。

 幼女は名をアストロ・ロジカル・サイン。

 少年は名をハヤガネ・ハイトと言った。

 サインとハイトは今、サインの力が封じられている〝本〟を探し、【魔法書】を売る魔法書売りとして旅をしている。



【ⅩⅡ】



 魔法書について説明しておこう。この世界には魔法使いは存在しない。代わりに魔法書が存在する。

魔法書は生活に必要なものとなり、文明の成長を支えた。

 魔法書は携帯していることで、それに記載している魔法を自在に操ることが出来る。


 魔法書の作り方は、しかるべき儀式を行うと触媒に使った核が本の形になる。それがドラゴンの心臓であっても、ユニコーンの角でも、何故か本の形になる。

理由は解明していないが、使えることには変わりはない。ただしその現象はいまだに魔法研究で一番の難題とされている。


 そして魔法書にも優劣があり、強力な魔法書は使う相手を選ぶ。しかし生活に使えるレベルの魔法書は誰でも使える。

 故に魔法書は貴重であり、需要が高い。

 そして幼女、サインは強力な魔法書だ。



【ⅩⅡ】



「ああ! 僕の愛しい幼子よ! 一体どこへ行ったのだ!」


 燕尾服にシルクハットの男がどこかの町で呟く。

 ステッキを持ち、腰に黒の魔法書を下げた男は、十二の神とも言える化け物を従えた幼子に、恋焦がれていた。


「ああっ! せっかく私が君を十二の(しがらみ)から解放してあげたのに! 手に入ったのはいらない柵の一つだけ」


 そうこの男こそ、サインから力を失わせた現況の男だった。

 顔には黒塗りのマスクをし、ピエロの様な笑顔が、彫られている。


「ああっ! 今、彼女はどこにおられるのだろう!」


 クルクル回り、ステッキを抱きしめる。


「ああっ! 今すぐ会いたい。そしてその肢体を露わにし、舐め回したい! そして『―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――(検閲により閲覧不可)』したい!!」


 男は魔法書を開き、何かを呟く。すると魔法書から闇の箱が現れ形を変え、矢印になる。


「おおっ! そちらに向かうのですねっ! 待っていてください! 我が愛しのベビードール! 今行って、あなたを『―――(検閲により閲覧不可)』しますからね!」


 男の名はハイリアント・ミロード。

 この男は紳士でもなんでも無い。

 ただのしかし究極のロリコン変態野郎だ。

 彼は愛しき幼子をまた追い始めた。


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