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駿足の冒険者  作者: はるあき
3章 周回速度の冒険者
99/123

095 久々のファンタジスタ

少し短めです。


「ファ〜ンタジ〜スタ〜!!」


 久々に帰ってきた懐かしさから、俺は門の前でそう叫んでいた。


 帰ってきたぜファンタジスタ!

 かれこれ3週間ぶりぐらいか?よく考えるとそれほど長い時間でもないが、なぜだか随分と久しぶりに帰ってきた気がする。


 あれから王子の家庭教師を無事にやり過ごした俺は、王都を少し見物した後一泊してファンタジスタへと走って帰ってきた。

 ちなみに所要時間は1時間ほど。

 行きは2日かかったことを考えると、随分とスピードアップできたな。

 まぁ、あの時は皆で一緒に行動してたから遅くなったというのもあるが。


「お、はじめじゃないか。もう王都での研修は終わったのか?」


 声がしたほうを見ると、エドウィンがこちらに向かって歩いてきていた。


「ああ。無事に終わったぜ!」


 俺はサムズアップでエドウィンに応えた。


「それは良かった!じゃあ、今日からはじめのコーヒーが飲めるってわけだな」


 そう言って笑うエドウィン。

 エドウィンはこの世界では珍しいブラックコーヒー派で、ドートル喫茶の常連さんだからな。久しぶりにコーヒーが飲めると聞いて嬉しくなったのだろう。

 ドートル喫茶自体は先に帰ったマリーとチャーリーによって営業されているが、コーヒーを淹れられるのは俺しかいないからな。


「ああ!今日も18時まで営業してるから、暇を見つけて来てくれ」


 俺はそう言ってエドウィンに営業をかけた。

 貴重なブラックコーヒー党のお客様だからな。大切にしないと。


「よっしゃ!じゃ、昼休みに行くわ」


 エドウィンは片手を上げてそう言うと、門の警備へと戻っていった。

 さて、俺はドートルに行きますかね。

・・・



「ここも久々な気がするな」


 エドウィンと別れた俺は、そのままの足でドートル喫茶の前までやってきた。

 そこには前と変わらない佇まいの純喫茶がある。なんか、ここに来ると帰ってきたって感じがするよな。

 落ち着くと言うか。

 もはや、ここは俺の実家のような存在になっている気がする・・


「ふぅ」


 よし、ほっこりするのはここまでだ。

 今、ドートル喫茶は俺とベロアを欠いた状態で営業している。恐らく、中は戦場のように忙しくなっていることだろう。

 早く加勢してやらねば。


【チリン】


 俺は扉を押して、懐かしのドートル喫茶の中へと入った。


「いらっちゃいましぇ!、あ!はじめさんが帰ってきた!おかえりなしゃい!」


 中に入ると、フェルが元気いっぱいの声で出迎えてくれる。そして、俺だと気がついた瞬間、笑顔でこちらへと駆けてきてくれた。

 相変わらず噛んじゃってはいるけど、可愛いな。


「うん、ただいまフェル」


 俺はそう言って、フェルの頭をゆっくりと撫でた。

 すると、フェルは口元を緩ませて気持ちが良さそうな顔をした。猫人族であるフェルは撫でられるのが好きなのだ。


 ちなみに、俺のような優しい撫で方よりも、ベロアがやるようなガシガシという豪快な撫で方のほうが好きらしい。

 フェルの首がぐらついて不安になるので、俺はその撫で方はしないけれど。


「おかえりなさいませ。はじめ様」


 フェルを撫でていると、厨房の近くに立っていたメニスも歩いてきて出迎えてくれた。

 相変わらず言葉が固いな。


「おう、メニスも久しぶり!・・・あれ?チャーリーは?」


 店内を見渡しても、お客様以外はフェルとメニスしかいない。

 厨房の人手が足りないから、マリーの手伝いをしてくれているんだろうか?


「チャーリーさんはラジオです」


 そう言って、目線を上の方に向けるメニス。

 言われてみれば、何か騒がしい声が聞こえてくるな。

 俺は、上から聞こえてくる声に耳を傾けた。


【はい、というわけで私チャーリーとイキりのザビエルさんによる、「街角・お悩み解決人」でした】


 え!?

 今日のゲスト、ザビエルだったのかよ!

 どうやって呼び出したんだろうか?・・


 というか、ザビエルのコーナー、メチャクチャ聞いてみたかったな。

 絶対に面白い展開になっていたはずだ。

 チャーリーの言葉を聞くに、もう終わってしまったようだが。


【それにしても、流石ザビエルさん。「イキりのザビエル」の名に恥じぬ、イキった意見でしたね?】


【当たり前だァ!俺は生まれてこの方イキり続けてるからなァ、最近になってイキり始めたやつとはわけが違う。東で喧嘩がありゃ、イキり倒してその場を収め、西で盗賊が出りゃあイキり倒して足を止める。イキりもイキったこの人生。イキりイキられイキイキり、イキり道中膝栗毛】


【なるほど】


 なるほど?


【というわけで、今日はこれにて閉幕です。最後にこの曲でお別れしましょう】


 ふむ。

 やっぱり、これで終わりのようだ。

 しかし、最後の曲は誰が歌うんだろうな?もしやチャーリーのソロだろうか?

 チャーリーの歌はフェルとのデュエットでしか聞いたことないから、聞いてみたいな。


【イキりのザビエルさん有するロックバンド「マキシマム ザ プルコギ」が、イキり相手を煽るために作った歌。「草草草」です】


【イキりレス 恥部の古傷

えぐい言葉 殺伐ボイス

サディスティック・ピーポー

馬の銅像に歯立ててイキる


間髪いれずに暴言

100発喰らったアンちゃん

未発達の言語 操れば

こき下ろしオンパレード


ねっちょりイキりスト スラング モリモリ…

笑ったザビエル 「イキり」がマネーや!

おあずけ挨拶 「やり過ごせ 正論」

日々バンビ気味 イキりにGO TO カオス


喰らう罵声 返す暴言

SとSの罵倒合戦

あんたカーズ おまえカーズ

放送禁止用語発生!!

合法言語 肛門ゲット

口元からスラング


踊れ俺らの HEY!イキりースト!


あぁ?コラァ!!


草ァ!草ァ!to many 嘲笑 傷

イキり倒して濡らすがいい・・・


草ァ!草ァ!草ァ!

イキイキり KISS

スラング転がして野垂るがいい


イキり倒して濡らすがいい・・・】


【ファ○ク!イェー!】



 どうやら、放送が終わったようだ。

 しかしとんでもねぇ歌だったな。


 ・・・うん、まぁこの曲の事は忘れよう!

 幸い、この世界に放送コードなんてものはないしな。貴族に向けてでも言わない限り、何を言っても処罰されることはあるまい。


「お!はじめやないか。戻ってきてたんか?」


 あまりの衝撃に俺が上を見つめて放心していると、チャーリーが二階から降りてきた。

 その後ろからザビエルも降りてきたが、彼は満ち足りた顔をしてそのまま外へと出ていった。


「ああ、今帰ってきたところだ。というか、さっきのザビエルだよな?どうやって誘ったんだ?」


 俺は挨拶もそこそこに、気になっていた事を聞いてみた。

 どう考えても、あいつが素直に言うことを聞いてくれるとは思えない。


「あいつなー。また店に来てメニスに向かってイキり倒してたから、【そのイキりを世界に発信してみないか?】って誘ったら簡単に釣れたわ」


「・・・意外に単純なやつなんだな」


 そんな簡単な誘いに乗ってくれるとは。

 思ったより良い奴なのかもしれない。


「そんなことより、厨房が忙くなりそうやから手伝ってもらえるか?私も手伝ってはいたんやけど、はじめやマリーほど美味しく作れへんからな」


「ほう」


 言われて店内を見渡すと、先程の放送を聞いて満足したのか帰っていく人が増えている。そして、入れ替るように新しい客が押し寄せてきた。

 確かに、忙しくなりそうだ。


「はじめ、帰ってきたの?早く手伝って〜」


 俺たちの会話が聞こえたのか、厨房からはマリーのヘルプを求める声が聞こえてきた。


「おーけー。今行くー!」


 俺はチャーリーとマリーに返事を返して、久々の厨房へと向かったのだった。


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