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駿足の冒険者  作者: はるあき
2章 魔速の冒険者
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076 チャーリーの追憶5


 あの後、復活した魔王が王都に攻めて来て、国軍のみんなとルシファーが殺された。

 そして私はタイムリープを選択した。


 それから私は、魔王の復活を阻止する手段を探し回った。

 紫の雲だけでなく、紫の魔石や紫の魔物など、とにかく手当たり次第に探した。過去の魔王の文献をあたったり、先代魔王を知る竜人族の長に会いに行ったりもした。

 しかしそれでも、魔王の復活を阻止する方法は見つからなかった。


 それでも諦めずに復活を阻止する手がかりを探すうちに、私のループの回数は10回を超えていた。

 常人ならば発狂するほど、人の死に遭遇した。

 しかし、私は神さま。爆笑神社の女神様や。

 リカの願い事を叶えたらなあかん。

 その一心でぼろぼろになった体と心を引っ張って、手がかりを探していた。


 しかし、いつまでたっても魔王の復活を阻止する手がかりは見つからなかった。

 もう魔王を倒せるほど強くなるしかないんか?そう考えた時もあった。

 けど、前のループで確認したあいつのステータスは異常やった。レベルは242、能力値も有りえへんほど高かった。あんな化物より強くなるなんて不可能や。


 私の心は、日を追うごとにささくれだっていった。

 私は次第に自分の気持を制御できなくなり、ルシファーやラミア、シトラスに当たり散らすようになっていた。


「何でこんな魔法も使えへんのや!魔王相手には特級魔法以上やないと話にならへん!」


 その日も、魔王に勝つために一緒に魔法の修行していたラミアに、厳しく当たってしまっていた。


「リカ、ちょっと厳しすぎだ」


 私の指導に、慌てたような表情でルシファーが止めに入った。

 こいつ、人の気も知らんで。


「そんな事あらへん!特級魔法も出せんようでは、使い物にならへん!」


「使い物にならないって・・・リカ。君はストイックすぎるよ。もう少し肩の力を抜くのも重要だよ」


 ルシファーが舐めたことを言い始めた。

 そんな事言ってるようじゃ、


「もう少し、楽しくやろうよ。リカが笑った所、俺は見たことないよ」


 ルシファーがそう言った瞬間、私の頭に金槌で殴られたような衝撃が走った。

 笑ったことがない?

 それは、世の中の全ての人を笑顔にするのが目標だった、私のアイデンティティを崩壊させるものやった。

 なんで。

 笑かすことを取ったら、私から何が残るんや?私は爆笑神社の神さまとして、みんなを笑顔にせなあかんのに。私は、神様としてしてはならない事をしてるんやないやろうか?

 そう考えた時、人を笑わせるどころか自分が最後に笑ったのさえ、十年以上昔の事であり、もうその時の感情が朧気にしか思い出せないことに気づいた。


 何でこんなことになってるんや。

 私はリカの願いを叶えたかっただけやのに。


 それから私は、部屋に閉じこもり、自分の生きる意味を考えては、震えながら泣き、眠る日々を過ごした。

 魔王復活を阻止する手がかりさえつかめない状況に、目の前で知り合いが仲間が死んでいく光景に、私の生きる目標だった人を笑わせる事ができなくなった現状。

 私の心は、もう限界だった。


 そして、ある朝。

 魔王が王都を攻撃し、私はほとんど無意識にタイムリープした。


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