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駿足の冒険者  作者: はるあき
2章 魔速の冒険者
76/123

073 チャーリーの追憶2


 リカの願いを叶えると決めた私は、まず情報をまとめることにした。

 今までの起こった事は、正直映画見る感覚で見とったから、細かいところは覚えられてへんかったしな。

 部屋に紙とペンがあったので、とりあえず書いてまとめてみた。


・最終目標:残り4つの試練をクリアすること

・当面の目標:魔物と戦えるくらいの戦闘力を身につける、もしくは強い仲間をさがす。お金を稼ぐ。(冒険者として活動するのがベスト?)

・現在の所持金:銀貨55枚

・所持品:服が数着、短剣、ステータスカード、お守り

・居住地:道の宿ウッドブロック(一泊銀貨2枚)


 こんなもんやな。

 一番まずいとこ言うと、所持金がそんなにない事やな。1ヶ月生活しとったら無くなる程度の金額や。節約せなあかんな。

 あとは、転生メンバーの所持品が何も残っていないのが痛いな。あいつらの武器があったら、だいぶ助かったんやけど。まぁ第一の試練が総力戦やったし、しゃあないか。


 今後の目標としては、とりあえずは戦闘力を身につけることと、お金を稼ぐことが重要やな。その2つが達成出来る場所は・・まぁ冒険者ギルドへいくのが一番やろ。

 という事で、まずは冒険者ギルドへ向かうことにした。


・・・・・・・


「いらっしゃい。お嬢さん、どうしたの?」


 冒険者ギルドへ行くと、色黒で綺麗なお姉さんが受付をしとった。

 名前はサラムさん。

 このギルドに勤めて2年の新米さんらしい。

 私は自己紹介を軽く済ませて、冒険者登録に来た旨を伝えた。


「小さいのに頑張るわね。じゃ、ステータスカードを貸してもらえる?」


 サラムさんは小さな私が登録することに驚いてはいたが、きちんと対応してくれた。

 深く理由を聞いてこないのがありがたい。

 私は、ステータスカードをサラムさんに渡した。

 ちなみに、今のステータスはこんな感じや。



名前:小林リカ(あだ名:チャーリー)

種族:人間

職業:-

LV:5

HP:50/50

MP:50/50

STR:40 [備考:筋力値]

VIT:50 [備考:物理防御力]

AGI:60 [備考:俊敏性]

INT:80 [備考:魔法攻撃力]

MND:90 [備考:魔法防御力]

所持スキル:なし

所持魔法 :なし


装備品

爆笑神社のお守り。効果不明。レア度☆10



 どうやら、私(リカ?)は魔法のほうが得意みたいやな。

 魔法は呪文を詠唱し続けていれば、そのうち出来るようになるらしいから、時間が有る時に鍛えよう。


「これで登録は終わり!まずは七日後に冒険者講習会があるから、それを受講してね」


 私が今後の成長計画を考えているうちに、サラムさんが登録を終わらせてくれた。


「おおきに!ほなまた」


 よし、これで冒険者の立場は手に入れることができた。

 後は魔法の練習をしつつ、ランクを上げていくだけや!

 私はそう決意して、冒険者としての道を歩み始めた。


・・・・・・・・・


 それから3年ほど、私はひたすら魔法を練習して、魔物を倒してを繰り返していた。最初はスライムの討伐から初めて、ゴブリン、オークと徐々に強い魔物を倒せるようになった。そして、3年が経つときには、風魔法も中級まで使えるようになり、冒険者としてのランクもCランクになっていた。

 相変わらず見た目は幼女やったが、もう誰も私のことを初心者として侮ることはなかった。

 でも、やはりチームに入れるには幼すぎたらしく、強い仲間を見つけることは出来へんかったけど。


 そんな生活を送っていたある日。

 次の試練なんて、ひょっとしたら来ないんじゃないかと思っていた時に、事件は起こった。

 ある日突然、獣人国家クルーガーが戦争を仕掛けてきたんや!


 いきなりの戦争に、ラース王国は慌てた。

 王国軍を全員駆り出し、Bランク以上の冒険者は強制的に、Cランク以下の冒険者は任意で徴兵させられた。私は参加しようかめちゃくちゃ迷った。しかし、クルーガー王国で紫色の雲が目撃されたという情報を得た私は、これが第二の試練だという事に気づき、覚悟を決めて戦争に参加した。


 そしていざ戦争に参加してみると、そこは地獄やった。

 クルーガーの兵士達は、最初は王国軍や冒険者だけを狙ってきた。

 でも、戦争が過熱していくにつれ、民間人も攻撃を加えるようになり、殺人、強盗、強姦等の犯罪も平気でするようになってきた。もう、ラース王国で安全な場所は一つもなくなった。

 戦争は一ヶ月経っても、二ヶ月経っても終わらんかった。その間、ラース王国の民間人だけで数万人の死者が出た。


 私はCランクという事もあって、初めは後方待機やった。しかし、前線の兵や冒険者が死んでいくに連れ、徐々に前線へと駆り出された。

 そして、この手で数人のクルーガーの獣人を殺した。

 その中には、民間人も含まれていた。

 この頃、民間人を装って暗殺してくる兵士や、家族を殺された恨みを晴らすために兵士を殺そうとしてくる民間人が多かったため、もう獣人を見れば迷わず殺すしか選択肢が無かった。

 ラース王国の兵も荒れていき、盗みを働く奴、クルーガーの民間人を強姦する奴、その最中に被害者の女に噛み殺される奴なんかもいて、もうこの世の終わりのような光景やった。


 そして、戦争開始から半年が経った時、私は王国軍の精鋭部隊とともに、クルーガー王国の王都に潜入していた。

 これは戦争を終了させるための、最後の作戦やった。作戦はシンプルで、別部隊にクルーガーの首都を攻撃させ、その混乱の隙を突いて私達が王都へ潜入、指令官のガリウスに奇襲をかけるっちゅう作戦や。

 もう、王都の最深部である王宮の外堀にまで来ていた。

 あと少し進んだところに、この戦争の元凶である、ガリウスがいるらしい。

 こいつを殺せば、戦争は終わるはずや。


「まだ獣人が残ってやがったのか!」


 私がガリウスをどう倒そうかと考えていた時、味方からそんな声が聞こえてきた。声を出した王国軍兵士は、弓を引いて前方の岩の陰を狙っている、そこには、私より幼い、獣人の少女がいた。

 兵士の声に恐怖したのか、その足は震え、目からは涙がこぼれ落ちている。

 その姿が、毎晩泣いていたリカと重なった。


「撃つな!民間人の子供は殺したらあかん!」


 私は思わず、獣人の少女の前に立ち、庇ってしまった。

 今が油断ならない状況だということは分かっている。それでも、罪のない少女を殺していい理由にはならないはずや!


「そこを退け、リカ!民間人であろうと見逃す訳にはいかない。そいつが武器を持って襲ってくる可能性はゼロじゃないんだぞ!」


 精鋭部隊の隊長が、私の名前を呼んで叱責してきた。


「分かってます。でも、いくらなんでも、こんな少女を


 と、隊長を説得しようとしたその瞬間、胸に激しい痛みが走った。


「くっ」


 原因を探ろうと視線を下に向けると、銀色に輝く刃が私の胸を貫いていた。

 後ろを見ると先ほどの獣人の少女が剣を握って、私の胸に刃を突き立てている。


「リカ!!」


 隊長が叫びながら私のもとに走ってくるが、もう体に力が入らない。


 私はここで死ぬんやろうか?

 神さまとして、リカの願い、叶えたかったんやけどな。

 もし時間が戻せるなら、もう少し上手くやりたいな。

 そう思った時、急に私の体が光りだした。そして、急激な脱力感が襲ってきて、私は意識を手放した。


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