054 (閑話) オールナイト・ファンタジスタ2
前の閑話のメニスの話に続き、今回はフェルに着目した閑話です。
それは、アマダント製のナイフを買うために、ドートル喫茶の平日営業を始めたばかりの頃の話2。
「へいらっしゃい!」
現在、夕暮れ時の午後七時。
修業を終えた俺が店内に入ると、力強く野太い声が店内に響き渡る。
声がする方を見ると、ベロアがこちらを振り返る所だった。
「お、はじめじゃねぇか!修行の進捗はどんな具合だ?」
ベロアは暇をしていたのか、そう言いながらこっちへ歩いてきた。
店内を見ると、お客さんは入ってはいるが満席ではない。占有率6割ってところか。今日くらいの客の入りならフロア2・3人でも回せそうだな・・・あれ?チャーリーとフェルがいないぞ。
「まあまあってとこだな。今日はパンツが12枚壊れた。それより、チャーリーとフェルはどこ行ってるんだ?」
また買い出しか?
「なぜ修行でパンツが壊れるのか、腰を据えてじっくり聞きたいところだが・・・チャーリーとフェルはラジオやるために2階に行ったぜ。今日はお客さん少ないからって理由で、マリーさんから許可が出てな」
あのラジオか。
たしかに、今日くらいの客入りなら人手も空くし、ラジオのサービスがあってもいいかも。
ナイス判断だ、マリー。
【チャ~、チャチャッチャ♪チャッチャチャチャン・チャッチャチャ♪チャッチャチャチャン・チャッチャチャ・チャチャッチャチャ・チャチャン・ドゥドゥンドゥンドゥン】
早速、上の方から軽妙な音楽が流れてきた。相変わらず、深夜の有名ラジオ番組のオープニングをボイスパーカッションで奏たような音だな。
【あらためましてこんばんは!さぁやってまいりました、オールナイトファンタジスタ!お相手はわたくしお笑い担当事務次官ことビリケン・チャーリーと】
【マスカット担当大臣のキャット・フェルでしゅ】
前と同じような挨拶から始まった。今日はフェルとチャーリーの二人でやるのか。・・不安だ。
フェルは元来の滑舌の悪さに加えて、緊張しているらしく噛み倒している。
マスコットって言いたかったんだろうが、マスカットになってるし。マスカット担当ってなんだ。
【さて、今日で二回目となる本番組!記念すべき二回目の企画は、「街角・お悩み解決人」です】
【街角にいる人におにゃやみを聞いて、こにょばしょじぇわちゃしたしがかいけちゅしまちょうっていう企画でしゅ】
【アッハッハ!何言ってるか分からへんわ!スルーして、お便り読んじゃうで】
スルーかよ!
【ラジオネーム:Lv30のベ・バンボボ・ウギさん(25歳女性)からのお便りです。「はじめまして、前回の放送楽しく聞かせていただきました。そして、私もぜひ相談したいと思ってお手紙お送りしました」
前回の放送で相談したいと思うって、中々のチャレンジャーだな。
ロクに相談に回答できていなかったと思うが。
「私は、魔物のバ・ヌンボボ・バギが好きです。休みの日はキリマウンテンに行って、探し出しては見つめてしまいます。しかし最近、キリマウンテン周辺でバ・ヌンボボ・バギが見られなくなっています。趣味にあるバ・ヌンボボ・バギの観察が出来なくて悲しいです。しかし友達に相談しても、バ・ヌンボボ・バギが好きなんて理解できない、その趣味はやめるべきだと諭されてしまいます。私はバ・ヌンボボ・バギの趣味をやめるべきでしょうか。また、止めなくていいとすれば、どこに行けばバ・ヌンボボ・バギが見れるでしょうか」】
変わった趣味の相談者さんが来たな。
まあ、日本でもイケメンゴリラのファンとかいたし、そう考えるとそれほど変な趣味でもないのか?
【にゃるほど。これはにゃかにゃか深い悩みでしゅね】
【友達に趣味を理解してもらえへんのは、悲しいやんなー】
【どうしゅればいいでしゅか?】
【そういう時は、他人に理解されないのを覚悟して趣味続けるか、友達のいうとおり止めるかの二択なんやけど、私はLv30のベ・バンボボ・ウギさんの中では答えが出ている様な気がするんよな】
【と、いいましゅと?】
【手紙の中で、止めなくてよかった場合の相談も付けてるやろ?って事は本心言うたら止めたくないって気持ちが出てしまっとるんよ。これだけ強い気持ちがあるんやったら止めへんで良いと思うわ】
ほう。
今回は思ったよりキチンと相談者の気持ちを慮って、相談に乗ってるな。
【にゃるほど】
あとどうでも良い情報だが、フェルの相槌がいちいち可愛い。
【もう一つの相談については、心当たりがあるから言っとくわ。明日からはキリマウンテンでバ・ヌンボボ・バギが見れるようになると思うで】
多分これは俺のことだろうな。
最近、修行でキリマウンテンにいるバ・ヌンボボ・バギを狩りまくっていたからな。
狩場を変えるとしよう。
【さて、それじゃ続いてのお便り!っと言いたいとこやけど、今日はこれ一通しかお便り来てないんや】
前回の放送から5日くらいしか経っていないしな。
【え!?じゃあ今日はもう終わりでしゅか?】
【残念やけど、そういうことになるわ。それでは最後に、私とフェルのコンビ:虹色クローザーが歌うこの曲でお別れしましょう「行くで!怪盗幼女」】
【Yes! Yes! We're the 虹色クローザー
ビリケン チャーリ↑ フェル キャット フェル
Go Now 君のハート めがけて
Sing a Song!
ちゃいむがにゃったら いしょいで集合
宿題にゃんかは してぇいる暇ない
しぇい服 にゅぎ捨て 華麗に 変身!
しょの名も 怪盗虹色クローザー
狙った獲物は 逃がさへん!
せや 神出鬼没の大泥棒 HA
世界中 みんな 血まなこ
みゃいくを片手に 今日も飛び回る
じゃれ一人 てょめられない
ビッカビカのダイアモンド
そんなもんは 興味があらへん
欲しいもんは ひとつだけ
自分の その心 Oh Yeah!
笑顔と歌声で しぇ界を照らし出しぇ
行くじぇっ! Let's Go!!
虹色のハートを 狙い撃ち
ナイスなミュージックに乗せて
犯行予告やで
いっちょ ソバット
自分のそのハート いただきますっっっ!!】
どうやら番組が終わったようだ。
今回もカオスだったが、ベロアがいないせいか少し真面目な感じになっていた気がする。やっぱりパーソナリティって大事。
「フェルも中々やるな。負けられん!」
横ではベロアがフェルに闘志を燃やしていた。
何きっかけでベロアに火が着いたのか謎である。




