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駿足の冒険者  作者: はるあき
1章 音速の冒険者
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049 潜入・クルーガー王国

 あれから、1ヶ月後の夜10時。

 準備を終えた俺達は、喫茶ドートルの前に集合していた。

 作戦決行のメンバーは俺、マリー、チャーリー、ベロア、メロアさんの五人。(ベルグはメニスに預けた)

 全員、いつでも戦えるように剣やナイフを腰にさげて臨戦態勢を整えている。準備万端だ。


 俺の腰には、アマダント製のナイフがぶら下がっている。

 この一ヶ月の間、マリー達が頑張ってくれたおかげで金貨100枚弱の売上を上げることができ、無事にこいつを購入することが出来た。

 最終的にはフェルやメニスも平日営業を手伝ってくれて、店はかつてないほど賑わった。本当にありがたい。


 俺の修行も無事終わり、短い時間ではあるが超音速で走れるようになった。オークとかを倒してステータスも上がったので、衝撃波によるダメージもある程度なら耐えられるようになっている。こんな感じだ。


名前:西東はじめ

種族:人間

職業:冒険者 Eランク

LV:24

HP:240/240

MP:240/240

STR:110 [備考:筋力値]

VIT:111 [備考:物理防御力]

AGI:120(×100) [備考:俊敏性]

INT: 22  [備考:魔法攻撃力]

MND: 70  [備考:魔法防御力]

所持スキル:なし

所持魔法:なし


装備品

神の靴:速さのみを追求した神の作りし靴。俊敏性×100。レア度☆10

収納袋:空間魔法が施された袋 ☆3

アマダント製のナイフ:希少鋼アマダントで作られたナイフ。強度が非常に強く切れ味も鋭い ☆5


 レベルはマリーと同じくらいまで上がったし、俊敏性も12000になった。

 もはや速さでは俺に勝てる奴は現れないだろう。

 最高時速は1400km、そこまで3秒で到達できる。

 計算上、標的のガリウスまでの距離が3500m以上あれば俺が走り出したときに発生する音を追い越せるので、何の予兆もなくガリウスに奇襲をかけられるはずだ。

 体に衝撃波が走りまくる上に、加速のときには13Gという宇宙飛行士も真っ青になる程の加速度がかかるので、奇襲後は体ボロボロになりそうだが。


「それでは作戦の最終確認を行う」


 俺はそう言って、皆の顔を見る。

 マリーは顔をこわばらせていて、こちらにまで緊張が伝わってくるようだ。

 ベロアは腕を組んで目をつぶっている、自分の記憶を頼りに今日のルートをおさらいしているらしい。

 メロアさんは怖いくらいに真剣な表情をしている。まるで特攻隊のような覚悟を決めた顔だ。

 チャーリーは唯一普段と変わらない表情だ。プレッシャーに強いな。


「まずはベロアの誘導で、キリマウンテンの中腹部にあるという隠し通路まで向かう。そこまで約一時間」


 走ればもう少し早く行けるが、目立つわけにはいかないので徒歩で移動することにしている。


「そしてその隠し通路を通って、クルーガー王国へと入り王宮を目指す。そして広場の隅で隠れて戦争前の式典が始まるのを待つ。ここまで約8時間」


 隠し通路を使ってショートカットしても、クルーガー王国まではかなり距離があるからな。この行程で体力の消耗を可能な限り抑える必要がある。


「そして式典が始まって、ガリウスが壇上で挨拶を始めたら俺が全力で走ってガリウスの首をはねる。以上だ。間違いないか?」


 以前立てた作戦はこうだったはずだ。

 あっているはずだが、一応みんなに確認を取ってみた。


「作戦に間違いは無いんやけど、提案がある」


 そう言って、チャーリーが真剣な表情で俺の方を見てきた。


「今回の作戦の肝は、はじめや。式典が始まった時にはじめが良いコンディションで待機できていたら、作戦の成功は決まったようなもんや」


 ただな、とチャーリー。


「もし、はじめが道中で怪我したり、疲れてベストなコンディションを保てなくなったら、ガリウスへの奇襲が出来ず作戦は失敗する。せやからはじめはマリーと一緒に空を飛んで移動して、出来るだけ体力を温存すべきやと思うねん」


 なるほど。

 たしかにマリーに運んで貰えれば、体力使わずにすむ。

 俺一人楽しているようで若干心苦しいが、いい手かもしれない。


「良いんじゃねぇか。はじめが疲れないことが一番重要だ」


 直ぐに賛成の意見を上げるベロア。

 その横でメロアさんも頷いている。


「私も良いと思うわ。けど、ずっと空を飛んで移動するとなると、魔物とかが出てきても援護できないわよ?」


 飛んでいるだけでかなり魔力使っちゃうの、とマリー。


「それは構わへんよ。むしろはじめとマリーは途中で魔物が出ようが、どんな敵が襲ってこようが絶対に手を出したらアカンで。魔力や体力を温存するためや」


 そう言って、俺の方を凝視するチャーリー。

 その目がお前どうせすぐ手出すやろと、訴えている気がする。


「了解。最大限努力する」


「政治家か!いいか、絶対に手をだすなよ!はじめの体力がなくなったら、この作戦失敗するんやからな」


 俺の答えに納得がいかなかったのか、更に念を押してくるチャーリー。


「魔物には私とベロア、メロアの三人で対処するから」


 そこまで言われては、俺も同意するしか無い。


「分かった」

「分かったわ」


 俺とマリーはチャーリーの提案を受け入れた。


 さて、時間も無いことだし、そろそろ行かないと。


「もう意見はないか?・・・それじゃ、出発しよう」


 いよいよ作戦開始だ。

 俺達はキリマウンテンへ向けて出発した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・



「着いたな」


 ファンタジスタを出て一時間弱、俺達は無事にキリマウンテンにある隠し通路へと到着した。

 道中、バ・ヌンボボ・バギやオークが襲ってきたが、チャーリーとベロア、メロアさんのトリオが危なげなく倒していた。

 意外だったのがベロアの強さで、オークを一撃で倒すほどだった。

 戦いのスタンスは、斧を筋肉に任せて全力で振り回すという意外性ゼロなものではあったが。


「隠し通路は何処にあるんだ?」


 場所はベロアしか知らない。


「たしかこの辺りに読めない文字が書かれた石版があるはずだ。えーと、どこだ?」


 ベロアは少しの間、木々の間を探し回っていたが


「あった!これだ」


 どうやら見つけたらしい。

 俺達も近づいて石版を見ると、確かに読めない文字がかかれている。

 地球で言うとエジプトとかあっちの方の言葉に近い。全体的にウネウネしていて解読する気すら起きない。


「ここに、王族の血を垂らすんだ」


 そう言って、ベロアは指の先端をナイフで切って、石版に血を数滴落とした。

 すると、


【ゴゴゴゴゴゴ】


 石版の近くにあった地面が割れて、地下へと続く階段が出現した。

 こんな仕掛けがあったのか。

 SEC◯M顔負けのセキュリティだな。


「この通路がそのままクルーガー王国の王宮へと繋がっている。行こう」


 そう言って、ベロアが階段を降りていった。階段は一人で通るのがやっとのサイズで、非常に狭い。

 俺達もそれに続いて階段を降りる。


 ある程度階段を降りると、昔の坑道のように土で固められた通路があった。

 普通の坑道と違うことがあるとすれば、この道はかなり広い。横幅も高さも7~8mほどあって、馬車でも余裕で通れそうだ。

 どうやらコレがずっと続いているみたいだ。


「こんな馬鹿でかい道、どうやって作ったんだろうな」


 ボーリングマシンでもないと、こんな大きい道は作れないだろう。


「建国の際に古代魔法で作られたらしいが、詳しくは知らん。何せ数百年前の出来事だ」


 ベロアが俺の疑問に答えてくれた。

 どうやら王族にすら伝わっていないらしい。


「これだけ広ければ、飛んでいけるわね」


 と、マリー。


「それもそうだな、マリー頼んだ」


 俺は収納袋から、仕舞っておいたビックイーグルの剥製を取り出した。


「任せといて!」


頼もしい返事をして、ビックイーグルの剥製にまたがるマリー。

 俺はそんなマリーの後ろに座って、再び空を飛んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 隠し通路に入って早6時間。

 もう相当進んだとは思うが、景色が変わらないのでどこまで来たのか分からない。


「今どれくらい来ているんだろう?」


 ベロアに聞いてみる。


「前に来た時の感覚で言うと、もう着いてもおかしくないくらいだな」


 と、ベロア。

 どうやらゴールはもうすぐらしい。


 隠し通路に入ってからは魔物も出ないし、何のトラブルもなく進む事ができていた。

 怖いくらいに順調である。


「拍子抜けするほど順調やな。どっかでとんでもない罠とかありそうや」


 チャーリーも同じことを考えていていたのか、そんな感想を言った。

 ・・・あまりフラグっぽいことを言わないで欲しい。


「お、着いたぞ。あの扉が王宮へと繋がる扉だ」


 そう言ってベロアが指をさす先を見ると、通路一面を塞ぐような馬鹿でかい扉があった。

 どうやらゴールに着いたらしいが、どうやって開けるんだろう?

 俺が扉の開け方を考えていると、ベロアが扉の前にあった石版に血を賭けた。

 また自動ドアか、便利だな。


「ゴゴゴゴゴゴ」


 大きな横開きの扉がゆっくりと開き始めた。

 魔法であっても、このでかい扉をサッと開けるほどパワーはないようだ。


「これでほぼ作戦成功も同然だな」


 慣れない道案内に張り詰めていた気が抜けたのか、ベロアがふっと息を吐きながらそんなことを言った。

 いやだから、フラグ立てるのやめようぜ。


 ベロアに内心ツッコんでいると、扉が全開になる。

 扉の先には東京ドームと同じサイズくらい広い空間があった。


「だだっ広い所だな。何のための場所だ?」


 空間の無駄遣いな気がする。


「緊急時の避難場所として作ったらしい。使われたことはないが」


 なるほど、避難場か。

 それなら納得。

 と、そんな事を話しながら広い空間を見渡していると、一番奥の端に鎧を着た人が立っているのが見える。耳から判断するに、熊の獣人のようだ。

 援軍か?

 いや、援軍なんているならベロアやメロアさんが先に言っておいてくれるはず、ということは


「あれは誰だ?」


 ベロアが怪訝そうな顔で言った。ベロアが分からないって事は、味方ではなさそうだな。誰だ?

 あいつの正体を確認しようとメロアさんの方を見ると、真っ青な顔をして目を見開いていた。


「バリアス様」


次話は1~2日後に投稿予定です。

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