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駿足の冒険者  作者: はるあき
1章 音速の冒険者
44/123

042 ベベベベ・ベイベ・ベイベ・ベイベ・ベイベ・ベイベー

今回少し短めです。


「ほう、ここがベロアの家か」


 あれから一晩発って、現在朝の八時。

 俺は今、ベロアの家と思しき建物の前にいた。

 2階建てのレンガ造りの建物で、長屋のように横長だ。部屋数で言うと10部屋くらいはありそうだ。

 壁にはエーデルハイム・ベロアと文字が掘ってある。

 確かベロアは家賃収入で暮らしているって言ってたし、大家として自分も住んでいるんだろう。


 外には二階へと繋がる階段はないので、二階もついてる部屋のようだ。

 結構リッチだな。


「ここに、昨日言ってたベロアって変人がいるんやな」


 横には腕を組んで家を見上げているチャーリーがいる。

 昨日の話を聞いてベロアに興味を持ったらしく、着いてくることになったのだ。

 ちなみにマリーは明日ドートルで消費する食材の買い出しに行ったので、今日はいない。

 チャーリーと二人きりである。


「ちなみにエーデルハイムってのは、どういう意味なんや?」


「日本語で言うと、エーデしたルハイムって意味だ。これ豆な」


「エーデとルハイムって単語が分からんわ!何処の国の言葉や!!!」


 流石はチャーリー。

 今日も朝からキレキレである。


「冗談だ。たしかドイツ語で名門の家って意味だったと思うぞ」


「知ってたんならサッと言わんかい」


 と、チャーリーが呆れた目つきでこっちを見てくる。

 ふざけ過ぎだと分かっちゃいるんだが、チャーリーのツッコミが上手すぎてついついボケたくなる。

 反省。


 っと、冗談はさておいて、そろそろベロアのお宅訪問に移ろうか。


「前に角部屋に住んでると自慢げに言ってたから、両端のどっちかの部屋のはずなんだが・・・どっちなんだろ?」


 分からんな。

 ちゃんと聞いておけばよかった。


「ほな、とりあえず両方行ってみよか」


「そうするか」


 ここで悩んでいても仕方がないしな。

 という事で、まずは近くの角部屋の扉の前に行ってみた。


 しかし、期待していた表札がなく、ベロアの部屋かどうかわからない。


「これじゃ分からんな」


「表札掛かってないなら、ベロアの部屋じゃないんやないか?」


 普通に考えるとそうだが、


「あいつ、うちで働く前は引きこもりだったらしいからな。表札がなくても不思議ではない」


「元引きこもりの筋肉バカって、人柄のクセが強いな」


 それね。

 あいつは性格から外見までクセまみれだからな。


「反対の部屋にも行ってみよう」


 俺とチャーリーは建物にそって反対の部屋まで歩いていった。


 しかし、横に長い建物だから無駄に疲れる。

 これで反対の部屋にも表札無かったら、戻る必要があるのか・・面倒だ。


「ここか」


 そんな事を思いながら歩いていると、反対の部屋に到着した。

 すると、運の悪いことにこの部屋にも表札はかかっていなかった。

 かかってはいなかったが、


「扉の前にダンベル落ちてるやん」


 そう。

 こっちの扉の前には、木の棒と石でできたダンベルが落ちているのだ。

 十中八九この部屋だろう。


【コンコン】


 扉にクマの顔をモチーフにしたドアノッカーがついていたので、とりあえずノックしてみた。


・・・


 反応がないな。


「おーい!ベロア、いるかー!?」


 今度は大きめの声でベロアを呼んでみた。


【ガタガタッ】


 お、今度は中から物音が聞こえてきた。

 まるで居留守を使ってやり過ごそうとしていたら、知ってる声がして慌てた様な音だったな。

 まぁ、元引きこもりだからな。

 居留守が基本なんだろう。


「急な訪問だったし、少し待つか」


「そうやな」


 俺達はベロアの反応を待つことにした。

・・・・・



 五分経った。

 いまだベロアの反応はない。


「おーい、無視するな!お前が居ることは分かっている!完全に包囲されているぞ!」


「警察かよ」


 俺は仕方なくもっと大きな声で呼ぶことにした。

 警察っぽい言い方になったのも、出てこないので仕方なくである。

 決してベロアを色んな手であぶり出すのが楽しくなってきた訳ではない。


「もう筋肉挨拶返してやらないぞー」


【バタンッ】


「それはやめてくれ!!」


 っと、額に汗をかいたベロアが扉を開けて飛び出してきた。

 どんだけあの挨拶気に入ってるんだよ!!


「フフッ、筋肉挨拶を人質に取られとる・・フフ」


 チャーリーは何かがツボに入ったらしく、口を塞いでひたすら笑っている。

 カオスかよ。


「遅いぞベロア。五分前から呼びかけてたのに」


 俺がそう言うと、ベロアは珍しく視線をあちこちにやって


「いや、分かっちゃいたんだが。こっちも取り組んでいて。今日はその、かなり用事がいっぱいというか。もりもりというか」


 と、要領を得ない事を行っている。

 うーん、ベロアがここまで慌てるのは珍しいな。

 紅茶を零して厳つい客に怒られた時ですら、自分の上腕二頭筋を撫で回して悦に入るような鋼のメンタルを持つ男なんだが。


「オギャー、オギャ、ビェー、」


 俺がベロアの様子を不思議がっていると、ベロアの部屋の中から赤ちゃんの鳴き声のような音が聞こえてきた。

 え?どゆこと?

 思わずベロアを見て目を合わせると、ベロアは目を見開いて口をすぼめ、訳の分からん表情をしてきた。

 変顔で誤魔化そうとしてるのか?

 受けて立つ!

 俺は広角を下げ、歯をむき出しにして面白フェイスを作り上げる!

 そんな俺を見て、一瞬表情を崩しかけるベロアだが、更に目を大きく見開くことで、笑い堪えつつオフェンス力を上げてきた。

 やるなベロア。


「面白イベントの音がするやんけ!お邪魔しまーす!」


 俺とベロアが変顔バトルに興じている間に、チャーリーがそんなことを言いながらベロアの部屋の中に入っていった。


「あ、待て!!というか誰だお前!」


 ベロアが慌てて部屋に戻った。

 一寸置いて、俺も二人を追いかけベロアの部屋に入った。


 一階には二人共いない。

 どうやら2階に行ったようだ。

 俺は階段を駆け上がって、二階の部屋に入った。

 するとそこには


「おー、可愛いな!よしよし!」


「おい、慎重に持てよ!ん?と言うかやっぱ持つな!俺オマエ・シラナイ・オマエ・ダレ?」


 可愛い赤ちゃんを抱き上げるチャーリーと、混乱しすぎて言語が不自由になっているベロアがいた。


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