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駿足の冒険者  作者: はるあき
1章 音速の冒険者
37/123

035 リカちゃん(チャーリー)の冒険者登録

次の投稿は3日以上あとになりそうです・・

「ここが冒険者ギルドってやつか!」


 俺達はチャーリーと一緒に依頼を受けるために、冒険者ギルドまで来ていた。

 チャーリーは冒険者ギルドに来るのが初めてだったらしく、声を上げて興奮している。

 見た目だけなら遊園地に着いてはしゃいでいる女の子の様に見えるので、非常に微笑ましい光景だ。中身は神なんだが。


「はじめさん、マリーさんいらっしゃい」


 受付を見ると、いつものようにリリーさんが立っており、手を振って歓迎してくれていた。


「その子は、新しいお友達?」


「友達というか、俺達のチームの新メンバーだ」


「はじめまして。新人冒険者のチャーリーです!よろしくおねがいします」


 チャーリーは可愛い笑顔でそう言うと、リリーさんに手を差し出した。

 こいつ神様のくせに対人スキルが高いよな。敬語もちゃんと使えてるし。

 神様って尊大で威張ってるイメージしか無かったんだがな。


「はじめまして、チャーリーさん。こちらこそよろしくね。私はギルドの受付を担当してるリリーです。」


 リリーはそう言うと、チャーリーの手を受け取って握手した。

 その表情はとても柔らかい。リリーさん前に可愛いものが好きって言ってたし、早速チャーリーのことを気に入ったようだ。


「今日はチャーリーの冒険者登録と、私達のチームへの登録をしたいの」


 俺がボーっとしてるうちに、マリーが話を進めてくれていた。


「承知しました。ちなみにチャーリーさんはステータスカード持っていますか?」


「持ってる!魔法学校に入る時に配られるんや」


 そう言って、チャーリーは背負っていた皮のリュックからステータスカードを出してリリーさんに差し出した (早くも敬語を使うのはやめたようだ)。

 入学する時に高価なステータスカードが配られるとは、流石は貴族御用達の学校だな。


「それなら今すぐ登録出来ます。ちょっと待っててくださいね」


 俺達の登録のときのように魔法具で登録するのだろう。

 リリーさんはステータスカードを持って受付の裏に歩いていった。


「・・・そういえば、今日チャーリーが冒険者登録しても、Gランク冒険者だから町の外の依頼は受けられないんじゃないの?」


「あ」


 そうだった!完全に忘れてたぜ。

 ってことは、チャーリーと一緒に依頼を受けられるのは早くても一ヶ月後か。


「それなら大丈夫や。魔法学校の冒険者講座の単位を取っていれば、初心者講習は免除になるはずやからな」


「そんな授業があるのか」


 流石は冒険者の町の魔法学校だな。


「お待たせしました!チャーリーさんの冒険者登録とはじめさん達とのチーム登録が終わりました。チャーリーさんは冒険者講座の単位取得の記載があったので、Fランク冒険者からのスタートになります」


 どうやら本当に講習会が免除になったみたいだ。


「それとステータスカードの名前がリカになってたんですけど、どういう事でしょうか?」


「あー、本名がリカやからな。チャーリーはあだ名や」


 返却されたステータスカードを受け取りながら、そんなことを言ってごまかすチャーリー。


「・・斬新なあだ名の付け方ですね」


 若干不審がってはいるが、納得してくれたようだ。


「早速だけど、Eランクのチームで受けられる討伐依頼って何か出てる?」


 ボロが出ないうちに話を進めてしまおう。


「そうですね・・今だとオーク討伐やバ・ヌンボボ・バギ討伐の依頼なんかがありますが


「バ・ヌンボボ・バギって何や!?名前のクセが強すぎるやろ!」


 チャーリーのツッコミはほんと鋭いな。


「バ・ヌンボボ・バギはバ・ヌンボボ・バギです。バ・ヌンボボ・バギ以上でもバ・ヌンボボ・バギ以下でもありません」


「お前もうバ・ヌンボボ・バギって言いたいだけやろ!」


 再び冴え渡るチャーリーのツッコミ。

 漫才みたいで見ていて面白いが、これじゃ話が進まないな。


「チャーリー。冒険者としての心構えを教えるから、こっちに来てくれるか?マリーはリリーさんと話を進めといてくれるか?依頼の選択は任せるから」


「分かったわ」


 マリーはリリーさんと依頼票を並べて相談し始めた。マリー、頼んだぞ。


「それで、冒険者の心構えって何なん?」


 チャーリーは俺の前に来て、素直にそう聞いてきた。

 ふむ・・・チャーリーをリリーさんから遠ざけるために言ったが、ぶっちゃけ冒険者の心構えなんて良く分からん。俺が聞きたいくらいだ。

 それよりさっきのやり取り見て、チャーリーのツッコミがどこまで対応できるかが気になった。

 ここはチャーリーのツッコミ力判定でもしとくか。


「言いたいことも言えないそんなアナタには・・冒険者!


「反◯か!なんやその紹介の仕方は!」


「ヤダッ、私の年収低すぎ!?そう感じたアナタにオススメなのが、冒険者!


「ネット広告か!」


「【冒険者失格 第一の手記】申し上げます。私は冒険者になってしまいました


「太宰治か!冒険者失格て」


「冒険者とかいう職業が最高な件wwwww」


「2ちゃんねらーか!」


「親譲りの無鉄砲で、子供の頃から冒険ばかりしている」


「夏目漱石か!ぼっちゃんとは渋いとこ来たな」


「落書きの教科書と、剣ばかり見てる俺」


「尾◯豊か!この世界に教科書は無いわ!」


「依頼を受ける。魔物を倒す。金を得る。冒険者だもの」


「あいだみつ◯か!ちょっと分かりにくいぞ」


「ブンブン!ハローユーチューブ」


「ただのヒカキ◯やないか!冒険者の要素入れろや!」


「冒険者。ああ冒険者。冒険者」


「松尾芭蕉か!今度は冒険者要素入れすぎや。ほぼ冒険者としか言ってないやないか」


「ああ冒険者。あなたはどうして冒険者なの」


「シェイクスピアか!」


「・・・さっきから二人は何やってるの?」


 声がした方を見ると、マリーが変なものを見る目でこちらを見ていた。

 まずい。チャーリーのツッコミが的確すぎて、ついついハッスルしてしまった。


「まあ日本式のコミュニケーションってやつだな。それより、依頼はもう決まったのか?」


「ええ。オークの討伐依頼を受けたわ。バ・ヌンボボ・バギより少し強いくらいだし、お互いの実力を見るのにはちょうどいいと思って」


 そう言ってマリーは依頼書を見せてくれた。

 キリマウンテンで最近目撃されているオークを討伐せよ - オーク一頭につき銀貨三枚と書いてある。まあそこそこの値段だし、強さも程よいくらいで三人チームの初戦闘にはぴったりだな。


「良いね。それじゃ、早速向かうか!チャーリーも準備はいいか?」


「冒険者としての心構えは聞けんかったけど、装備の準備はバッチシや!いつでもいけるで」


「よし!じゃあオーク討伐へ出発だ!」


「「オー!」」


 俺達は意気揚々とギルドを出て、オーク討伐へと向かった。


・・・・・・・





 はじめ達を見送ったリリーは依頼書受付の処理をしていた。


「これで終わりっと」


 今日は依頼の受付が多くて、思ったより時間がかかってしまったものの、ようやく終わらせることができた。いま、午前中に受け付けた最後の依頼書であるはじめ達のオーク討伐依頼を処理した所だ。


「チャーリーちゃん可愛かったなー」


 依頼書を見て、先ほどはじめ達が連れてきた女の子を思い出す。

 茶色く短い髪をした、八重歯の可愛い子だった。冒険者になるには幼すぎるようにも思えたが


「まあ大丈夫か。はじめさんたちが一緒だし」


 ぱっと見、ノリだけで生きているように見えるはじめだが、あれでギルド長が認める程の実力を持っていたり、大量の手紙の配達を軽くこなしてくれたり、頼れる男なのだ。

 と。そんな事を考えていると、冒険者ギルドの扉が勢い良く開く音がした。


 【バタンッ】


 入り口の方を見ると、ベテラン冒険者のフォレスさんのチームが息を切らして立っている。


「フォレスさん!何があったの?」


「大変だマリーさん!キリマウンテンにオークジェネラルが出やがった!Cランク冒険者の俺達じゃ歯が立たないから、逃げてきたんだ!」


「え、キリマウンテン!?つい30分くらい前にはじめさん達がオーク討伐依頼で向かっちゃったわ!」


「何だと!?はじめって言うと新人のEランク冒険者か!オークジェネラルはBランク指定だ、出会ったら殺されちまうぞ!」


 まずいわ!早く連れ戻さないと!


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