028 バ・ヌンボボ・バギ討伐
「一ヶ月ぶりだな」
「なんか懐かしいわね」
俺たちは久々のキリマウンテンに到着した。
夏が過ぎて秋になったこともあり、キリマウンテンは赤い紅葉で色づいている。とても綺麗だ。
この世界でも紅葉狩りとかあるのかね。異世界で紅葉狩りってのも通で良いかもしれないな。
「ウホホッ」
「「バ・ヌンボボ・バギだ!」」
さっそく見つかった!
こんなに早く発見できるとは。
俺とマリーは声がした山の中腹部の方に走っていった。
「「「ウホホ」」」
「「ウホホホホホッ」」
「バ・ヌンボボ・バギ、めっちゃいるな!」
木々をかき分けながら山を登っていると、大量の鳴き声が聞こえてくる。
「今日中に依頼達成できそうね!」
「そうだな!ラッキーだ」
これで楽々Eランクだぜ!
もう少しだけ山を登ると、岩山がある地面が露出した場所に出た。
その岩山には、動物園にいる猿のようにバ・ヌンボボ・バギが大量に住み着いていた。ぱっと数えただけで10匹以上はいる。
「よし、二人で協力して倒そう!俺はバ・ヌンボボ・バギの後ろに回って首を切っていくから、マリーは大きめの魔法を使って注意をひきつけてくれ!」
「おっけー!」
「「「ウホホホッ」」」
俺達が作戦会議をしていると、バ・ヌンボボ・バギに気づかれてしまった。
「「「ウホホババババ」」」
そう言って、バ・ヌンボボ・バギが岩山に転がっていた大量のウンコを投げつけてきた!
汚い!
「キャー!!!!ファイアーアロー!」
マリーが悲鳴を上げながら必死の形相でファイアーアローを繰り出して、ウンコを撃ち落としていた。
どうやらウンコに当たるのは絶対嫌らしい。
まあ当然だが。
「「「ウハハウホ!」」」
ファイアーアローを目にしたバ・ヌンボボ・バギは、妙な鳴き声を出しながら岩山を逃げ回っていた。火が苦手なようだ。
「ナイスマリー!後は任せろ!」
バ・ヌンボボ・バギが混乱している今がチャンスだ。
俺は走って(時速200kmくらい)、バ・ヌンボボ・バギの後ろを取り、次々とその首をはねていった。
「「「ウホホッ!」」」
興奮したバ・ヌンボボ・バギが襲ってくるが、俺のスピードには着いてこれてない。タイミングを合わせて襲われたら危なかったかもしれないが、一匹づつなら全然怖くないぜ!
「はっ!」
「ウ」
そしてついに、最後の一匹となったバ・ヌンボボ・バギの首をはねることが出来た。
これで討伐完了だぜ。
「思ったより呆気なかったわね」
ウンコ投げショックから復活したのか、マリーが冷静な表情でそう言ってきた。
「そうだな。まあEランク試験だし、こんなもんじゃないか?」
スピードとかを見るに、ゴブリンより少し強いくらいだったしな。
数だけはかなり多くて、全部で15匹もいたが。
「とりあえず、魔石を回収しましょうか」
「そうするか」
魔石を取って帰るまでが依頼だしな。ここで気を抜かないようにしないと。
俺とマリーは黙々とバ・ヌンボボ・バギの胸についている魔石を回収していった。
ナイフで剥ぐ必要があると思っていたが、死んだら取れる仕様になっているのか、手で強く引っ張ったら普通に取ることが出来た。
本当にバナナの形をしている。
マニアに売れそうだな。
「うん?」
と、岩山に散らばるバ・ヌンボボ・バギの魔石を回収していると、一番大きな岩の下の方が光っているのを発見した。
「なんだこれ?」
しゃがんでよく観察すると、その光っているものは岩に刻まれた文字だった。
そこにはこう書いてあった。
【これを読む資格がある者へ】
【バ・ヌンボボ・バギの魔石と魔法で出した水をここに捧げよ】
「魔石と魔法で出した水?」
何を言っているんだ?この文字は。
秘密の部屋への扉でもあるのか?
何故だがこの言葉に強烈な違和感を覚える。だが、違和感の正体はわからない。
気持ち悪いな。
「はじめ、どうしたの?」
一人言を言っている俺が気になったのか、バ・ヌンボボ・バギの魔石を抱えたマリーがこちらに近づいてきた。
「いや、ここに変な言葉が書いてあってな」
「どれどれ・・うわっ!本当に変な文字ね」
「そうだろ?」
やっぱりマリーもそう思うか。
「ええ。どこの国の文字かしら?全く読めないわ」
「何だって!?」
文字が読めないだと?どういうことだ。
注意して光っている文字を丁寧に読んでみると、俺は違和感の正体に気がつくことが出来た。
「これ、日本語だ!」
さっきから感じていた違和感の正体がわかった。日本語だったからだ。
マリーが読めなくて当然だな。
俺は神様的な奴が脳を弄ってくれたおかげで、この世界の文字も普通に読むことが出来るが、日本語を忘れたわけではない。
だから読むことができたんだ。
「日本・・はじめの地元よね?」
マリーが興味深そうに聞いてくる。
そういえば、日本出身って事は伝えていたな。
「そうだ。なんでこんな所に日本語が」
おそらく転生者が書いたんだろうが、なんでこの岩山に?
「何て書いてあるの?」
「バ・ヌンボボ・バギの魔石と、魔法で出した水をかけろって書いてあるな」
「妙な指示ね。罠にしては回りくどいし・・・」
本当に妙な指示である。
ただ、転生者がわざわざ残したってことは、何か意味がありそうである。気になるな。
「とりあえず、指示に従ってみよう」
「分かったわ」
マリーは俺の提案を快諾して、持っているバ・ヌンボボ・バギの魔石を一つ、文字の前に置いてくれた。これで後は水をかけるだけである。
「ウォーターボール!」
俺は魔石の上でウォーターボールを唱えて、それをそのまま魔石にかけた。
すると、
「ゴゴゴゴ」
目の前に合った大きな岩が後ろにスライドして、岩の下に隠されていた宝箱が現れた。
形としては、RPGに出てくる典型的な宝箱といった感じだ。
「すごい仕掛けだな」
「こんなに大きな岩が移動するなんて」
驚きで固まる俺とマリー。
だが、ここでじっと立っていても何も始まらない。
宝箱を開けてみよう。
「開けてみるか」
「そうね」
俺は宝箱にゆっくりと開いてみた。
すると、鍵はかかっていなかったらしくアッサリと開けることが出来た。
「これは・・」
開けた宝箱の中身を見てみると、なんとそこには一冊の大学ノートが入っていた。
「これってなんなの?」
「俺達の国にあるノートだな。羊皮紙みたいな感じで、文字を書き残すのに使うんだ」
俺はそう言いながら、そのノートを開いた。
「なっ!?」
するとそこには、驚愕の内容が記されていた。




