022 喫茶店を始めよう(6)
「苦っ!」
「美味い!!」
メニスの面接を終えた後、俺はコーヒーを淹れていた。
まず採ってきたコーヒーの実から、緑色の豆を一粒一粒取り出す。そしてその豆の中から、色や形の悪い不良豆を丁寧に取り除く。そして厳選された豆を網の中に入れて火にかけて焙煎する。こうして焙煎した豆を、石でザラザラの砂くらいの大きさの粉になるようにすり潰してゆく。出来たコーヒーの粉を布の袋にいれて、上からお湯を注いでゆく。すすぐ時はゆっくり円を描くように、蒸らしをいれながら淹れてゆく。
こうして出来上がったコーヒーを今、俺とマリーが試飲していた。
「やっぱりコーヒーは最高だな!この香りと苦味と仄かな甘味!飲み物界の大様や!」
「・・・なにそのキャラ?」
おっといかん。
テンションが上って彦麻◯が出てきてしまった。
「つまり最高に美味いってことだ。いやー、開店に間に合って良かったぜ」
コレさえあれば、俺の理想の喫茶店が出来る。
「うーん、好みの問題なのかしら?私はそんなに美味しいと思えないんだけど」
そう言って、コーヒーを手に持ったまま首をかしげるマリー。
なに!?
これが美味しくないだと?
「何言ってるんだマリー。この苦味といい香りといい、最高じゃないか」
「香りが良いのは分かるんだけど、苦味がね。。もう少し甘くならない?」
ほう。
なるほど、苦味が苦手なのか。
そう言えば、こっちの人は紅茶にも大量の砂糖を入れて飲んでいたな。そもそも苦味に対する耐性があまり無いのかもしれない。
「なるほど。じゃあこいつでどうだ?」
俺はマリーのコップに砂糖と牛乳を入れてかき混ぜた。
カフェオレの完成である。
俺が作ったカフェオレを見て、一瞬疑わしそうな目をしたマリーだったが、カップを受け取って飲んでくれた。
「あ、これなら美味しいわ!甘さの奥に苦味があって、良いアクセントになってるわね!」
「やはりそうか!」
マリーもカフェオレなら気に入ってくれたようだ。
良かった良かった。
「なら、メニューにはカフェオレを載せるか。コーヒーは裏メニューとして苦味を味わえる人にだけ出そう」
いずれはコーヒーをストレートで飲め交わせる、同好の士に会えることだろう。
「その方が良いかもね」
そう言った後、カフェオレを飲み干すマリー。
随分気に入ってくれたようだ。
「これでメニューがだいぶ出来上がってきたわね」
「たしかにそうだな。もう開店しても何とか営業できそうだ」
ちなみに今のメニューはこんな感じである。
・紅茶 (セイロン・ダージリン・カモミール)
・カフェオレ
・タッキー
・ナポリタン
・オムライス
飲食店としては物足りない感じだが、軽食が食べられる喫茶店ならこんなもので良いんじゃないだろうか。
欲を言えば、食事と飲み物にそれぞれ一品ずつくらい追加したいところだが。
「出来たら、もう少しだけ何かメニューが欲しいところだな」
「なにかあるかしら・・・」
喫茶店と言えばコーヒー、紅茶、あとは・・メロンソーダ?
でもソーダって作り方わからないな。炭酸は重曹を入れて混ぜればよかった気もするが、そもそも重曹なんて何処にも売っていないし。
メロンらしき果物も見たこと無い。
「「うーん」」
二人して立ったまま新メニューを考えつづける。
「あ、水なんてどうかしら?」
「水!?Water?」
水でお金取るのは流石にボッタクリじゃなかろうか。
高級フレンチ店とかならまだしも。
「水って言っても、井戸から汲んだやつじゃないわよ!はじめが出すウォーターボールの事よ。あれかなり美味しかったし」
「ああ、そういう事ね」
びっくりしたぜ。
マリーが急にボッタクリ精神に目覚めたのかと思ってしまった。
「たしかに、アリだな。あれなら美味しいし。原価ゼロだから儲かるし」
そう言って、俺は手をコップの上に持っていき、ウォーターボールを唱えた。
すると、前と同様に手のひらサイズの水の玉が出現し、力を抜くとコップの中に落ちる。
「うん、相変わらず美味いな」
日本で売ってたミネラルウォーターより、全然美味い。
「一口頂戴!」
マリーは俺が持つコップを取って飲み始めた。
そのまま観察してると、一口と言っておきながら全部飲んでしまった。
まあいくらでも出せるから良いんだが。
「じゃあ、これもドートルウォーターとして、メニューに加えるか」
これでメニューが6つに増えた!
後は、何かもう一品食べ物メニューを考えれば完璧だな。
ん、待てよ。水だけでこれだけ美味しいってことは・・・
「あ!」
「どうしたの?何か新しいメニューでも思い付いた?」
マリーがコップを置いて俺に聞いてきた。
その通り!思い付いたぜ!
「この水でコーヒー淹れれば最高に美味しくなるんじゃね?」
水単体でこんなに美味いんだ。
これでコーヒーを淹れれば究極の一杯が出来上がるはずである。
早速試してみなくては。
「たしかに美味しくなりそうね・・・紅茶も淹れてみたいから、水を少し分けてもらえないかしら」
マリーはそう言って、コップを差し出してきた。
「おっけー。ウォーターボール!」
呪文を唱えて、俺は水をマリーに分け与えた。
そして、コーヒーを淹れるためにキッチンへ豆を取りに行く。
最高の一杯を淹れてみせるぜ!
喫茶店編が楽しくて中々終わらない(´・ω・`)




