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駿足の冒険者  作者: はるあき
0章 プロローグ
20/123

019 喫茶店を始めよう(3)

「コーヒーが飲みたい」


「は?」


 俺とマリーは今、喫茶店のメニューを確定させようとしていた。現在までに決まったメニューはこんな感じだ。


・紅茶 (セイロン・ダージリン・カモミール)

・タッキー

・ナポリタン

・オムライス


 これで決定でも良いのだが、やはり喫茶店ならコーヒーが欲しくなってきた。

 俺はコーヒーが大好きで、日本でも毎日欠かさず飲んでいた。

 この世界に来て唯一の不満があるとすれば、コーヒーが飲めなくなったことだと言ってしまうくらい、コーヒーが好きなのだ。

 せっかく喫茶店をやるなら、なんとしてもコーヒーを見つけて飲みたいし、メニューに載せたい!


「俺の国で広く飲まれていた飲み物でな。見た目は真っ黒な泥水の様なんだが、味は最高に美味いんだ」


「へー、そんな飲み物があるのね」


 まあ、この世界にあるかどうかは分からないが。

 でも紅茶もあるくらいだし、コーヒーがあっても不思議はない気がする。


 となると、コーヒーの木自体はあるけどまだ発見されてないのかな?

 地球だと、コーヒーの実を食べてテンション上がってるやぎを見つけたのが、コーヒーの起源だったよな。


「というわけで、ハイテンションなヤギを見たことはないか?」


「どういうつながり!?」


 うん。

 今のはちょっと言葉が足りなかったな。


「まあ、その情報なら無いことはないけど」


「あるのかよ!」


 本当にあるとはびっくりだ。


「たしか服屋のメグがそんな話をしていた事があったわ」


「そうなのか」


 すごいな、女子のネットワークは。

 やっぱり立ち話とか多いから、そういう話が入ってきやすいんだろうか。


「じゃあ、詳しく聞きに行ってみるかな」


「あー、どうだろ」


 俺が服屋まで聞きに行こうとすると、何故か渋い顔をするマリー。

 うん?何か問題があるのかな?


「メグのとこは今ちょっとややこしい事になってるから・・・」


「ややこしい?」


「ややこしいというか、修羅場というか」


 どういうことだろう?

 修羅場?


「まあ、はじめなら大丈夫かもしれないわね。事態が好転するかもしれないし」


 マリーは何か思いついたのか、その服屋までの道を羊皮紙に書いて渡してくれた。


「何か怖くなってきたが、行ってくるわ」


「うん、行ってらっしゃい!気をつけてね・・・(本当に)」


 こうして俺はハイテンションなヤギの情報を求めて、服屋へと向かうことになった。

・・・



「ここか?」


 俺は地図を頼りに、メグさん?がいると思われる服屋の前に来ていた。

 しかし、扉の前には閉店中の札がかけてあり、どう見ても営業していない。

 とりあえず、ノックして声をかけてみる。


「すいませーん」


 ・・・反応がない。

 が、何か中で話し声が聞こえる。

 入ってみるか。


「ごめんくださーい」


 俺は勇気を持って扉を開けて店内に入ってみた。


「メグ、好きだ!俺にはお前が必要なんだ!ついてきてくれ」


「私もラッセルが好き・・・でも簡単には決められないわ!」


 店の中に入ると、美男美女のカップル(?)が言い争いをしていた。


 言葉から察するに、転勤が決まった男に女のほうがついていくかを迷っている感じかな?

 異世界にも転勤があるのかは知らんが。


「私には第二夫人とは言え貴族の夫がいるのよ!貴族を敵にまわすのは・・・何より私はまだ優しい夫を裏切れないの」


 カップルというか不倫だった。

 異世界にも不倫文化ってあったんだな。


「夫がどんなやつか俺は知らない。でも、これだけは言える。俺が一番メグを愛している!!」


「ラッセル・・・」


 おお、盛り上がってきた!

 俺はここに居ていいんだろうか?


「私も、今一番愛しているのはラッセルあなたよ。でも・・・」


「メグ・・」


 さっきからメグさんの方は言葉が途切れがちだ。

 よほど葛藤しているのだろう。


「小さい頃からいつも一緒に遊んでて、初めて付き合ったのもラッセルで、いつか結婚するんだろうなってずっと思ってた。でも、ラッセルが王都に店をかまえることになって、その後少しして私の父親が死んで、私が貴族様に見初められたときから、何かが狂っちゃったね。どうしてこうなったんだろう?」


「メグ・・・俺も、いつかはメグと結婚すると思っていた。その気持を共有できていると思っていた。でも、そんな状況に俺は甘えてしまったのかもしれない」


 そう言って、顔を伏せるラッセル。

 うん、何かドラマが始まりだした・・・

 どうしよう。これ凄い気まずいんだけど。一旦帰ったほうが良いなこれ。出直しだ。


「ん?」


 俺が扉を閉めて帰ろうとしていると、ラッセルと目があってしまった。

 タイミング悪いな!


「君はお客さんかな?悪いけど今日は・・・いや、ちょうど良い。少し相談に乗ってくれないか」


 嫌です!

 とか言える雰囲気じゃないよなー。


「はい、俺で良ければ」


 話を聞いてみるしか無いだろう。


「実は俺とメグはいま愛し合っているんだが、メグには夫がいて・・・でも俺はメグを幸せにする自信があるんだ!誰よりも愛している!一緒に王都に来て欲しい!」


 さっき聞いたよ!


「相談したいのは第三者から見て、俺達がどうした方が良いかってことなんだ。いま俺達は熱くなっていて、いや熱く愛し合っていて冷静になれていないんだ!ここは、冷静な第三者の意見が聞きたい」


 そう言って、俺に意見を求めてきた。

 くー、答えづらい!

 なんちゅうタイミングで来てしまったんだ。


「ラッセルさんの気持ちは分かりました。それでメグさんはどうなんですか?ラッセルさんの事は好きなんですか?」


「私もラッセルを愛しているわ!・・・でも、今の夫も悪い人ではないし、裏切るのも申し訳無いという気持ちがあるの」


 ・・・まあ、さっき聞いたから知ってるんだが。

 さて、どうするか。

 ここが日本なら法律ってもんがあるから、不倫はダメだ!頭を冷やせと一括できるんだが、この世界にそんな制度があるか分からんからな。


「思いの強さの問題だと思うんです」


 俺はもう正直に自分の意見を言うことにした。


「もし、いまメグさんとラッセルさんが何もかも犠牲にしてでも二人でいたいなら、二人で王都にいったほうが良いと思います」


「俺は何を犠牲にしてもメグといたい!」


 いや、ラッセルの意見は今どうでも良いんだよ。ラッセルは失うものが殆ど無いしな。


「でも、少しでも今の生活や、今の夫を好きな気持ちがあるなら止めておいた方が良いと思います。」


 そう言って、メグさんの方を見た。

 もうこの修羅場の結末はメグさんの意志にかかっている。


 しかし、メグさんは悩んでいるらしく、中々言葉を返してくれない。


 そのまま数分が立った頃だろうか。

 ついにメグさんが口を開いた。


「私決めました!ラッセルについていきます。今の生活にさほど固執はしてないですし・・・自分の気持ちを見つめ直すと、今の夫への気持ちに愛情はなかったです」


「そうですか」


 そっちにいっちゃったか。

 不倫を勧めたようで、少しココロが痛い。


「ありがとう。メグ!」


 ラッセルは相当嬉しかったのか、メグさんに抱きついて目に涙を浮かべている。

 まあ、あれだな。これだけ愛されるなら着いていった方が幸せになれるのかもしれないな。

 しばらく二人して抱き合っていたが、俺の存在を思い出したのか、数分後に離れてくれた(遅いわ!)。


「お兄さん。ありがとうございました。私たちは今から王都へ行こうと思います。私は王都で武器屋をやっているので、王都に来た時は是非いらしてください。サービスします」


「私からも、ありがとうございました!お陰で決心がつきました」


「お役に立てて何よりです」


 ココロは痛いが。


「ではまた!」


 そう言うと、ラッセルさんとメグさんは逃げるようにしてこの店を出て、門の方へと走っていった。


 あれが逃避行ってやつか。初めて見たな。

 頑張って幸せになれよ!!



 ・・・あっ!

 ハイテンションヤギのこと聞くの忘れた!


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