001冒険者の町_ファンタジスタ
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なんとか間に合った。門が閉まろうとしたときは、もうだめかと思ったぜ。
「はぁはぁ」
全力で走ったからか、息が全然整わない。
異世界についてすぐに数十キロも走り続けたからな。当たり前か。むしろよく今まで走っていられたな。瞬◯のご加護か?
倒れ込んだまま体力を回復させていると、先程の門を閉めた衛兵二人がこちらに近寄ってきた。一人は、金髪でヨーロッパ系の顔立ちをしており、もうひとりはフルフェイスの鎧を身につけている
「あー、なんというか。すまんかったな。」
金髪の方の衛兵が俺に謝罪してきた。
「しかし、町の安全を考えると、あんな魔物を門内に入れるわけにはいかなかったんだよ」
そう言いながら、俺に手を差し出してきた。
・・・まあ、金髪の言い分もわかる。ここでグチグチ言うのはやめるか。
「最終的には間に合ったから、良いよ。」
俺はそう言いながら、差し出してくれた手につかまって体を起こした。
「そう言ってもらえると助かる。しかし、あれはおそらくビックマウスウルフだろう?頭が悪くて罠にかかりやすいからCランクになっているが、攻撃力や素早さならBランク相当の魔物のはずだ。よく逃げ切れたな」
Bランクの強さがいまいち分からんが、金髪の口ぶりからするにあの狼、かなり強い魔物だったらしい。
「逃げ足の速さには定評があるんでね」
俺はドヤ顔でそう言った。
「いや、別にそこは誇れることじゃないと思うが・・・そうだ、さっきビックマウスウルフが門に激突していたな。あれだけの勢いでぶつかったら死ぬか気絶してるだろうし、素材の回収でもしていくか?」
苦笑いしながら、金髪がそう聞いてきた。
「そうさせてもらおう。ちなみに、この街って入町税とかかかるのか?あの狼から逃げるときに、荷物をほとんど落としてしまってな、一文無しだ」
ここでいきなり転生したなんて言っても、おかしい奴扱いされるだろうし、ここは適当にごまかしておこう。
「それは災難だったな。入町税は銀貨1枚だが、ビックマウスウルフを売れば銀貨40枚にはなるだろうし、後で払ってくれれば良いよ」
「そうか、ありがとう。この狼は何処で売れば良いんだ?」
この金髪は良いやつっぽいし、ここで色々聞いておこう。
「魔物を売るなら冒険者ギルドだな。目の前の通りの突き当たりにある」
そういって金髪が指を指した方向を見ると、遠くに茶色い建物が見えた。剣と盾が交差したロゴの看板が掲げてあって、いかにも冒険者ギルドって感じだな。
「なるほど。しかし、あの大きい狼をあそこまで運ぶのか」
思わずため息が出る。
「さっき門を閉めちまったお詫びに、俺が運んできてやろうか?明日の朝にでもここに来てもらえれば、売却額を渡すぞ」
ほう。やはりこの金髪はなかなか良いやつだな。
俺の筋力じゃ運べないだろうし、ここはお願いするか。
「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。でも、一文無しだから、出来るだけ早めにお金がほしいんだが・・・」
「そうだったな。それなら、銀貨10枚だけ先に渡しておいてやるよ。そうすれば、今晩の宿代にはなるだろう。差額は明日渡すってことで」
そう言いながら、金髪はポケットの中から銀貨を出して渡してくれた。
「ありがとう!ちなみに、おすすめの宿とかってあるか?」
「それならブルーオーシャンって宿がおすすめだ。部屋がきれいで、何より飯がうまい」
「飯がうまいのは良いな」
宿における最重要ポイントと言っても良い。
「そうだろう?エドウィンの紹介だって言えば、多少は割り引いてくれるはずだぜ」
どうやらこの金髪の名前は、エドウィンと言うらしい。
「助かるぜ。ならその宿に泊まろうかな。ちなみに、俺の名前ははじめだ」
「分かった、はじめだな」
そう言うと、エドウィンはわざとらしく咳払いをして、手を町の方に向けながらこういった。
「ようこそはじめ!冒険者の町ファンタジスタへ!」