012 ゴブリン討伐(前半戦)
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「はじめ達は今日が冒険者デビューか。頑張ってこいよ!」
「ありがとうエドウィン!行ってくる!」
今、俺とマリーはゴブリン討伐に向けて町の門から旅立とうとしている。
あの後、ゴリアから初依頼にゴブリン討伐を勧められた事をマリーに伝えた。
そしてやってみたいと話したら、二つ返事で同意してくれた。
そこでさっき、ギルドに行って依頼を受けてきたのだ。
ちなみに、いつものようにリリーさんに依頼受付してもらおうとしたのだが、今日は初めて見る黒髪の女の職員さんが受付をしていた。リリーさんは体調不良で午前休をとったらしい。
黒髪のお姉さんは、リリーさんが体調不良で休むのは珍しいから心配だと言っていたが、十中八九ただの二日酔いだろうから心配はいらないと思う。(俺達は優しいので言いはしなかったが。)
というわけで、ついに冒険者としてのデビュー戦である。
ゴブリンは、俺が転生した時に降り立った魔の森の浅い部分によく出るとのことだったので、俺達は今魔の森に向けて歩いている。
そんなに遠い距離でもないし、今はほとんど手ぶらの状態なので(俺とマリーの荷物はほぼ全て収納袋に入れてある)、一時間も歩けば着くだろう。
「魔の森から逃げてきたのが、2週間前か。懐かしいな」
「そういえば、ビックマウスウルフから逃げたって言っていたわね」
「ああ、あいつは中々の速さだったな。俺ほどじゃないが」
「やっぱりはじめの俊敏性って、常軌を逸してるわよね。何すればそんなに速くなるのよ」
呆れたようにそう言うマリー。
そういえば、チームも組んだことだし、俺の秘密をマリーに教えても良いかもしれないな。
「そういえば、まだその辺のカラクリを教えてなかったな。チームも組んだことだし、教えるよ」
俺はそう言って、収納袋からステータスカードを取り出して、マリーに渡した。
「いや、この状態で渡されても見えないんだけど」
そうなの?
ステータスカードの使い方は相変わらず良く分からないな。
マリー曰く、所有者がステータスを表示させた状態であれば見えるらしいので、ステータスを表示させることにした。
【ステータスをチェックしますか? YES or NO】
YESだ。
すると、昨日森で見たステータスから少し変化したものが表示された。
名前:西東はじめ
種族:人間
職業:冒険者 Fランク
LV:1
HP:10/10
MP:10/10
STR:15 [備考:筋力値]
VIT:12 (+2) [備考:物理防御力]
AGI:9 (×100) [備考:俊敏性]
INT:6 [備考:魔法攻撃力]
MND:5 [備考:魔法防御力]
所持スキル:なし
所持魔法:なし
装備品
神の靴:速さのみを追求した神の作りし靴。俊敏性×100。レア度☆10
収納袋:空間魔法が施された袋 ☆3
「ええっ!はじめってまだLv1だったの!?」
「え、驚く所そこ?」
もっと他におかしなところあるでしょ!AGIの値とか、神の靴とか、神の靴とか!
「だって、今時5・6歳の子供だってLv3はあるわよ。どういう生活してたらLv.1で居られるのよ」
「そうなの!?」
初耳だ!
って言うことは俺のステータスは子供以下なのか。ちょっとへこむ。
「実は俺、日本っていう物凄く遠い国から来たんだ。その国ではLevelを上げるなんて概念がそもそも無かったんだよ」
異世界から来たとか言ってもすぐには信じがたいだろうから、まずは違う国から来たとだけ言っておこう。
「そうだったのね。どおりで偶に常識が通じないと思ったわ」
どうやら常識のないやつだと思われてたらしい。
「でもLv1じゃ魔物を倒すの難しくないかしら?」
「そこはギルド長直伝の技があるから大丈夫だ。一瞬で魔物の後ろに回って首を切る!」
初心者講習のときにみっちり教えて貰えたからな。
落ち着いてやれば問題ないはずだ。
「ま、はじめの速さがあれば大丈夫か。ってそういえば速さもおかしかったわね!なによ✕100)って」
ようやく、気がついたか。
「ふっふっふ。それは装備品補正でな。この靴のお陰で、俺は速く居られるんだ」
そう言って、履いている瞬◯を見せびらかす。
「うわっ!今気がついたけど、変な靴履いてるわね」
変な靴とは何だ!神の靴だぞ、神の靴!
「というか今まで気がついて無かったのか」
瞬◯には赤と黒の原色カラーリングに、複雑な模様がプラスチックで描かれている。これだけ目立てば注目してしまいそうだが。
「なぜだか目がいかなかったわね。認識阻害の魔法でもかかっているのかしら」
認識阻害。そういうのもあるのか。
「そうかもしれん。なにせ神の靴だからな」
どんな魔法がかかっていてもおかしくない。
「神の靴って凄いわね!勇者様が使ってた伝説級の装備で、天空の鎧っていうのがあったけど、それでも(AGI✕2)くらいの補正くらいだったはずよ」
え?伝説級の装備でもそんなものなのか!
すごいな神の靴、流石は瞬◯ってところか。
「まあ俺の国で何千人もの人が関わって、数年がかりで作り上げたものだからな」
ほんとに、メーカーの研究者・開発者・製造者の人には頭が上がらないな。
この靴がなければ、俺はこの実力主義な世界にきて、生きていけなかったろう。
「そんなに貴重な物を持ってこれるって、はじめってひょっとして貴族様だったの?」
「いや、庶民だよ。俺達の国では大量生産の技術がすごくて、この靴も何万足も作られていたはずだ」
この世界の感覚だと、イメージ沸かないだろうけど。
「そうなの、こんなのが何万足って。とんでもないわね」
目を見開いて驚いているマリー。
「まあ俺の国は本当に遠い所にあるから、この国まで来てるとしても数人だろうけど」
転生者自体はもうちょっといるかもしれないが、大抵の人は転生してもすぐに死んじゃってる気がする。
「そうなのね。でもはじめの常軌を逸した速さの原因が分かって、なんだかスッキリしたわ」
驚き疲れたのか、そう言いながら伸びをするマリー。
ステータス見せちゃうと、気味悪がられるかもって不安があったんだけど、思ったより好意的な反応で安心したぜ。
「そうだ!私もお返しにステータス見せるわね」
そう言って、小物を入れてある小さいカバンから、ステータスカードを出して俺に見せてくれた。
名前:マリアンヌ
種族:エルフ
職業:冒険者 Fランク
LV:15
HP:150/150
MP:150/150
STR:80 [備考:筋力値]
VIT:80 (+2) [備考:物理防御力]
AGI:110 [備考:俊敏性]
INT:180 (+30) [備考:魔法攻撃力]
MND:200 [備考:魔法防御力]
所持スキル:自重緩和
所持魔法:火魔法(生活・下級・中級)
装備品
ユグドラシルのミサンガ:エルフの国で作られたミサンガ。魔法攻撃力+30
おお、これがマリーのステータスか!
「Lv15って凄いな!」
「え、驚く所そこなの?言っとくけど、Fランク冒険者だったらLv15って平均くらいだからね」
そうなのか、思ってたより高いんだな。
たとえFランクでも、冒険者ってのは優秀なのか。
「ちなみに、このスキルの自重緩和ってのは何なんだ?」
字面からなんとなくのことは分かるが。
「ふふっ、よくぞ気づいたわね。これが私のユニークスキルよ!このスキルは凄いんだから!」
「ほう、どうすごいんだ?」
自重を緩和するってことは、体の動きが軽くなって俊敏性が上がるとか?
「これは自分の体重を1/10まで下げることができるの!」
「おお!」
凄い!・・・のか?
ノリで驚いてしまったがどういう使い方をするんだろう?
走る時とか体重軽くしすぎちゃうと、地面を蹴りづらくなってスピード落ちそうだし。
「このスキルがあれば、どんなに食べすぎても体重気にする必要無いんだから!」
「そういうことかよ!」
それってそんなに重要な事か!?
「なによその目は!女の子にとって体重って、めちゃくちゃ重要なんだからね!」
「気持ちは分かるが」
でも冒険者として生きていく以上、戦闘にどう活かすかのほうが重要な気がする。
「めちゃくちゃ重要なんだからね!」
「わかったから!」
二回も言うとは。
どうやら本当に重要らしい。
でもやっぱり俺は、どうやって戦闘に活かすかのほうが重要な気がする。(二回目)
その後は、このスキルをどうやって戦闘に活かすかについて、俺とマリーで話し合うことになった。
・・・
そうこうしてるうちに、魔の森が近づいてきた。
昼前に到着できたので、魔の森の少し奥の方まで光が届いており、見通すことができる。木々は数十メートル上まで伸びており、ななめ下から見上げるとギリギリてっぺんが見えるか見えないかくらいだ。
奥には鬱蒼とした森林が広がっており、この背の高い木が所狭しと生えている。
今日は昼前に来たせいか、はたまたマリーと二人で入るせいか、転生したての時に感じた不気味な感じはしないな。
ゴブリンは森の浅いところに居るらしいし、さっさと見つけて退治しちゃみますか。
「じゃ、さっさと入ってゴブリン探すか」
「そうね!初依頼、絶対に成功させるわよ。」
「おう!」
俺達は気勢を上げて、魔の森へと突入した。
ゴブリン討伐と副題を付けておきながら、まだゴブリンは出てきていません。次の更新で出てきます。