116 後悔
誰も、何も言わなかった。
黙って、リカちゃんの話を聞き続けた。
「ごめんね、はじめ。私がチャーリーの援護をできていれば・・・」
話が終わってしばらく経った時、マリーが消え入るような声でそう言った。
顔は涙でぐちゃぐちゃになっており、瞳からはとめどなく涙が溢れてきている。
「いや、俺が悪い。どうにかしてもっと早く戻ってくるべきだった」
これは俺の責任だ。
チャーリーが逃げることを放棄してエクス戦い続けたのは、この時計台にある望遠鏡を守ろうとしたからだ。
俺が無事に帰還出来るように。
俺の命を守るために。
なんで。
なんでチャーリーが死んだんだ。
俺が死ぬべきだったんだ。
チャーリーは何十年もの間、この世界を守るため、リカちゃんの願いをかなえるために戦い続けた。
何度も繰り返されるループで、たった一人孤独に。
それはどれほどの勇気が必要だったのだろう。
絶望的な状況にいながら、試練に挑み続けた。死を覚悟しながら。
俺なんて、なんの覚悟もしてなかった。
死にそうな事態になれば逃げる気だった。
世界の平和なんかより、自分の命のほうが大事だった。
・・・
チャーリーの気持ちには気づいていた。
チャーリーが俺のことを好きでいてくれていると。
そして俺も、チャーリーのことが好きになっていた。
でも、俺はそれを伝えようとはしなかった。
今の関係が崩れてしまうのが怖かった。マリーの事も好きなままだったし、チャーリーと三人で冒険している、今の瞬間が楽しすぎて、心地よすぎた。
ああ、俺は最低だ。
なんで俺が生き残って、チャーリーが死ななければならなかったんだ。
・・・
その後のことはよく覚えていない。
気がつくと、時計台地下のキャンプ地に戻っていて、テントの中で眠っていた。
そして、2週間が経った。