113チャーリーの追憶12
しばらく毎日更新します。
あれから2週間の時が経った。
次の試練の兆候は現れず、平和に時が過ぎていった。
もう自分の気持ちを隠す必要もない。すごく楽しくて、穏やかで、もうしばらくこんな時間が続けばいいなと、そう思ってしまうほど平和な時が過ぎた。
しかし、そんな日々もある日突然終わりを迎えた。
ルーラ聖国が崩壊したという情報が、シュタインからもたらされたんや。
そこからは、怒涛の勢いで事態が進展することになる。
ルーラ聖国に到着し、エクスの情報を知った。そして、シルビア王子にエクスの本拠地の破壊を依頼された。
正直、シルビア王子達が立てた作戦は穴だらけでかなり不安だったけど、はじめが作戦を修正したおかげでなんとかなりそうになった。
そして今、私の眼の前ではじめが宇宙へと旅立とうとしている。そんなはじめに、私とマリー、シルビア王子、キャペルニクス、モニカさんの五人で結界魔法をかけているところや。
「「「「「ポリゴンシールド!」」」」」
ついに詠唱共鳴が成功し、結界魔法が発動した。
はじめの周りには、薄い魔力の膜が張っている。どうやら、成功したみたいや。
「成功したのか?」
「ああ、どうやら成功のようじゃ。声が聞こえないから驚いたが、よく考えると当然のことじゃったな。むしろ成功の証と言って良いじゃろう」
「良かった、成功していたか」
はじめとキャペルニクスの間で、そんな会話が成された。
もう、出発のときは近い。
「サクッとエクスの本拠地ぶち壊してきぃや!」
はじめになんて声をかけようか迷ったけど、はじめなら今回も簡単に試練を攻略できる気がして、そんな言葉をかける。
緊張さえしなければ、はじめは無敵やからな。
「ありがとう、行ってくるぜ!!」
はじめは笑顔で宣言して、大空に向かって走り出した。
ぐんぐんと加速していき、数秒ほどするとほとんど見えなくなる。ここからは、ツインペアによる通信に頼るしかない。
「それでは、儂ははじめに指示を出すために望遠室に籠もることにする。ないとは思うが、魔物がここを襲ってきた場合は撃退してくれ」
そう言い残すと、キャペルニクスは小走りで階段を降りていった。少し焦っているようにも見える。
まぁそりゃそうか。
今回の作戦は、彼の指示とはじめの走力にかかっとるからな。力も入るやろう。
「さて、我々はこの時計台の警備につくとしよう。ここを落とされてはじめへの指示が出せなくなると、作戦は失敗するし、はじめが死んでしまうからな」
シルビア王子は少し上ずった声でそう宣言した後、階段を降りていった。
どうやら彼も緊張しているみたいや。
そんな王子の後ろを、テクテクとモニカさんがついて行く。
彼女は緊張していないみたいで、すました表情で足取りもしっかりしている。流石は王都の密偵部隊の隊長と言ったところやな。
「私達も行きましょうか」
マリーがいつもの綺麗な声で話しかけてくる。
少し不安そうな表情ではあるが、緊張はしていないようや。
「せやな。今にもエクスが攻めてくるかも分からんからな!」
私はそんな冗談を返して、マリーと二人で階段へと向かった。
この時に言った事がまさか現実になるなんて、この時は考えてもいなかった。