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駿足の冒険者  作者: はるあき
0章 プロローグ
11/123

010 Fランク冒険者認定

11/25 誤字改定

 マリーが実技試験を合格した後、俺は約束通りギルド長に特訓を受けていた。(ちなみに、マリーは試験時間が長かったせいか、疲れが出たので、俺の特訓を見学しながら休むことになった。)


 ギルド長からは、魔物の攻撃を躱す方法や、ナイフで大体の魔物の弱点である首を斬りつけるにはどうしたら良いかなど、実践的な技術をいくつも教えてもらえた。

 また盗賊との戦いを想定して、剣を持った相手からの攻撃を躱す方法や、敵に魔法使いが居た場合の対処法などを教えてもらえた。(盗賊にいる程度の魔法使いなら、はじめのほうが速いからとにかく走って翻弄しろと言われた。非常に俺向きで助かるアドバイスだが、一般的な対処法も知りたかったところだ)


 そうして初心者講習を全て終えた俺達は、リリーさんのいる受付まで来ていた。


「試験合格おめでとうございます!はじめさん、マリーさん。」


 リリーさんはまるで自分が合格したかのように嬉しそうだ。

 そこまで喜ばれるとなんか照れるな。


「ありがとうございます!でもペーパーテストを合格できたのは、リリーさんの教え方が上手かったからですよ」


 もし説明ベタの講師だったら、もっと覚えが悪くなっていたに違いない。

 横を見ると、マリーも同感だったのか頷いている。


「そうですよ!しかも実技試験ではギルド長に一発入れるのに、相当時間かかっちゃいましたし」


「ええっ!ギルド長に一発入れることができたんですか!?」


 そう言って目を見開いて驚いているリリーさん。

 うん?どういうことだろう?

 それが試験の合格基準だったはずだが。


「ギルド長は試験に緊張感を持たせるために、一発入れると合格ってルールにするのですが、実際は一発も入らなくてもある程度の実力を示すことが出来れば合格になるんです」


 そうだったのか!

 これはギルド長に一本取られたな。まぁ試験受けてるときも、合格基準厳しすぎじゃね?とは思ったんだよな。

 Fランク冒険者がみんなギルド長に一発入れられるなら、Fランク冒険者は猛者の集まりということになってしまう。


「え、そうなの!?」


 マリーも相当驚いているな。1時間位ずっと粘ってようやく一本もぎ取っただけに、衝撃も俺よりデカイのだろう。


「はい、ちなみに初心者講習会でギルド長に一発入れた人は、二年ぶりくらいだと思いますよ」


「そんなに突破率低かったのか」


「まあギルド長、あれで元Aランク冒険者ですからねー」


 書類仕事は全然出来ないので困るんですけど、と小声で付け加えるマリーさん。たしかに、ギルド長肉体派っぽいし、書類とか書くの苦手そう。


「とにかく、お二人はペーパーテストも実技試験も高評価で突破した、期待の新人ってことですよ!」


「そう言われると、なんだか嬉しいわね」


 期待の新人、たしかに心躍る言葉だ。

 しかし、調子に乗っているとすぐに死んでしまいそうな世界だからな。

 増長せずに慎重にやっていきたいところだ。


「ちなみに、今日はこれで終わりですか?」


 終わりなら、マリーとお祝いにでも向かいたい。

 もう夕暮れ時になってきたし、今日くらい飲んで羽目をはずしても良いはずだ。


「いえ、もう少しだけあります。今日はステータスカードへの正式な冒険者登録と、Fランク冒険者証の交付を行います。準備がいるので30分ほど飲食スペースで待っていてください!」


 そう言うと、リリーさんは準備に向かったのか、受付の奥に走っていった。

 ・・・なんか急かしてしまったようで申し訳無いな。


「じゃあ、待っていましょうか」


「そうだな」


 ここで突っ立っていてもしょうがないし、俺達は居酒屋スペースに行って待つことにした。

 マスターに紅茶を2つ頼むと、俺達の会話を聞いて既に作っていたのか10秒ほどで出てきた。マスター、できる男だな。


「ねえ、はじめ。ちょっと相談したいことがあるんだけど」


 紅茶を一口飲むと、意を決したような感じでマリーがそう切り出してきた。

 このタイミング、もしやあれかな?


「私と一緒にチームを組んでくれない?」


 マリーが少しかたい笑顔を作ってそう問いかけてきた。

 やっぱり、チームのお誘いだったか。

 何故わかったのかというと、俺も同じことを考えていたからだ。なにせマリーとは気も合うし、ポジションとしても前衛の俺と後衛のマリーは相性が良い。しかもマリーと居ると楽しいし、チームを組むのにこんなに最適なパートナーは居ないだろう。


「こちらこそお願いするよ。実は俺も同じことを考えていたんだ」


 そう言って俺はマリーに手を差し出した。

 するとマリーは嬉しそうに俺の手を取り、固く握手を行った。


「そうなんだ?嬉しいわ!ちなみに、なんで私とチームを組みたいって思ってくれたのかしら?」


 まだ喜びが続いているのか、体を左右に揺らしながら楽しそうに聞いてきた。


「マリーとは気が合うし、ポジションも後衛と前衛でちょうど良いし、何より一緒に居て楽しいからな!」


 俺は正直に自分が思っていたことを伝えた。

 すると、マリーはどこか照れるポイントが有ったのか、顔を赤くして顔をそらしながらお礼を言ってきた。


「へへ、ありがとう」


 照れてるマリーは可愛いな。

 でもそんなに照れられるとこっちまで顔が熱くなってきちゃうぜ。


「ちなみにマリーはなんで俺とチームを組みたいって思ってくれたんだ?」


 俺も気になったので聞いてみた。


「私もほとんど同じね、はじめとは気が合うし、ポジションもちょうど良いし。あと、ひったくりからカバン取り戻してくれた時、凄いカッコ良かったし」


 ・・・あのシーンそんなにかっこよかったかな?


「まぁその後、窃盗犯からカバン盗り返してきたって聞いて、カッコよさ吹き飛んで笑っちゃったけど」


 ですよね!

 爆笑してたもん。


「でもあんなに笑ったのも久しぶりだったし。はじめといると退屈しないし、面白い冒険ができるんじゃないかって思ったのよ」


 あと、ギルド長攻略のアドバイスくれたときは普通にかっこよかったわよと小声で付け加えるマリー。

 そんな風に思ってくれていたとは。素直に嬉しい。


「あのー、お二人の世界を作っていらっしゃる所悪いですけど、準備できたので来ていただけますか?」


 声のしたほうを見ると、リリーさんが腰に手を当てて立っていた。

 って聞かれてたのか!

 なんかまた顔が熱くなってきた。

 前を見ると、マリーも顔を赤くして下を向いていた。


「分かりました!今すぐ行きます!」


 俺は大きな声でごまかすことにして、受付の方に歩いていった。

 マリーも後ろを付いてきた。


 受付に行くと、受付台にはFと書かれた銀色のネームタグのようなものが2つ置いてあった。


「こちらがお二人の冒険者証になります。名前も刻印してあるので、新しい町に入る時とか依頼人と待ち合わせるときの身分証として使ってくださいね」


 なるほど、これが冒険者証か。

 サイズが小さくて便利だな。ステータスカードだと大きいから見せる時一々カバンから出さないといけないし。


「あと、ステータスカードを更新しちゃいますので、お二人とも貸していただけますか?」


 あ、それもあったな。

 俺とマリーはステータスカードをリリーさんに手渡した。

 すると、仮登録したときのように、魔法具を使って登録を行ってステータスカードを返却してくれた。


「これで、お二人は正式な冒険者となります!チーム登録とかを行うときは、また受付に来てくださいね」


 そう言うと、リリーさんは俺とマリーをチラチラと交互に見てきた。


 そうか、聞かれてたんだったな。


「それじゃ、俺とマリーの二人でチームを組むので、登録お願いしても良いですか?」


 俺がそう言うとリリーさんは


「そうなんですか!?分かりました、登録しますね」


 とわざとらしく驚いて、登録を行ってくれた。 

 リリーさん、演技下手だな。

 少しすると、登録を終えてステータスカードを返してくれた。


「はい、これでチーム登録も完了しました。Dランク以上のチームになると、チーム名が設定できたりするので、がんばってくださいね!」


「「ありがとうございます」」


 俺とマリーは二人でお礼を言って、ステータスカードを受け取った。(また声がかぶった)


 後ろに依頼を終えたであろう冒険者が来ていたので、早めにどくことにしよう。


「ではリリーさん、また明日」


「またねリリーさん」


「はい、また明日です!お待ちしてますよー!」


 リリーさんの声を後ろにして、俺達は冒険者ギルドを後にした。


 外に出ると、もう日がほとんど落ちており、居酒屋などの店から出る明かりが道を照らしていた。


「今日はこれからどうする?」


「そうだな、俺としては飲みながら試験合格のお祝いをしたいところだが。マリーはどうだ?」


「賛成!!今日はお祝いだし、お腹いっぱい食べて飲みましょ!」


 そう言って拳を握るマリー。

 良いね、俺もつられてテンション上がってきた。


「よし!じゃあ行こう!どの店で飲もうか?」


 といっても、この街で知ってる店って、ギルドの居酒屋かリリーさんに連れて行ってもらったとこだけだが。


「今日はいっぱい飲みたい気分だし、飲んだ後部屋にすぐ帰れるように宿の居酒屋で飲まない?」


 ナイスアイデアだ!


「良いね!あそこなら料理もうまいし、そうしよう!」


 そうと決めれば、宿へGOだ!

 俺達は浮かれきった足取りで、宿に向けて歩き出した。


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