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駿足の冒険者  作者: はるあき
3章 周回速度の冒険者
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099 予兆


 それは、ドートル喫茶でコーヒーを淹れていた時だった。


「はじめ様。リリーさんがお呼びしているのですが、いかが致しましょう?」


 メニスが厨房へとやってきて、そう言付けてきた。

 こんな時間にリリーさんからの呼び出しとは珍しいな。今は既に夕方の4時。もうじき店も閉まる時間だ。


「オッケー。これ淹れ終わったら行くから、カウンターで少し待ってもらってくれ」


「かしこまりました」


 気になるが、とりあえずこの一杯を淹れてから会いに行くことにした。

 コーヒードリップは途中で止められないからな。


 しかし、何の用事だろう?ひょっとして、Cランク昇格試験のお誘いとかか?それとも・・いや、深く考えるのはよしておこう。

 俺は色んな可能性を考えながらも、手先は乱さず丁寧にお湯を落としていった。


「よしっ!」


 完璧に淹れ終わった。

 あとはミルクと砂糖を淹れて・・できた。

 カフェオレの完成だ。


「フェル!三番テーブルよろしく!」


「了解でしゅ!」


 俺がいつものように配膳台にカフェオレを乗せると、フェルが元気よく運んでくれた。

 さて、俺はリリーさんのところへ行くか。


 革でできたエプロンを外して、カウンターの方へと向かった。

 するとそこには、サクサクとタッキーを頬張っているリリーさんがいた。両手でタッキーもってるから、リスみたいで可愛らしい。なんか緊張感が薄れた気はするが。


「こんばんは、リリーさん。今日はどうしたんです?」


 俺は近くにいたメニスに紅茶を2杯頼んだ後、リリーさんにそう話しかけた。


「あ、はじめさん!こんばんは!」


 リリーさんはそう言ってから口の中に残っていたタッキーをゴクリと飲み込んで、


「いきなり訪問しちゃってすいません。実はさっき、通信魔導具に王都の冒険者ギルドから連絡があって、はじめさんに繋いでくれ言ってきたんですよ」


「王都の冒険者ギルドから?」


 なんでだ?

 そもそも、俺達は王都では冒険者ギルドに行ってないし、心当たりが全然ないんだが。


「はい。用件を聞こうとしたんですが、話の途中で通信が切れちゃったんですよ。なので、はじめさんに何か心当たりとか無いかなと思いまして」


「なるほど・・・うーん、心当たりは全然ないですね。そもそも王都のギルドに知り合い居ないですし」


 王都全体で言っても、ほとんど知り合いいないからな。

 ラッセルとシュタイン、あとは王や王子くらいのもんだ。


「そうなんですか?困りましたね・・向こうは焦っている様子だったので、急ぎの用だと思うのですが」


「焦っていた?」


 何か嫌な感じがするな。

 ひょっとして、王都で何かあったんだろうか?それも、通信が出来なくなるくらいの何かが。

 ・・まずいな、胸騒ぎがしてきた。

 次の試練が始まったのか?


「ありがとう、リリーさん。とりあえず、マリーとチャーリーにも心当たりがないか聞いてみるよ」


 恐らく無いとは思うが、一応な。


「分かりました。また、王都のギルドから連絡があったらお知らせしますね。今は王都以外のギルドにも通信できないようなので、無いとは思いますけど」


「王都以外のギルドにもですか?」


 そんなに大規模な通信障害が発生しているとは。

 太陽嵐でも吹き荒れているのか?いやでも、こちらの通信は魔法を使ったものだからな。電気的な障害が関係するとは思えない。

 ほんと何なんだ?


「ええ、そうなんですよ。私もはじめてのことなので驚いちゃって」


 どうやら、この世界でも通信障害は稀なことのようだ。


「何か新しい情報が出たらお知らせしますね!それじゃ、私仕事抜け出してきているので、これで失礼します」


「ああ、引き止めちゃってすいません。じゃあまた」


 お仕事中だったのか。悪いことしたな。

 俺はリリーさんに手を振って別れを告げた。


 さて、まずはチャーリーとマリーに話してみるか。


「王都のギルドからの呼び出しか。怪しいやないか」


 と、突然後ろからそんな声が聞こえてきた。


「聞いてたのか?」


 振り向くと、そこには指を唇に当てて思案しているチャーリーが居た。

 どうやら、チャーリーは配膳などをこなしながら、しっかりと俺たちの話を聞いていたらしい。


「断片的にやけどな。それより、このタイミングでの王都からの呼び出しに大規模な通信障害。試練が関係してるとしか思えへんな」


 やはりそうか。

 チャーリーも俺と同じことを考えていたようだ。


「そうだよな。となれば、速攻で行くしかねぇな」


 何が起きているのかは全く分からないが、ここで行かないという選択肢はない。


「せやな、今日中に出発したほうがええやろな。一瞬の遅れが致命傷になるかもしれへんし」


 よし、そうと決まれば行動開始だ。

 となると、


「マリーに伝えてくるぜ!」


 俺はマリーに現在の状況と出発することを伝えるため、厨房の中へと戻っていった。


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