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駿足の冒険者  作者: はるあき
0章 プロローグ
10/123

009初心者講習会(実技編2)

11/25 誤字改定

「ファイアージャベリン!」


 いよいよ戦闘が始まった!

 マリーの言葉とともに、何十本もの炎の矢が空中に現れ、ギルド長に向かって飛んでいった。


「ほう、下級魔法の詠唱破棄か!なかなかやりおる」


 ギルド長は感心したのか声を大にして褒めている。

 しかし、ギルド長が力を込めて木刀を一振りすると、その剣の周囲に防風が発生し、炎の矢がかき消されてしまった。

 なんて剣圧だ。


 「くっ、ファイア-ロード」


 簡単に対応されたのが悔しいのか、顔を歪めながら次の魔法を発動した。

 今度はマリーの杖から炎のビームのような物が出て、ギルド長に襲いかかる!


「おっと」


 ファイアロードの炎の速さは俺の目でギリギリ終えるくらいの速さだったのだが、ギルド長にとっては余裕だったのか、ひらりと交わしてしまった。


「どうした!一番強い魔法で挑んでみろ!」


 マリーがまだ奥の手を残していると思ったのか、ギルド長が挑発している。

 棒立ちで木刀をマリーの方に向けているのを見るに、魔法を正面から受ける気らしい。

 マリーの方を見ると、挑発に乗ることにしたのか杖に魔力を込めて、杖が赤色に大きく輝き出した。


「獄炎の矢を降らせ、赤き空を呼び込め ファイアーランチャー!」


 マリーの詠唱とともに、先程と同じように炎の矢が大量に空に出現した。

 ただ、炎の矢の大きさが先程の倍程度あり、数も増えている。さっきの魔法の上位互換かな?


「いけ!」


 マリーの掛け声に応えるように、炎の矢がギルド長のもとに殺到する。


「ストームソード」


 ギルド長が魔法(?)の掛け声とともに剣を横一閃に振ると、先程以上の暴風が発生し、3mほどの小さな竜巻のような物が出てきた。


「うそっ!?」


 マリーが驚いている間に、炎の矢は全て竜巻に巻き込まれてしまい、無力化されてしまった。


「ただ、魔法を発動するだけじゃなく、避けられんように工夫せんと、いつまでたっても当たらんぞ!」


 そう言って指導を始めるギルド長。

 いや、あれちょっと工夫を凝らしたくらいじゃ当たりそうにないだろ。俺みたいに奇襲をかけるしか無いんじゃないか?

 マリーには速さが足りないから難しそうだが。


 その後も何回か休憩をはさみながら、(休憩の合間にマリーはポーションのようなものを飲んでいた)戦っていたが、マリーの放つ魔法はことごとくギルド長に防がれていた。



「よしっ、大体実力はわかった。次で最後にするから今から五分ほど休憩だ」


 トータルで40分ぐらい立っただろうか。

 ギルド長が次で最後にすると言ってきた。

 まずいな、マリーの疲れは溜まる一方だしギルド長は全然疲れてない。これは一撃加えるのは難しいかもしれん。


 俺がそんなことを考えていると、マリーがポーションのようなものを飲みながらこちらに向かってきた。


「あのギルド長は化物ね!全然攻撃が通る気がしないわ」


「ああ、まさか木刀の風圧で魔法をかき消すとはな」


 Aランク冒険者にもなると、あのくらい普通になるんだろうか?

 だとすればなれる気がしないが。


「はじめから見てて、ギルド長の隙とかある?もしくは一撃当てるアイデアとか」


 ふむ、一撃当てるアイデアか。

 実を言うと、見学している最中に色々と考えていたので一応ある。


「ギルド長の隙は見当たらないが、アイデアならあるぞ」


「ほんと!?なら教えてくれない?私の思いつくアイデアはもう全部試しちゃったのよ」


 そういって、手を合わせて頼んでくるマリー。


「おーけー!通じるかどうかの保証はできかねるけど」


 元々そのつもりで考えていたので、俺はマリーに作戦を伝授することにした。

・・・


「おい、そろそろ再開するぞ!」


 俺がマリーに作戦を伝え終わったくらいのタイミングで、ちょうど休憩時間が終わった。


「はじめ、ありがとね。絶対に一撃当ててくるわ!」


 マリーはそう言って広場の中心の方に向かっていった。

 俺のアイデアを聞いたときは、本当にギルド長に通じるのか不安がっていたが、大丈夫!マリーならできる!とまくし立てることで、なんとかやる気を出すことが出来た。


「試験開始!」


 ギルド長の声とともに再び試験が始まった。


「獄炎の矢を降らせ、赤き空を呼び込め ファイアーランチャー」


 マリーはまずは自分の使える魔法の中で最強であるファイアーランチャーを繰り出した。


「ストームソード!」


 しかしその炎の矢は再び起こされた小さな竜巻によって無力化される。

 だが、炎を巻き込んだ小さな竜巻のせいで、ギルド長は今前が見えていない。


 その隙に、マリーがギルド長に向けてダッシュする。


 そしてマリーが竜巻の間近に来たときには、竜巻の勢いはかなり弱まっていた。


「”ファイアーロード”」


 マリーが小声で呪文を唱えると、竜巻を突っ切って炎のビームがギルド町に向かって伸びる!


「ぬおお!」


 ギルド長から見ると、いきなり竜巻から炎が出てきたようにみえるはずである。

 さすがに驚いたのか、慌てて剣を横に振るって炎をかき消す。


 しかしそのときには、既にマリーはギルド長まで後一歩のところに迫っていた!


「ファイアーロード」


 剣を振り抜いて無防備になっているところに、再びマリーの魔法が炸裂した。


「くっ!」


 しかし、流石はギルド長。

 大きく横っ飛びすることで、ファイアーロードの炎をギリギリで躱した。


「そんなっ」


 マリーのMPはもうゼロに近くなってしまった。

 あのファイアーロードが最後の追撃だったんだが、直撃してくれなかったか・・・


 だが、ギルド長をよく見ると着ていた服の端が少し焦げ付いていた。

 どうやら完全に避けることはできなかったようだ。


「ハッハッハ! 俺に魔法を当てるとはな!やりおるわ」


 そう言って、ギルド長は木刀を腰にさしてしまった。


「エリザベスの妹よ、お前も試験合格だ!」


 ギルド長がそういった瞬間、マリーは杖を持ってバンザイするように両手を上げて、嬉しそうにこちらを見た。


「やったわはじめ!!わたしも合格よ!」


 その時見たマリーの笑顔は、日差しに負けないほどキラキラと輝いていて、俺が今まで見てきた中で一番魅力的な顔をしていた。

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