9話
ロリっ子の正体はまだ隠します。
「ちゃん付けするほど幼くないのです」
手を上下に揺らして猛抗議のロリっ子。なんてかわいいんだ。淀みのない綺麗な瞳に、身体で表現するという大人げない動き。妙になまった喋り方。なでなでしたくなるなぁ。俺は彼女の頭にポンと手をのせる。
「よしよし。大人だからこれぐらいでは怒らないよな。チラッ」
「子供扱いするなです! ぐぬぬ」
一度は怒りに身を任せて反撃しようと、振りほどこうとしたが俺の策略に気づいてなすがままにされている。言われたことをそのまま理解してしまう当たり知能が低いようだ。つい気を取られてしまって本来の目的を忘れてしまっていた。恐るべし幼女。神様はなぜこんな愛らしい究極兵器を作り上げたのだ。趣味がマニアック過ぎます。
「いつまでやってるですか! 離れてください!」
「おおっと」
しびれを切らした幼女は激怒。手を振りほどかれ小さな両手で押された。ちょっとやりすぎたかな。自分でも反省している。
「いちゃついて入るところすまないが例の女のけんで私達はきたんだ」
「あの羽が生えてる女のことですか?」
「そうよ」
エキドナの存在が一瞬消えていた。話に割り込むようにして入ってきた。
「エルはどこいるんだ一体?」
「エルって名前ですか。少し待つです」
本棚に目を向けたセレスは、探り始める。この辺だったかなぁとか言う声が聞こえて数秒後、カチリとボタンを押したような音が聞こえた。
「お二方どうぞこちらに」
ボタンが押された棚は奥に引っ込んでその下には階段が続いている。秘密の階段である。手招きをする幼女に従い降りてく。この下にエルがいるのか。
▽ ▽ ▽
無数のたいまつが暗い道を明るく照らす。大理石でできた石階段にそかはかとなく整備されているのが伺える。セレスを先頭にエキドナに次いで俺の順で進んでいく。かなり道幅は狭めになっており2人並列でやっとだ。じゃりっと何かを踏んだ音がした。
俺は確認しようと、下を見る。
「がいこつの骨だ......」
思わず絶句する。
「逃げ出そうとしてそのまま餓死したマヌケです」
俺の反応に気づいたセレスが何の罪悪感もなくすらっと答える。
「マヌケって酷くないか」
「いいえ。侵入者なので死んだところで構わないです」
この幼女怖い。人の死を軽く見ている証拠だ。俺がもしエルを救い出しに来なければあいつも野垂れ死んでいたのかもしれないな。
「そなたは、食事を出すのを忘れる所がよくあるからね」
「申し訳ありません。以後きをつけます」
エキドナに叱られて肩を落とすセレス。管理人がこんな適当でいいのだろうか。可哀想に、アーメンアーメン。
俺はがいこつに同情を寄せた。
檻らしきものが目の前に現れた。幼女はポケットから鍵を取り出して開ける。どうやら牢獄の入り口のようだ。横へと道が大きく広がり、一つ一つ区分けされた鉄格子があった。おっさんに若い男性様々な人がこの留置場で、捕らえられている。一つ一つ確認する。エルはどこだろう。
「こちらの方で間違いありませんか?」
止まった先にいた彼女の姿を見て俺は驚愕した。羽根はボロボロに引き裂かれ、服ははみ出るところははみ出てもうてんやわんやな状態だったからだ。それに天使の輪っかが黒くくすみかかっている。
「エルに何があった?」
「私は知らないです。そもそも興味もありませんですから」
「知らないわけないだろ! 明らかに拷問されているじゃないか!」
ちっこい女の子に俺は怒りのたけをぶつける。こればっかしは許せない。幾ら俺が屑でも許していかんことぐらい分かる。見た目がロリだろうが容赦はしない。
エルどうした!?かわいそすぎる。