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7話

ヤケクソ

 彼女の手はとても冷たくて身震いするほどだ。俺は身体を震わせて手をほどこうともがく。もがく手を絡め取るようにはなさないでいるエキドナを凝視した。


「妾の魔法でお前はさぞかし寒いだろう?」

「わかった上でやってるとか確信犯だな」

「お前のようなひよっこに軽々しく手をふれさせるものか」

「さっきの頬に手を当てたときにも何かしたのか」

「冗談が通じぬとは。ユウキは本当に面白い」


 微笑を浮かべているエキドナをみてどこまでが冗談なのか俺には分からないし恐怖さえ感じられる。ただでさえ魔法が使える異世界。いくら用心してもしたりない。俺も魔法使って無双したいな。勇者が魔法で魔王をフルボッコにするのも楽しいかななんて。

 俺が浮かない表情をしていると、


「勇者という事実には変わらないし、ユウキを勇者として認めているのよ」


 念を押すように彼女は1つのワードを何回も繰り返すように言う。そして手と手は離れて俺は内心ほっと一息着いた。有り難いことではあるが俺にその自覚がないのが問題である。


「エキドナさんに認めていただけて光栄です」

「ユウキは誉めるとつけあがるタイプだな」


 そう言って彼女は目を細める。たわいもない会話が進み王宮の入り口付近まで歩いた。


▽ ▽ ▽


「ここが妾の家じゃ」


 彼女の指を指した方向へと視点を切り替える。うん豪邸だ。文句無し。金箔で整えられた壁面にシンプルな木のドア。屋根の上には国のシンボルであろう龍の偶像が存在感を際立ちながらいすわてっている。ガラスは網格子のように張り巡らせ、2階のバルコニーではお茶を嗜むのだろう白いテーブルと椅子がある。


「見とれている場合では無い」

「初めて経験したというかここまでの豪邸はテレビでしかみたことなかったから」

「テレビ? よくは分からないけど早く中に入りなさい」


 テレビはこの世界には無いと。あったら世界観丸つぶれだった。いわれるがままに王室へと案内される。これまた大広間だ。シャンデリアが上にぶら下がっており、一番奥には大きな椅子が2つ群をなしている。片方の席に座っていた若い男が立ち上がり、


「エキドナ。勇者を連れてきたんだな」

「ええクラウス。私も半信半疑だったけど、天使をつれていたのを見てあながちユウキの証言に偽りはないかと」


 俺は2人のやり取りをかたずを飲んで見守る。クラウスと呼ばれる男は190cmの高身長で紫色の髪をしている。長くもなく短くもなく自然な長さに切られている。そしてエキドナの色とは正反対の白のマントを羽織り全身を白に統一している。


「おりいって頼みたいことがあるんですが?」

「なんだいもうしてみよ」

「俺と一緒に来た天使を解放してくれないかなーなんて。あいつ悪い奴じゃないんですよ。この国に危害をくわえるような奴じゃ無いんで」


 ふむふむと頷いて相槌を打つ。


「無礼者! クラウスに向かってその口の聞き方はなんですか!」


 真っ正面からの平手打ちだ。彼女は俺の横暴な態度に怒りを表している。首が半回転して目が回りながら、そのまま倒れた。


「いててて」

「二度とあのような口を聞くんじゃない。いいか!」

「はっはぁ」


 そこまで怒るようなことだろうか。俺は彼女の怒りを受け流して拙い返事で対応する。するとそっぽを向いてだんまりを決め込んだ。


「勇者。名は何という?」

「ユウキです」


 頬が赤く染まり、ヒリヒリしてきた。余計なことははなさないほうがいいかもな。


「話を戻そう。お連れの天使のことだが君が魔王を倒すまでしばらく預かることにした」

「そんな理不尽なことを言わないで頂きたい」

「王様の命令は絶対なのよ。逆らうものには死の鉄槌を」


 分かった。エキドナはクラウスの妻であり理解者であることを。全身を白で包んだ男はこちらを見つめてきたので俺も見つめ返す。目と目が合う~な訳では無いです。俺は深く膝を着いた姿勢で、交渉へと望んでいる。あんな馬鹿な天使エルを救いたいだなんて何故思うのだろう。





見たい人だけ見て切実

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