困難を乗り越える鉄屑傭兵団(スクラッパー)の真の強さ
困難を乗り越える鉄屑傭兵団の真の強さ
『約束の戦士よ!、タオを開眼させよーーー!』
崩れた高い塔の上から貴婦人の声が通りに響く。
聖女クレィディアと青年ブルースは黄金のタリスマンの光に包まれていた。
貴婦人の隣にはウィザード.ユーリーの姿があった。
『あれは!』
『祭司ウィザードユーリーと伝説の預言者ソーサラスのシュヴァ.ルツ!』
小人族グル.リトルのラジェツターが塔の上に立つ二人を見て思わず口を開いた。
巨大な三足黒鳥はタリスマンの目映いばかりの煌めを見るや大きく鳴き声をあげた。
黒鳥の翼の上で唇を噛む血の爪団長、ザクセン.ハイマー。
何やら誰かとリモートビユーイングで連絡を取って話している。
『大柄少年ドワーフの潜在意識に誘導波動を流し込む作戦は成功ましたが……』
『ウィザードユーリーとシュヴァルツの二人が邪魔に入りました。』
『もはや黄金のタリスマンを持つ約束の戦士の復活を阻止するこはできません』
『一時、撤退します!』
そう言うとキッとウィザードユーリーとシュヴァルツを睨み付けた。
その後、三足黒鳥に乗ったザクセン.ハイマーは魔女ウィッチの館へ飛び去った。
騒ぎに荷馬車の藁の上で寝ていたレンチとスパナーが目を擦りながら起き出した。
『ふぁ~~~っ』
手を頭上に大きく伸ばし大きなアクビをひとつかくスパナー。
『騒がしいけど……何かあったのか?』
隣にいた小人族グルリトルのラジェツターに寝ぼけ眼まなこで訊ねる。
『いや、何でもないよ……』
不思議そうに辺りを見回したスパナーが荷馬車隊列の前列を指差した。
『あれは!?』
聖女クレィディアと黄金のタリスマンを手にした青年ブルース。
そして、その傍らには祭司ウィザードユーリーと貴婦人の預言者シュヴァルツの姿があった。
『何でもないわけないよ!』
『なぜ、祭司と預言者、そして黄金のタリスマン戦士がいるんだ?』
ラジェツターはスパナーに一部始終を話して聞かせた。
貴婦人シュヴァルツから聖女クレィディアへソーサラスの杖が渡された。
『これからは、貴女がソーサラスとしての努めを果す時代が来ました。』
『ここにいる青年ブルースは、やがて貴方の夫なる約束の戦士にして救世主です。』
『にわかには、信じられないと思いますが真実なのです。』
『このウィザードユーリーと私、シュヴァルツは、この現実理想郷イデアポリスを、あなたがたに託します。』
『幻想理想郷ファンタジアでの争乱を静めるため戻らなくてはなりません。』
『このソーサラスの杖と貴女がいれば女神フレィヤーを大聖堂に再生できるでしょう。』
そう言い残すと預言者シュヴァルツは祭司ウィザードユーリーの馬車へと向かった。
預言者シュヴァルツに走り寄る小人族グルリトルのラジェツター。
『預言者シュヴァルツ様!』
『聖典の最後に書かれているタオの開眼とは、この事だったのですか?!』
シュヴァルツはラジェツターの質問に答えて両手を広げて話した。
『まだ、あなた方が全ての真実を知るには時が必要です。』
『しかし、これだけは話しておきましょう……
しばらくの静寂が流れた………………
『これから私が預言する出来事を心、静かに、受け止めるのです。』
『動揺したり、狼狽うろたえたりしてはなりません。』
『世の始めから定まった運命なのです。』
『あなた方の中から仲間を裏切り救いの道を閉ざす物が現れます……』
固い団結と友情で結ばれた鉄屑傭兵団スクラッパーに衝撃が走った。
聖戦士スパナーが預言者シュヴァルツに食ってかかった。
『そんなことありえねーーー!!!』
『俺たちは、ずっと一緒に助け合い戦って来た無二の仲間だ!!』
興奮するスパナーを押さえる妖精エルフのレンチ。
『止めるんだ……スパナー』
小人族グルリトルのラジェツターが呟く。
『預言者シュヴァルツの言葉に間違いはないよ。』
預言者シュヴァルツの手を取り馬車へ乗り込ませる祭司ウィザードユーリー
彼は馬に軽く鞭を入れて馬車を進ませ振り向き様にスパナーにポッリと呟いた。
『スパナー君……君の母君が、どれほど君の事を気にかけ心配しているか……理解できる時が必ず来るよ。』
金髪で長身の少年スパナーはウィザードユーリーの言葉を理解できずにいた。
遠ざかるウィザードユーリーの馬車を見ていた聖女クレィディアがスパナーに語りかけた。
『貴婦人シュヴァルツも、君も同じ金髪の輝きをしているわ……もしかしたら』
息消沈気味の鉄屑傭兵団スクラッパーに渇を入れるようにレンチが叫んだ。
『何!、沈んだ顔してるんだ!』
『さぁ!行くよーー!!』
『魔女ウィッチの館の輩を追い出してクレィディアの両親を救い出すんだ!』
鉄屑傭兵団スクラッパーと荷馬車は隊列を整列させ歩を進めた。
黄金のタリスマンと呼ばれるブルースは聖女クレィディアを守るように寄り添っていた。
その様子を見て、どこか不満そうな仕草をする大柄少年ドワーフのハンマー。
『お前、クレィディアさんのこと好きなのか?』
レンチの投げ掛けにプイッと顔をそらすハンマー。
『青春してるなぁー』
ラジェツターとスパナーの笑い声に振り向く荷馬車の上に座る聖女クレィディアと青年ブルース。
二人の顔はいくらか赤らんで見えた。
鉄屑傭兵団スクラッパーは、先ほどまでの暗さは、どこかへかき消され和らいだ雰囲気へと変化していた。
小人族グルリトルのラジェツターがポッリと呟いた。
『鉄屑傭兵団スクラッパーの真の強さはここにあるのかも知れない……』
『定まった運命があるとしても、くじけない!』
『ボクたちの友情は、きっと、どんな困難も乗り越えられる!!』




