少年スマイルと美しき乙女ソフィーナ。
少年スマイルと美しき乙女ソフィーナ。
現実理想郷イデアポリスの街外れに建つ慈善団体ホスピタル病院の廊下に約束通りの時刻に着いたスマイル少年。
スマイル少年の姿に気が付いた看護師のソフィーナの優しい声が長い廊下に響く。
『次の方、お入りください)))))』
車椅子を転がして診察室へと向かうスマイル。
ソフィーナが引きドアを開けてスマイルの車椅子を待つ。
ペコリと頭を下げて診察室へと入るスマイルがソフィーナに声を掛けた。
『ソフィーナさん、今日はツインテールじゃないんだね♪』
『でも、すごく似合ってるよ♪』
『まるで女神様みたいだ♪』
朝陽に輝く麦穂のような煌めく長い髪を一つに束ねて大きなバレッタで止めている彼女に見とれるスマイル少年。
『今日は再生ルネサンス大聖堂でミサに参加していたせいよ。』
笑顔がこぼれる美しい乙女ソフィーナにスマイルの心は、ときめいていた。
『俺、大人になったらソフィーナさんをお嫁さんにする!』
中腰でスマイル少年の瞳を真っ直ぐに見てソフィーナが答えた。
『約束よ!』
『はい、指切り!』
ソフィーナとスマイルは小指を絡ませて指切った。
『俺、ソフィーナさんとの約束を守るためにもずっと、ずっーと長生きするよ!』
ソフィーナは深く頷うなづいてスマイル少年の車椅子を押して院長の待つカーテンの方へと移動した。
スマイル少年に気付いたマスター院長が笑顔でスマイル少年に声を掛けた。
『どうかな…体の調子は、何も変わり無いかな?』
スマイル少年はマスター院長に単刀直入に自分の容態についてズバッと訊ねた。
『先生……僕の命が後一年しか持たないていう話しは本当ですか!』
気品のある紳士でもあるマスター院長は優しく少年スマイルの質問に答えた。
『スマイル君、本当だよ……』
『しかし、望みが全くないわけでもない。』
車椅子からグッと身を乗り出すスマイル少年。
『先生、教えてください!!』
『その望みが叶う方法を!』
マスター院長は机の引き出しから古い格式のある銀造りの小箱を出した。
小箱を開けてスマイル少年に見せるマスター院長。
『この箱の中身が見えるかな?』
箱の中には柔らかな緩衝の布絹があるだけで、幾度なくスマイル少年は箱の中を覗き込んだ。
その後、スマイルはマスター院長へ視線を移し話した。
『先生……俺には何も見えないよ。』
マスター院長はパタンと小箱を閉めてスマイルに答えた。
『スマイル君……君が、この小箱の中身テロメラーゼを見えるようなる目を探して私の元へ来なさい。』
『それは、君にしか出来ない使命なんだよ……』
『君の体が不自由なのも、命がわずかな期間に縛られているのも全ては、そこに原因があるんだ……』
スマイル少年はマスター院長の話しに頷いて更に踏み込んだ。
『先生……その目は何処どこに行けば探せるのですか?』
その時、庭でスマイル少年の帰りを待つ二頭のウルフハウンドが珍しく遠吠えした。
ウワォォォォォオオオオオーーン))))))
診察室の窓からウルフハウンドに視線を移すマスター院長。
『それは至宝へ導く神獣、二頭のウルフハウンドを操る君にしか探せないのだよ。』
スマイル少年は頷うなづいてマスター院長に礼を述べか看護師のソフィーナに視線を移した。
スマイル少年の車椅子を押して廊下へと出る看護師のソフィーナが優しく彼に声を掛けた。
『何か困ったことがあったら、何でもいいから私に相談してね。』
『未来の私の旦那様♪』
ソフィーナの気遣いに涙を目に浮かべるスマイル少年がポケットから赤い宝石の指輪を取り出した。
『これ、戦争で亡くなった俺の母親の形見なんだ……』
『ソフィーナさんに持っていてほしい♪』
赤い宝石 リングをソフィーナに手渡すスマイル少年。
『わかったわ、大切にします。』
『婚約指輪ね♪』
スマイル少年をホスピタル病院の玄関先まで見送ったソフィーナ。
『よかったら、今度一緒に再生ルネサンス大聖堂のミサに参加してみないかしら……』
『あなたの探し物が見付かるかもしれないわよ……』