交錯し重ね合わさる仲間の運命。
交錯し重ね合わさる仲間の運命。
『いつも悪いわね…急がせちゃつて。』
『この街で車輪の修理をしてくれるところはラジエッター君の、お店一件になってしまったわ。
ツインテールにピンクのガーリッシユな装いをしたスタイリッシュな乙女が店先に立つ。
道行く人々が彼女に視線を送り何やら話しては立ち止まっている。
眼鏡少年ラジエッターは手際よく車輪を外し新しい物と取り替えながら彼女に話しかけた。
『血の爪団が跳梁跋扈ちょうりょうばっこするようになってからというもの大方の商店は閉めてしまっているからね。』
『はい、出来上がり!』
ツインテールの彼女はラジエッター少年に対価の1000イデオンを手渡した。
『流石、いっもながら仕事が速いわね。』
『君は、わたしが、血の爪団だと知っていても怖がらないのね。』
ラジエッター少年は、微かに笑って答えた。
『おねーさんを一目見たときから悪い人ではないと分かったよ。』
ツインテールの乙女は馬車に乗り込むとラジエッター少年に視線を送り、その言葉の意味を訊ねた。
『あら……どうしてそう思うの?』
ラジエッター少年はツインテールの乙女の左手にある青い宝石の指輪に注目していた。
『おねーさんが左手に嵌めている指輪は美の女神アフロディーテの宝石だよね。』
ツインテールの乙女は馬車の上から手を上げてラジエッター少年に別れを告げた。
『また、馬車が故障したら寄らせてもらうわ。』
走り去る乙女の馬車を見送るラジエッター少年の肩をポンと叩く男。
『よぉ!』
『修理屋!』
後ろを振り向くとそこには初老の行商人風な男が立っていた。
『ボッタさん!!』
行商人ボッタはラジエッター少年の店の常連客だった。
『今、出ていった娘はワシの長女なんだ。』
『難しい年頃で中々、親の言うことを聞いてくれん。』
『血の爪団になぜ入ったのか……訳を聞きたいのだが……』
ラジエッター少年は行商人ボッタを見て答えた。
『ボッタさん……娘さんが血の爪団に入ったのは、きっと深い訳があると思いますよ。』
『新しい荷車が必要なら直ぐに拵こしらえますが……』
行商人ボッタはポケットから5000イデオンを差し出してラジエッター少年に手渡した。
『峠の手前で荷車の車輪が壊れてしまって困っておったところだ。』
『次女のレンチが峠の向こうでワシの帰りを心配して待っておる。』
『そうしてもらえたら、助かるよ。』
そこへ、ラジエッター少年の親友、ウルフハウンドを伴う車椅子の少年スマイルが通り掛かった。
『ボッタさん!』
『峠の向こうで、盗賊騒ぎがあったそうだけど、大丈夫だったのか!?』
顔面が青ざめる行商人ボッタが急いで馬を走らせようとした。
『ボッタさん!』
『レンチお嬢さんなら、祭司の馬車で街の噴水広場まで行くところを見ましたよ。』
スマイル少年の言葉に馬の手綱を引く行商人ボッタ。
『スマイル君、情報をありがとう!』
行商人ボッタはスマイル少年の言葉に娘レンチが無事であることにホッと安堵の胸を撫で下した。
スマイル少年は闇市の鉄屑傭兵団のアジトに向かえば娘のレンチに会えると行商人ボッタ告げた。
眼鏡少年ラジエッターは時計を見て、慌ただしく裏庭にある、気球を膨らませガスバーナーを点火させた。
『そろそろ僕も港へ行かなくては、もう直ぐ食糧や必需品を積んだ黒船が入る頃ですので。』
行商人ボッタは闇市へ
スマイル少年は街の名氏マスターが院長を務める慈善団体ホスピタル病院へ
そして眼鏡少年ラジエッターは黒船が入る港へと
それぞれに目的地へ向かい移動した。