魔笛アマデウス響きぬ幻想理想郷ファンタジァは勇者への道。
魔笛響きぬ幻想理想郷は勇者への道。
半透明スケルトンの虹橋を滑るように進む気球。
その光景を見上げて銀の杖を地面に強く叩きつける権天使アルカイ。
ガシャーーーーーン)))))
『くっ!!』
『幻現橋の魔女ウィツチを取り逃がしたかーーー!!』
気球は満月を背景にして煌めく光の中へと姿を消した。
幻想と現実の虹橋を渡り終えた気球は幻想理想郷ファンタジァへと異次元移動した。
幻想理想郷ファンタジァの門番、大天使アルカンゲロイの魔笛アマデウスが鳴り響く。
ヴォーーーーーーーーーーッ)))))))))))
気球は、たちまち天の浮舟(ヘブンズ
.シップ)へと姿を変えた。
船体は全てが金、両側に幾つもの櫂が伸びて、さながら古代のガレー船を思わせる船容である。
天魔使徒たちがヘブンズ.シップを取り囲む。
大天使アルカンゲロイが魔女クレィデイアに叫ぶ。
『約束の魔女ウィツチクレィデイアよ!』
『現実世界ゴクマゴクよりの希少鐘スクラップ.ジングル響かせよ!』
『汝の力を示せ!!』
魔女クレィデイアはスパナーとハンマー、そしてレンチに腰に帯びた鉄屑工具を夜空へ掲げるよう促した。
にわかに、空の雲が去り希少鐘の音が幻想理想郷ファンタジァに鳴り響く。
(((((カーーーン)))))
(((((カーーーン)))))
(((((カーーーン)))))
『希少鐘スクラップジングルだぁ!!』
どよめく天魔使徒たち。
『約束の魔女ウィツチが幻想理想郷ファンタジァに到来した!!』
天の浮舟ヘブンズ.シップを囲む天魔使徒たちが両側に分かれ一本の道が開かれた。
その道は高見へと続く昇華の旋律ヴォルフガング.ファーモニー。
『試練の時ぞ!!』
『道開き者たち、勇者よ!!』女神フレィヤの昇天画図の回廊へ。①
黄金に輝く天の浮舟が高見を目指し昇って行く。
螺旋を描く半透明スケルトンの天海ルベリシオン道を滑るように進む。
やがて広く見通しのよい高天ヶ原へと出た浮舟。
浮舟は、まるで風を失った帆船のようにピタリと止まった。
さらに浮舟を囲むように大きな天画図が現れ出る。
耳の立った白く大きな犬を連れた気品のある紳士が浮舟に近付いて来る。
見たところ中世の西洋貴族風の装いをしている。
『私のアントワープ大画廊へようこそ。』
『この犬パトラキは死者を導く聖獣。』
『汝らが願う死者を黄泉の国より連れ戻す。』
『しかし、それは全ての試練を成し終えた勇者にのみ与えられるもの。』
『試練の門出を祝い私からの贐はなむけだと思ってほしい。』
眼鏡少年ラジエツターが聖典シュヴァル.ガイヤを開いた。
パラパラと光のページを捲めくり彼をを見た。
『能天使エクスシアイ………』
『彼は現実理想郷イデアポリスに巣くう悪魔に抗あがなう力を勇者に与える者』
『また失われた死者を甦よみがらせ導く者でもある。』
鉄屑傭兵団スクラッパー長のレンチが中央の、ひときわ大きな一枚の画図に目を止めた。
そこには女神フレィヤが天魔使徒たちに支えられ天へ昇る様子が描かれていた。
傍らには女神フレィヤに冠を捧げる最高座の天魔使セラフィムの姿があった。
『 あれは……現実理想郷イデアポリスの闇市ボッタでルチアにキャンディーをくれた黒馬の貴公子……同じ顔をしている。』
さらにスパナーが他の画図を指差して叫んだ。
『クレィデイアの両親が天妖騎士団に囲まれた画図だぁ!!』
画図の一枚から失楽園の大蛇が抜け出て来た。
『この大蛇は汝らの行く道を塞ぐ恐怖の化身ウロボノス。』
『勇者としての力を示せ!!』
『闇を打ち払う希少鐘スクラッパーの救済者たちよ!!』
女神フレィヤの昇天画図の回廊へ。②
『復讐の炎は地獄 のように我が心 に燃える!!』
『この言葉を残し現実理想郷ゴクマゴクへと落ちた力と美しさを兼ね備えた堕天使』
幻想理想郷ファンタジァの主、女神フレィヤより放逐パージされた者』
『その者こそ最高座の識天使セラフィム。』
『このウロボノスの大蛇は彼の者の復讐の幻影が具現化されたもの』
能天使エクスシアイの傍らで浮舟に乗る鉄屑傭兵団の四人。
大きくうねりながら浮舟の周りを行き過ぎる大蛇ウロボノス。
創造の初子、能天使エクスシアイは空高く舞い上がり傍観者としての立場をとった。
襲い来る大蛇ウロボノスが口から業火の炎を吐き出した。
眼鏡少年ラジエツターの機敏な回避操作により浮舟は炎を寸前で避けた。
『奴にとって、俺たちは幻想理想郷ファンタジァの異物でしかない!』
幻想理想郷ファンタジァの魔女クレィデイアの力がみなぎる。
光を呑み込む彼女の魔力に大天使アルカンゲロイの魔笛が鳴り響く。
『今こそ響き渡らせん!』
ヴォーーーーーーーーーーッ))))))))
『ウロボノス大蛇の頭を打ち砕く希少鐘の救済者出でよーーー!!』
三人の鉄屑傭兵、スパナー、ハンマー、レンチが大蛇ウロボノスを囲む。
魔女クレィデイアのオーラを受けて勇者アレスへ転身したスパナー。
黄金戦闘工具スパナーブレードが強かに大蛇ウロボノスの頭にヒットした。
ドカアァァァァァーーーン》》》》
吹き飛ばされる大蛇ウロボノスにカウンターを食らわせるハンマーの大白銀槌。
ドドドドドーーーーーーン))))))
『仕上げわ私だぁ!!』
よろめく大蛇ウロボノスの首もとにとりつくレンチが、これほどかと言うほど締め込んでゆく。
グシャーーーーーーッ)))))))
具現化された大蛇ウロボノスは三人の勇者の前に消え去った。
これを見ていた能天使エクスシアイが高見から叫ぶ。
『鉄屑傭兵団スクラッパー、見事なり!!』
『この門をくぐり、先へ進むがよい!!』
フレィヤ昇天画図の回廊へ。③
((((((グオォォォォォオオオーーーーッ)))))
ウロボノスの大蛇が苦悶の声をあげて漆黒の闇へと消えて行く。
フィニッシュを決めた黒髪少女レンチの戦工具が閃光を放っている。
ウロボノスの大蛇か消えた辺りから炎を帯びた盾が現れた。
高見から能天使エクスシアイがレンチに語りかける。
『お前の戦工具は今、仲間を守り復活させる立てられた盾ゲヘナ.リターン.イージスとなった。』
『新たな勇者、アテナとヘパイトスよ!!』
『フレィヤ神殿の鉄壁守盾として再生ルネサンスの道を開き進むがよい。』
天の大回廊を覆うように巨大な丸天井クーポラが現れた。
そこには大きな凱旋門が描かれた一枚の絵画。
吸い込まれるように天の浮舟が徐々に引きづかれて行く。
能天使エクスシアイの言葉に我が身を振り返る黒髪少女レンチ。
転身者、アレスとアテナを得た鉄屑傭兵団スクラッパーは空の浮舟で凱旋門へと向かって行く。
傍らの大柄少年ハンマーも鍛冶勇者ヘパイトスへと転身していた。
手には様々な武器、防具を鋳造するブラック.スミスが握られている。
魔女クレィデイアと四人の勇者たちは凱旋門を目指した。