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凍死姫

初めての投稿でお見苦しい文章だと思いますが、頑張りたいと思います。アドバイス、誤字のコメントなどありましたら幸いです。


投稿は今たまっているのがなくなり次第、緩やかに投稿したいと思います。



ゲームやろうぜ!みんな!

 爆音が鳴り響く。


 怒声と罵声、その音源。


 土埃の舞う中に彼女は立っていた。



 土埃が風に吹かれ、徐々に月明かりに照らされた髪は白銀の光彩を放ち、艶やかに腰深くまで流れ落ちている。

 白く透き通った肌からは、異様に長く細い耳。祝典の花嫁と比喩してしまう程に全てが白に彩られていた。

 しかし、その白には赤が点々と染まっている。血だ。その血の出どころは彼女ではなく、床に倒れている男。そして男と共に大地へと深々と突き刺さった鋼の塊。それは剣と表すには余りにも大きく、そして重い。彼女の百六十八センチ程ある身長とそれに見合った平均体重を合わせても軽々と超えた鋼の大剣の刃には至る所に刃こぼれが見えた。


 廃墟の周りには崩れ去った建物がいくつも見え、乾ききった砂が果てまで地表を覆っている。白い砂は棘のような冷気を帯びた気流とともに砂塵として辺りを飄々と踊り、煌びやかな星光を放つ黒々とした夜空の下、何人もの男達の声が聞こえた。


「遂に追い詰めたぞ、凍死姫。ここがお前の墓場だ」


 足下の瓦礫を蹴り、廃墟と化した建物の中から徐々に姿を現した男は確信しているのだろう、強気に言い放つ。そして彼女の周りを斧、薙刀、短剣などを握りしめた屈強そうな男達がゆっくりと囲んでゆく。


「そうか? あたしはまだ全然余裕だけど」


 星空が照らす光の下、空を眺めながら差も当然のように彼女は呟いた。そして男達に人差し指で煽ると言葉を続ける。


「束にならないと女一人襲えない軟弱者共に、怯えるとでも?」

「ふん、お前を倒し名声と金をもらうとしよう」


 男達の中の一人がそう告げると、斧を構え、獰猛に攻め寄せる。その動きに合わせ、足下に転がっていた男に深々と突き刺さった大剣を抜き取る。大剣が男から抜き取られた瞬間、血が迸り彼女の純白であった衣服にまた赤が増えていく、そんな事も意に介さずに彼女は走り出す。


 互いに攻め寄せて行くなか彼女は考察する。大方、一人に足止めされている間に、四方から数で押しつぶす腹積もりだろうがそうはいかない。口元の角度がゆっくりと吊り上がると邪悪な笑みを曝け出す。


 男の握りしめた斧が彼女の頭部を潰すよりも先に、両手に握りしめた身の丈以上の大剣を突風の如く横に振り抜く。風とともに右薙ぎに切り裂かれた男は唖然とした表情で真っ二つになり視界から消えていき、彼女は振り抜いた大剣を両腕の腕力で無理やりに軌道を補正して上から下へと力任せに地表に向けて叩きつけた。突風と砂塵が舞う中で一人、また一人と斬り伏せていく。



 身の丈以上の大剣を背中にある鞘に収める頃には、彼女以外誰も居なかった。


「はぁ……もっと強い奴は居ないのかな」


 彼女は体内にある多量の不満と少量の二酸化炭素を吐き出した。そしてある事に気がつく。視界の右上にある半透明の時計が時刻を深夜の三時と告げていたのだ。


「明日も学校か、行きたくないな」


 そう、彼女こと碓氷麻里の職業と人種はエルフの大剣使いではなく日本人の女子高生。

 そして先程までプレイをしていたのが十八禁に指定されているオンラインゲーム、『ナイト・オブ・バーバリアン・オンライン』である。略称でNBO。


 ファンタジー好きならば誰もがプレイした事があるのではないかと言う程に人気のオンラインゲームだが、リアルを求めた過剰なゴア表現とタイトルの由来でもあるプレイヤーが騎士になってプレイヤーに雇われてプレイをするか、野蛮人になって窃盗や殺戮をするのも何でもありと公式が豪語するだけあって、とても自由度のあるシステムとなっている。


 種族はヒューム、エルフ、ドワーフ、リザードマン、ジャイアントと五種族を選択でき、職業も近接、遠距離、魔法合わせて多種多様だ。そのやり込み要素と自由度の高さが世界的に大ブレークし、人気は現在も右斜め上を向き続けている。


 しかし問題が一つ、ゴア表現による年齢規制である。人気がある余り、小学生、中学生、高校生と年齢の規制をすり抜ける為にありとあらゆる抜け道を見つけては、年齢を偽り、ゲームをプレイするのだ。碓氷麻里もその一人である。IDは本人が所得した物ではなく、売買によって手に入れたものを使用している。


 そして科学の発展は日々進化を遂げていて、近年のゲームは体感型で五感を仮想空間に認識する専用のゴーグルと横になるスペースさえ確保できれば、すぐにでもファンタジーライフが過ごせるまでになった。『冒険はベットの上で』がキャッチフレーズだけあって最近はベットの売り上げも吊られて右斜め上である。しかし、麻里にとっては『冒険はベットの上で』とはいかず『睡眠はベットの上で』と本来の使用理由に則り、睡眠を速やかに取る必要があった。


 九時から学校で通学時間も考えると明日も目の下にクマは確実だろう。麻里は嫌々先程までプレイしていたオンラインゲームをログアウトすると布団に潜り込み、眠りについた。


 日が昇り、光がカーテンの隙間から差し込んでくる。朝が来てしまった。太陽の野郎がまた遥か頭上に昇ってしまったのだと麻里は眠たげな瞼を数回掻くと小鼻を膨らませる。鉛のように重い身体を動かすと、ゆっくりベットから這い上がった。


 季節は夏、猛暑による睡眠不足は一層に悪化していて、麻里はまったくと睡眠を取った気がしていなかった。


「麻里、早く学校行きなさいー」


 自室の外から母親の声が聞こえると、麻里は適当な返事をして鏡の前で制服に着替え、あまり手入れをしていない長々と伸び過ぎた黒髪を掻き分けて縁取る。

 日にあまり照らされていない不健康な色白の肌、形の良い眉毛に涼しげな瞳、筋が通った高い鼻の下には薄い唇がほのかに朱色に染まっている。しかし、整った顔立ちを台無しにする程に目の下のくっきりとしたクマが、自らの不健康さを物語っている。麻里は自分の顔を手鏡で確認すると呟いた。


「うん、ばっちりクマになってる」



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