表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

勇者は旅に出て魔王は荷物を持つ

前回のあらすじ。

《勇者発見》

__俺、初代魔王の復讐計画とはこうだ。


1、まず魔王として復活したことを世界に知らせる。


2、そうしたら必ず勇者一行が俺を倒しに旅を始める。


3、この勇者一行にどうにかして参加する。


4、魔王城に着いたところで俺が魔王だということを教え絶望させ殺す。


 勇者とは異常に仲間意識が高い、つまり今まで共に旅し苦楽を共にした仲間が魔王だったと言われたら心が折れ倒すのも容易いということだ。


 完璧だ。



・・・・・・・・・



「紅茶とコーヒーどっちがいい?」

「コーヒー…」

「了解ー」


 エロエは台所に立ちコーヒーを作り始める。


 俺は今エロエ、勇者の家に居る。

 先ほどで店の前でエロエに自分が勇者であると教えられた俺は驚きを表に出さないように詳しく聞かせて欲しいと頼んだところ


『うん、いいよー』


 なんとも軽い勇者だ。

 その際、サクラギではなくエロエと呼んでくれと言われ俺はサクラギ呼びからエロエ呼びに変えた。


「はいコーヒー砂糖とミルクは?」

「いや、いい」


 俺は甘いものが苦手だ。

 いや、苦手というと少し語弊があるな、正確に言うと大好きすぎるんだ。

 ケーキ、クッキー、アルホォート。

 食べるだけでなんというかこう時間が飛んでしまう。

 流石に勇者の前で魔王がそんな状態になるわけにはいかないからな。

 甘いものは極力控える。


「ブラック?ヒュー、おっとなー」

「からかわないでくれエロエ」

「ははっ、ごめんごめん」


 エロエは俺の前にコーヒを置いて俺の前の席に座る。

 まず何から聞くべきか、そもそも今の世界、平和な世界に勇者とは需要があるのか?

 勇者とは名ばかりの人間じゃないのか?


「そういえばさ、なんでサタナは私の、勇者の事を知りたいの?」


 少し沈黙が続いたせいかエロエの方から質問してきた。

 なぜ勇者の事を知りたいのか、か。

 確かにこの平和な世界で勇者の事を知りたいなんて奴珍しいだろしな気になるか。


「いや、特に理由はない。少し気になっただけだ」

「へぇ、でも私さ勇者らしいことなんてしたことないからあんまり答えられないかもよ?」


 勇者らしいことか、確かにエロエは見た感じ鍛えてもいないし特別な魔力とかも感じないパッと見勇者だとは

思わないな。


「あぁ、それでもいいさ」

「ふぅん、サタナって変わり者だね」


 まぁ、魔王だからな変わり者じゃないわけがない。

 それにエロエにはこれから勇者としての務めをしっかり果たしてもらうんだからな。


「エロエ、お前はもし魔王が復活したらどうする?」


 まず、ここからだ。同じ勇者といっても違う考えを持っているかもしれない。

 もし、こいつが世界を救わないと言ったら俺の計画は開始すらできない。


「う〜ん、どうだろう。多分倒しに行くと思うよ」

「そうか」


 あんまりはっきりした回答じゃないが今はそれでいい。

 少しでも行く意思があるならそれで十分だ。


「二つ目、と言ってもこれで最後だが」

「ありゃ、案外早いね」

「最後の質問だ。もし目の前でお前の仲間が死にかけていたら、その仲間を助けるにはお前の命を投げ出さないといけないとしたらどうする?」


 エロエは少し考える素振りをして今までの少し適当な感じの雰囲気をなくして言う、


「もしもそうなったら、私は仲間を助けるよ」


 やはりこいつは勇者なんだなと思っていたら勇者は続けてこう言った、



「でも、私も死なない。そういう道を選んで助ける。だって私が死んだら仲間が悲しむもん」

「っ……!」



 俺はこいつと俺を倒した勇者が重なって見えた。

 ムカつく、心底ムカつく回答だ。

 どこまでも甘くどこまでも理想論そんなことを平気で言う勇者。


「あれ?サタナ、どうしたの?」


 エロエは俺が下を向いて黙ったのを見て話しかけてきた。


「な、なんでもない。ただ、勇者はやはり凄いことを言うのだな、と思っただけだ」

「えへへ、そうかな〜」


 エロエは少し照れたように言った。

 まぁ、いい。勇者はこうじゃないと復讐のしがいがない。

 絶対にこいつは絶望の中でぶち殺してやる。


 《コンコン》とエロエと俺が話していると玄関からノックの音が聞こえてきた。


「あ、誰か来たみたい。サタナちょっと待ってて」

「あぁ、分かった」


 エロエは玄関に行き思ったより早く二、三分ほどで帰って来た。

 手に手紙を持っているからあれの宅配だったのか。


「手紙か?」

「うん、私、村の外の知り合い少ないから手紙とか珍しいんだ」


 そう言いながらエロエは手紙を開ける。

 そして、エロエは手紙を見て驚いた顔をする。



「サ、サタナ、私さ魔王を倒しに行くことになった…」

「は……?」



 魔王を倒しに行く?

 いきなり何言ってるんだコイツ魔王は目の前にいるぞ。

 いや、もしかして…


「手紙、見してもらっていいか?」

「あ、うん、いいよ」


 少し戸惑いながらエロエは手紙を見せる。

 内容を見て俺は、やっぱりかと思う。


 手紙の内容はこうだ。



※_____________※


拝啓、勇者エロエへ


私はトーラス王国の王だ。

いきなり、こんな手紙が届いて

驚いているだろう。

勇者エロエ、単刀直入に書かせ

てもらう。

新たな魔王が誕生した。

そなたに討伐を頼みたい。

この事は内密だ。

いきなり魔王が誕生したと

言ったらこの国は混乱する。

その為、今は資金などしか届け

られない。

勇者よ、頼む新生魔王を倒して

くれ。

※______________※



 全く人任せな王だ。

 もし俺が勇者ならこいつからぶっ殺しに行くぞ。

 それにしても新しい魔王か…

 まぁ、これも好都合だ。

 この魔王をぶっ殺したところで実は俺が初代魔王だったんだ。

 なんてなったら魔王を倒して心労した勇者達を最初の計画よりもずっと絶望させて殺せる。


「サタナ、魔王討伐ってまず何からしたらいいのかな?持っていく物ってこれだけでいいのかな?」


 いや、魔王の俺にそんなこと聞くなよ。

 エロエはいきなりの事すぎて何からすればいいのか戸惑っているようだ。

 なぜか、少し大きめなバックを用意して鍋やらお玉やら包丁やらを入れている。


「お前は魔王討伐をお料理対決か何かと勘違いしているのか?鍋やらお玉やら、要らないだろ」

「で、でも、お腹すいたらどうするの?」

「いや、そんなのその場で獣や木の実を食えばいいだろ」

「で、でも、料理しないと美味しくないよ?」

「別に、腹さえ満たせればなんでもいいだろ」


 なんだこいつ、バカなのか?

 ここまで言っても、でもなぁと唸っている。

 まぁ、こいつが悩んでいる間にどうやってこいつに付いて行くか考えないとな。


「あ、調味料も持っていかないと!」


 案外、簡単についていけそうだな。

 こいつ本物のバカだ。

 簡単に言いくるめられそう。

 というか、調味料なんていらないだろ。


「おい、調味料なんてなんに使うんだ?敵にかけて食べるのか?」

「え、何言ってるのサタナ…」


 こいつ、折角冗談を言ってやったのに本気で返してきやがった。

 なんだこいつの目、まるでこんな大変な時になに馬鹿なこと言ってるの的な目をしてやがる。


「はぁ、そんな荷物いらないだろ。動きずらくなるぞ?」

「そ、そうかな…でも、持って行きたんだよね」


 なんだこいつ、なんでこんなに調理器具を持って行きたがるんだ?

 …そうだ、これならこいつに付いて行けるかもな。


「エロエ、何か他にバックか何かあるか?」

「え、あるけど。何かに使うの?」

「あぁ、ちょっとな…」


 エロエは別の部屋に行きバックを持ってきた。


「はい、これでいい?」

「あぁ、さてと」


 俺はそう言うとエロエのパンパンに詰められたバックから重そうな物を出して渡されたバックに移していく、そう俺がしようとしているのは荷物の半分を持ってやるから連れて行けということだ。


「え?えっ、サタナ何してるの?」

 俺は半分に分けた荷物の重い方を持って言う、

「アンフィニバックが手に入るまで俺が半分荷物を持ってやるって事だ」

「え、いいの?」

「いいから、こうしているんだろう」


 俺は少し呆れながら言う。

 これなら、あまり不自然じゃなくコイツに付いて行ける。

 実際、今日初めてあった奴がこんなにお節介をしたら怪しむぐらいするだろうがそこは勇者、全然怪しんでいない。



「あ、ありがとう……」

「ん、あぁ」



 なんだこいつ、照れているのか?

 エロエは少し顔を赤くして下を向きながら礼を言った。


「今更だがもう少し準備をしてからこの村を出たほうがいいんじゃないか?」

「今日の一針、明日の十針って言うし出るなら早いほうがいいんじゃない?」

「お前がそれでいいなら俺は何にも言わんが」


 普通、旅の準備ってもっとこう時間をかけてするもんじゃないのか?

 と言うか持ってる荷物が調理器具しかないぞ。

 これでいいのか?


「じゃあ、しゅっぱーつ!」


 そう言いながらエロエは家の扉を開ける。

 なんとも気楽そうだ。

 この思い切りさも勇者ってことか…



「まぁ、いいか…」


「サタナー早く行くよー」

トーラス王国。

トーラスは日本語に訳すとおうし座です。

何故この名前にしたかというと作者の私の星座がおうし座だからです。

この世界(物語)では僕が神なんですよ!異論は認める!!


アンフィニバック。

まぁ、アンフィニはフランス語で無限って意味です。

つまり、無限に物が入るバックですね。

レア度的には中の上くらいです。

ちなみに生き物は入れられません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ