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魔王は復活し勇者は串を食う

前回と続く感じではなく勇者たちとの出会いから開始します。

《許さねぇ》

 闇に中で静かに声が聞こえる。


《勇者……絶対に》

 闇の中に更に黒い塊が見える。


《復讐してやる》

 闇の中、その黒い塊は少しづつ形を変えて最後には十代後半くらいの黒髪の少年になる。



『この日、初代魔王討伐から百有余年。世界に魔王が復活した』



「やっと、復活できたか……」


 少年は(まぶた)をゆっくりと開いた。


「まだ少し体が重いな」


 少年はぴょんぴょんと跳ねながら体を動かす。


「体、少し縮んだか?」


 自分の頭に手を置いて自分の体の変化を感じる。


「というか、人間になってね?」


 少年は池の水面に映る自分を見ながら言った。


「ふぅ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 な、なぜだ?どうして?俺は魔王だぞ?

 頭の中でグルグルとクエスチョンマークが回る。

 人間、最弱の生物、最低の生物、悪魔よりも悪魔らしいゲスな生物。


「何故だ!俺が人間なんていう最低な生き物に!」

 あ゛あぁぁぁあ!と言いながらのたうち回る。


「これじゃ、俺の復讐も……ん?」


 いや、この方が復讐しやすいんじゃないか?

 そもそも俺の復讐計画には大きな穴があった。

 元々の、魔王の俺にはどうしても押さえ切れない狂気が漂っていた。

 レベル10以下の者なら俺に近づくだけで気が狂う、それほどに狂った気。


「やっぱり、この体狂気が出ていない」


 これはある種ラッキーなのかもしれない。


「じゃ、これは……」


 俺は体から力を溢れ出させるイメージをする。


「やっぱり、これなら完璧だ」


 すると俺の体から狂気が溢れ出し体も倍ほどの大きさになる。

 そう、俺が『魔王だった時の姿』だ。


「完璧、完璧じゃないか!待っていろ勇者、これからお前たちを絶望のどん底に陥れてやる」


《ぐー》

 ん、腹か。そういえば100年近くなんにも食べてないんだ腹も減るか。


「取り敢えず、なんか食うものを探すか」


 俺は周りに誰もいないことを確認してスキルを発動する。


全知の地図(オムニセントマップ)


 魔王の12の特殊スキルの一つだ。

 頭の中にここ付近の地図や生物の配置が流れ込んでくる。


「近くに村があるな」


 名前は『英雄の村(ヘルトドルフ)』か…


「英雄の、村?」


 いや、流石にそんな都合よく勇者の村を見つけられるわけがないか。

 そんなの都合がいいを通り越して奇跡だからな。


「まぁ、取り敢えず行ってみるか」













《ようこそ!勇者の血を引く村へ!》

 デカデカと看板にはこう書かれていた。


「はい、ビンゴ……」


 こんなに早く勇者の居場所が分かるとはちょっとだけ張り合いがなくなったな。


 村はぐるりと一周木の柵が張ってあり、大きさは村にしては少し大きいくらいだろう。

 村の前には警備の者がいる。いるが……


「スヤァ」


 見ての通り柵に寄りかかって寝ている。

 これも魔王がいなくなってからの平和ボケってやつか。


 魔王、つまりこの世界全体の敵がこの世からいなくなる。

 そうなるとどうなるか、そう平和になるのだ。

 そして魔王とは滅多に現れるものではなく偶然や偶々の奇跡によって誕生する。

 魔王とは生まれながらに魔王なのだ。


 それ故に魔王とは数千年単位でしか生まれることはない。と、思う。

 これはあくまで俺の仮説だ。

 俺がこの世界始まって最初の魔王だから魔王のシステムについてはまだあまりわかっていない。


 結局俺が何を言いたいかというと(魔王)がいなくなって100年近くこの世界は平和続き。

 所謂(いわゆる)、平和ボケをしているのだ。


「まぁ、その方が都合がいいか」


 都合のいいこと続きだな。と、少し肩を落とした。

 警備の者が寝ていたためすごく簡単に入れた。


 ザワザワザワ、村に入って色々回ってみるとこの村がかなり豊かであることが分かった。

 湧き水が多いのかいたるところに井戸があり土がいいのか農作物もいい感じだった。

 村の人々も賑やかで活気溢れる村と言ったところか。


「おう!兄ちゃん!うちの店特製アインホルン豚の串焼き食べていかねぇか?」


 村の大通りを歩いていると大柄で大きい包丁を持った出店のおっさんに呼び止められた。

 アインホルン豚かあの角の生えた豚。美味いんだよな。


「あぁ、じゃあ一串貰おうか」

「おう!毎度、ちょっと待っときな」


 ジューという音とともに香ばしい甘辛いタレと鼻腔をくすぐる豚の美味そうな匂い。

 これは100年ぶりに美味い飯が食える。


 しばし待つと店主が串焼きを持ってくる。


「待たせたな、アインホルン豚の串焼き250レイね」


 レイ?なんだ、この世界の通貨は金貨や銀貨、銅貨だったはずだ。


 チラッととこの屋台を見る。するとその屋台の店主は客になにやら女の顔が書いてある銀貨のようなものを差し出していた。


 しまったあれがレイか、100年近く経ってるんだそりゃあ通貨だって変わっていてもおかしくない。


「すまない店主、今思い出したんだが金を家に忘れていてな」

「なにぃ!兄ちゃん金がねぇのに食いもん買ったのか!勘弁してくれよぉどうすんだよこれ作っちまったじゃねぁか」


 しまったな、流石にこれは俺が悪い。

 どうにかして店主に同価値のものを「まぁまぁ、串焼きのおっさんもそんなに怒るなって」


「ん?」


 俺がどうしたものかと考えていると横から俺より少し背の低い桜色の髪をした女が話しかけてきた。


「その串焼きの代金は私が立て替えとくからさ」

「な、エロエがそう言うならそれでもいいがよ」


 どうやらこの娘、俺の代わりにこの串焼きを買い取ってくれるらしい。

 出店の店主も少し不満そうだが納得はしているようだ。


「すまない、感謝する」


 人間に感謝の気持ちを送るなど本当のところはすごく嫌だが礼が言えないほど俺も落ちぶれていない。


「気にしないでって困った時は助け合いってね」


 女がニコッとしながら言った。

 チッ、この女よりにもよってあのクソ勇者と同じことを本当に困っている時助けてくれる者なぞいるわけないのに。


「あぁ、それと店主改めて謝罪を」


 感謝同様に謝罪を人間にするなんて本当に嫌だが今回の件は俺が悪い人間と違い俺はしっかりと礼儀くらいできているのだ。


「う、いいってもう終わったことだし俺も少し怒りすぎたからな次からは気をつけろよな!」

「あぁ」


 まぁ、こいつも人間にしてはマシな奴じゃないか。


「さて!一件落着、それとはいこれ」


 そう言うと女は俺に串焼きを渡してきた。

 恐らく俺にくれるということだろう。


「いや、これはお前が金を出したものなんだ。俺が食う資格がなグブッ!?」

「そんなこと言ってないで食っときなよ」


 女は俺の口に無理やり串焼きを押し込んできた。


「どう?美味しいでしょ!ここの串焼きは街でも人気だからね」


 確かに、ジューシーな肉から油が溢れてくる。

 豚肉に塗られている甘辛なタレがしつこくなく豚肉の旨みを引き出してとても美味い。


「あぁ、美味いな」

「お、おう、そう言われると悪い気はしないぜ」


 照れているのか店主は頬をぽりぽりかきながら答えた。


「ほらねー!美味美味。ということでおっさん私にも一本!」


 女は手を上げて大きいお肉ねーっと言った。


「おう!」


 店主も少し嬉しそうに店の中に入った。

 それにしてもこの串焼きは美味いな。

 もし人間じゃなかったら俺の街に来てもらいたいくらいだ。


 俺はもぐもぐと串焼きを食いながらそんな事を考える。


「そういえばお前、名はなんというんだ?」


 そう言うとこっちを向き


「ダメだよ〜人の名を聞くときは先に自分から名乗らないと!」


 クッ、こいつまた勇者みたいなことを言いやがって……

 まぁ、いい。だが名前か流石に魔王だった時の名前は使えないよな。


 まぁ、この場だけ付き合いだ適当にでっち上げるか


「俺の名前は『サタナ・アンフェール』だ。で、お前は?」

「なるほど、サタナね!サタナ、私の名前はエロエ・サクラギよ。よろしくね」


 そう言いながらサクラギは手をこちらに出している。

 まぁ、それくらいならいいだろうと俺はサクラギの手を握り握手をする。


「ニシシ」


 サクラギはなんだか嬉しそうに笑っている。


「まぁ、改めてサクラギさっきは……」


 ん?サクラギ……だと?


「なぁ、サクラギお前もしかして……」

「あ、勇者のお姉ちゃん!こんにちわー!」


 近くを通りかかった小さな女の子がサクラギに向かって言ってきた。


「お、こんにちわー」


 それに答え女の子に手を振る。

 これは、確定だな。


「サクラギ、お前勇者なのか?」

「え?うん、そだよー!」


 サクラギは俺に向かってブイっと手を前に出した。












《復讐開始から3時間》勇者見つけた。

イラストとか憧れるよねーチラッ


次回は明後日くらいの予定です。

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