チートになれなかった男の子のお話。
「あぁ!くそ!なんでうまくいかねーんだ!
俺はチート族じゃなかったのかよ!」
男の子は大きな声で叫びました。
『そうなのです。君はチートにはなれなかったのです。
簡単に言えば、「出来損ないのチート」。』
「センセイ」が冷酷にそう告げます。
「は?母さんが俺を産んだ時から俺はチート族なんだよ!
なんでチートの家系に生まれて俺だけがチートじゃないんだよ!」
男の子は理解できません。それもそうでしょうが。
『答えは簡単です。
あなたが「チートになるための勉強」をしなかったから。』
え?それは私も初耳ですねぇ。
「なんだよ、それ…」
『あなたがゲームに明け暮れている間に、
みんなは「ガッコウ」に行き、勉強をしました。
だから、みんなはチートになれたのです。』
え、チートってゲーマーじゃないの…
「え…?」
男の子よ、そこは同感します。
『チート族には二種類あります。
ひとつは、生まれつきのチート族。
あなたも本来ならここの分類でしょう。
そしてもう一つ。
それは「ガッコウ」に行き
チートになるための「サイヨウシケン」に受かったひとたち。』
「は…?何だって?チートにはチート族しかなれねーんだよ!」
『昔はチートにはチート族しかなれませんでした。
しかし、今はどうでしょう。
普通の血縁でも、本人にその意志があり、うまく適合するなら
チートになれちゃう時代なのですっ』
テンション高っ!てかそれチート族の意味…
「でもそれとこれとは別問題だろ!なんで俺はチートになれないんだよ!」
『簡単です。「サイヨウシケン」受けませんでしたよね?』
は…?私もよくわからなくなってきました。
「受けなかったよ。そのサイヨウなんちゃらってやつ。」
『あっはははははっwまじwまじかwwwえwwそれでwwwwチートなれねえとかwまーじかwwwwwwww』
え、この人どうしちゃったんでしょう。
『チートに志願もしてないのになれないとか、今の時代に何言ってんの?
大体から、今はもうチート族もチートじゃないんだよ。一般人。
君からすれば、「チート」かもしれないけどね。』
「じゃあ俺はどうすりゃいいんだよ!このままチートにもなれないまま一生ゲームしてろと!?」
さぁ、どうなるのでしょう。
『あ、それは可哀想だね笑。
じゃあいくつかいいこと教えたげる。
君には
ニート
フリーター
人生ゲームプレイヤー
の3つのうちどれかがお似合いと見えたわ。』
………………え?
ニートもフリーターも人生ゲームプレイヤーも、
全部同じじゃね?ほとんど…
てか、チートってもしかして…
「え!超かっけーじゃん!ニート!
俺チートやめてニートになるわ!」
え、
だめだ、これってまさか
かなりの世間知らずってやつか…
チートってもしかしてあれだ。
社会人ってことか。働ける人=チート。
その才能を駆りだされた人々たち。
あ、この男の子がチートになれない理由わかりましたね。
でも助けてあげられません。
私も幽霊なのですから。実体が無いのでこの世界には干渉できないのです。ごめんね笑
「センセイ」の方を見ます。そうすると、どうやら彼女はハロワの職員らしいですね。
彼女はまた一人を可哀想な、「社会切り捨てリスト」に追加するのでした。
彼らの運命はもう見えてますよね…
XXXX年、人口が増え過ぎた日本では毎年何人もの人が社会から棄てられていくのでした。
そして、ハロワの彼女は。
自分の食料が増えたことで
無常の喜びを顔に宿しているのでした。
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