久遠ーkuon- (予告短編)
俺は、周囲の人間から、漆黒の総帥として怖れられていることを知っている。
それでいい。
そう望んだのは俺自身なのだから。
怖れればいい。
畏怖すればいい。
恐怖政治と言われても、その先に本当の世界があるなら、俺はそれを厭わない。
脆く儚いこの世界を、俺は漆黒で染め上げる。
けれど。
“ああ、出会えた。”
彼女を一目見た瞬間にそう思った。
漆黒の闇に差した一条の光。
光など見ることはないと思っていたのに。
君は俺に、その光を見せたんだ。
君を求めて止まなくなる俺の心。
けれど、この狂おしいばかりの想いを君にぶつけることはできない。
俺にはやらなければならないことがあるからだ。
この世界を、俺の手で、変えること……。
ああ、でも。
なぜだろう。
前を向けば向くほど、心は君ばかりを求めるんだ。
君の笑顔を。
君のぬくもりを。
君の優しさを。
君のすべてを。
そして。
俺の心が、君でいっぱいになっていく……。