第3話
(ふぅーよし。イメージ的にはこんな感じだな)
集中し、イメージを鮮明に、描くビジョンを頭の中で再生して体を動かしその動きに自分なりに納得し及第点を付けたところで一息入れる。
「あっあっあっあの!!!」
一息いれ振り向いたところへの不意の呼びかけにビクッとしてしまう。
「おおおおっ」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
(あれ?今声かけられたよね俺?)
「・・・・・・・・・・・」
「あの、なにか御用でしょうか?」
思わずこちらからきいてしまった。
「スーハースーハ(息を整えている)・・・何を・・・している・・の?」
「えっとー(なんて言えばいいかな)今まで寝たきりだったんだけど外に出られるようになったから体を鍛えるための運動をしているんだよ。僕は体が弱いからね」
「僕?」
「ん?」
(あっ!もしかしてこの子)
「こんな容姿をしているけど僕は男の子だよ名前はクラウディーフィールドよろしくね」
「ぼぼぼ僕はっ・・シャーリークロウ」
名前を名乗り、差し出した手を、恐る恐るではあったがシャーリーは握って答えてくれた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
(この沈黙なんとかならないかな)
そんな事を思っていると今度はシャーリーから喋ってくれた。
「あっあの・・近くで・・見てて・・いい?」
「ん?あぁいいですよ。次からも茂みからこっそり見ずに堂々とみて構いませんから」
「きっ気づいていたの?」
気づかれていないと思っていたのかシャーリーの顔は赤面していた。
「ええシャーリーの髪の毛は目立ちますから」
「あぅうううぅううう」
そんな弱々しい声をだしシャーリーは頭を抱えてうずくまってしまった。
「どうかしたの?」
「やっぱり目立つよね?・・・迷惑だよね?」
シャーリーはそんな事を呟く。
「えっと目立ちはしますが迷惑ではありませんよ?」
「え?」
そんなまさか的な眼差しで見つめてくるシャーリーに鳴海は聞いてみた。
「なぜ迷惑だなんて思うんですか?オレンジ色の髪なんて珍しいし瞳もよく見れば金色ですし綺麗じゃないですか。」
見たままを思ったまま口にしたのだが当の本人は「綺麗」の部分に反応して顔を赤らめ俯きモジモジしていた。
(いやいやいやいや君男の子だよね?なぜ赤面してモジモジする?将来この子は男の娘になるんじゃ)
そんな事を思っているとシャーリーが答えてくれた。
「僕、エルフの血が混じってる・・・少し・・・だから・・・・その・・・・」
(う~ん話が見えてこないぞ血が混ざってるとどうなんだ?)
「すみません僕は寝たきりだったので外の世界とか常識とかに疎いんです教えてくれませんか?」
つまり要約すると話はこうだ。この世界では種族の種を何よりも重んじる傾向にあり、他種族との交わりが一種の禁忌とみなされ異端者として忌み嫌われる。禁忌とみなされているのであって禁忌でない理由はハーフでありつつもその深い歴史の中で名を刻むような英雄譚が存在しているからだ。魔法の生みの親マギの仲間にも異端者はいたらしい。そしてシャーリーの祖母がエルフで祖父が人間だからシャーリーはエルフと人間のクォーターになるのだ。今では昔ほどの疎外を受けるのは少ないもののその黒い歴史はなかなか消えない。シャーリーの髪のオレンジも金の瞳もそれが顕著にでていて周りの子供たちはそれを理由にシャーリーをのけものにしているのだ。まぁいじめだ。
「そうだったんですか言いづらいこと教えてくれてありがとう。もしよかったら僕と友達になりませんか?」
話をきいて理由をわかってそれでもなお友達になって欲しいと差し出すクラウディーの手をシャーリーは見つめることしかできなかった。
「僕も友達がいないんです。シャーリーが友達になって色々と外のこととか話し相手になってくれると嬉しいんですがダメですか?」
「僕で・・いいのぉ?」
「はい。逆にシャーリーは僕とお友達になるのどうですか?嫌ですか?」
「ううんそんなことないクラウディー君がいい。」
「じゃあーはい。」
そう言ってもう一度手を差し出す。それに答えるようにシャーリーは力強くクラウディーの手を握った。
この日二人は友達になった。