タイムラブレター
告白なんてとても出来ない
僕はシャイで
君と話すことも、君と一緒に居ることも出来ない
何故なら僕はシャイだから
だけれど、君と過ごす時間は、人生で一番好きだった。
だから僕は
毎日放課後、学校の誰もいない教室でラブレターを書いている
どうせ破かれ棄てられる手紙だけど
それでも毎日書いている。
毎日違う内容で、書いている文体もそれぞれ違う
どれもこれも、あまりシックリくるものは無いが。
僕はこの手紙を棄てる事が出来ない
何故だかは分からない。
けど、取っておいた方が良いのかも、と今まで書いたものを全部、家に持って帰って引き出しの中に仕舞っている。
引き出しの中で綺麗に並べて、いつ君に見せても良いように。
ある放課後、テストが近かったから、いつも以上に勉強し、その後いつもの様に手紙を書いていた。
この日はいつも以上に良いのが書けた。
その日、僕はラブレターを机の中に忘れたのを正門を出てから気付いた。
勉強で疲れたのもあったのだろう。
そしてトボトボと帰っている最中に君が此方に向かって走ってきた。
「また会っちゃったね。ちょっと、学校に忘れ物しちゃってさ」
気を付けて、と緊張のあまりそれだけしか言えなかったが、それでも笑顔で小さく手を降った。
そして、駆け出す後ろ姿を少しの間だけ見とれていた。
次の日の朝学校で、君の机の上に花が置いてあった。
告白なんてとても出来ない
僕はずっと泣いていた
止まらない涙に、苛立ちさえ感じた。
頭に過る、最後に聞いた君の声だけがせめてもの救いだった。
ーー
あれから何年経ったかなんて自分は忘れてしまった。
ある日、引き出しの中をふと覗いた。
懐かしいラブレターが大量にあった。
字も汚いし、紙も何だか薄汚れてる。
よく見ると、間違いだらけのプリントと混じって、一つのラブレターだけ赤字で書いてあった手紙を見つけた。そしてそれはまず、自分の字では無いという事は明確だった。
「いつでも告白の言葉 待ってます」
両手に握っていたラブレターの文字が、上から落ちてきた何かで、小さく滲んだ。