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ラビリンスワールド  作者: 覚之輔
第五章:転換点
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第五章:転換点

ユウカの指定する場所に行き、ユウカの指示に従って仕事をし、給料をもらうという生活を数年続けたある日の昼にカフェで休憩していた。

しかし、ユウカの奴は相変わらず人使いが荒いな。これだけの給料じゃ割に合わないな、などといつものように考えていた。そこに、最近ユウカのところに来たナナとミサキが大きな声でしゃべりながらカフェの前を通り過ぎていった。


ナナ「なにあの、ショウってひと。暗いんですけど。」

ミサキ「そうそう。暗くて気持ち悪い。それに臭いし。」

ナナ「わかる~。特に汗かいているときなんて超臭いんですけど。鼻もげる。」

怒りが込み上げてきた。仕事に戻って、作業を続けていたが今までなんともなく普通に接していたひとも俺を避けるようになっており、裏でヒソヒソ話をしていて俺が近くに来るとすぐにヒソヒソ話をやめて俺から離れていくことが何回もあった。


くそー。あんなやつらと一緒にやってられるか。ゴールドはある程度溜まっていた。レベルを確認したらレベル17になっていた。よし、レベル18まであともう少しだ。もう、いやな思いをしてユウカのところに居る必要はない。

このゴールドを元手に一人で稼げる方法はないかな。ギャンブルはなくなる可能性が高いし、いい防具や武器を買って格闘技場で稼ぐか。

などと考えてる日が増えていった。よく考えた結果、ユウカみたいにステンレスをブランド品の部品にまで加工する技術は持っていなかったが、金属のインゴットの製造なら何とかやっていけると思った。


よし、インゴットにすれば鉱石よりは高く売れるので鉱石を拾って、拾った鉱石でインゴットを作って売るとしよう。あまり面白い仕事ではないがユウカのところで働くよりはましだと思った。翌日、ユウカにユウカのところで働くのはやめることを伝えた。

やめた次の日から裏山に登って鉱石を探してはインゴットにする仕事を始めた。これまで、数年間、やってきただけあってどこに行けば鉱石が取れるかはわかっていた。また、ユウカのところで何回もやってきたのでインゴットにする作業も失敗しないで作れた。しかし、高く売れるインゴットを作る鉱石は思ったほど取れず、ユウカのところで毎日もらっていたゴールドよりも少ない稼ぎだった。まあ、ユウカのところであのひと達と働くよりましだと思った。


そんな生活を数か月していたある日、石を集めている最中に何気なくスマホで自分のレベルを見てみると、レベル18になっていた。よし、レベル18になった。これで、ラビリンスワールドの生活ともお別れだ。石を集めるのをやめ、急いでL18禁のエリアに向かった。L18禁のエリアの入口にある電子錠にスマホをかざしてみた。しばらく間があったが、電子錠が開き念願のL18禁エリアに入ることができた。

「やったー。ようやく入れたぞ。」と思わず声にだしていた。


L18禁エリアに入るとそこにはこれまで見たこともない高級な武器や防具を売っている店や雑貨屋、服屋、家具屋があった。出口はどこにあるのかと探したところ奥に扉が2つ並んでいた一つの扉には「L30禁」と書いてあった。

「L30禁って。気が遠くなるな」と思った。

もう一つの扉には「ラビリンスワールド出口」と書いてあった。ようやく出口を見つけた。やっとここから出られるとおもいドアを開こうとしたが、開かなかった。電子錠があったのでスマホをかざしてみたが、どうしても開かなかった。ドアの横に目をやると注意書きがあった。


『この出口を開けるにはL30禁エリアにあるパスコードをスマホで読み取り、出口の電子錠を開錠してください』と書いてあった。目の前が真っ暗になった。終わった。

ショウは気がつけばカプセルホテルのベットによこになっていた。どうやってL18禁エリアからカプセルホテルに帰って来たのか、記憶がなかった。それから、1週間動く気力もなくカプセルホテルのベットで過ごした。


1週間後にようやく外に出る気になってきたので、石拾いをしてインゴットを作る生活に戻っていった。ほーとした状態でインゴットを作る生活をしていたある日、

シルバーラビリンスの素材工房は1つしかないため、ユウカのグループと度々出くわすことがあり、俺がインゴットづくりをしていると隣で作業していたユウカのグループのナナが騒ぎ出した。

ナナ「ユウカさんさっき作った鉄のインゴットを見かけませんでしたか」

ユウカ「いいや、見てないぞ」

ナナ「今から使うので、さっきここにおいておいたのですが、ないんです」

ユウカ「そこらへんに落ちてるかもしれないから周りをよく探してみろ」

ナナ「さっきから、いろんなところを探してみたのですがないんです。そうなると、ショウがとったとしか考えられないんです」

ショウ「なんだと」

ユウカ「ショウお前とったのか」

ショウ「俺じゃないですよ」

ナナ「じゃあ持ち物調べさせてもらうわよ」

ショウ「ああ、いいぞ。なかったらただじゃおかないからな」

ナナ「スマホ貸しなさいよ」

ショウ「好きにしろ」といってナナにスマホを渡した。


しばらく、ショウの持ち物の欄をスマホで確認していた。

ナナ「今日、鉄のインゴット使った」

ショウ「いいや、今日はクロムのインゴットを作ってるだけだ」

ナナ「じゃあ、この鉄のインゴット1っていうのはなによ」

ショウ「え!そんなはずはない。貸してみろ」スマホの中身を調べてみたところ、ナナのいうとおり、鉄のインゴットが1つ持ち物の中に入っていた。なにがなんだか、訳がわからなくなった。


ショウ「え、その、あの、これは・・・」

今日のことを思い出していた。今日は朝からクロムの鉱石を集めて、素材工房にきて、クロムのインゴットをひたすら作っていただけだ。そういえば、

ショウ「わかった。さっきつくったクロムのインゴットを入れたときに間違って鉄のインゴットも入ってしまったんだ」

ナナ「うそつかないで、とったんでしょう」


ショウ「違います。ユウカさん信じてください。間違って入ってしまっただけです」

ユウカ「今回だけは許してやる。次やったらタダじゃあすまないよ」

ショウ「すみませんでした」ショウは逃げるように素材工房を後にした。ラビリンスワールドの出口も見つからず、トラブルに巻き込まれ、気分は最悪で頭が痛く少し吐き気もしてきた。悔しくて泣きながら歩いてカフェに向かった。


カフェでボーとしながら窓の外を見つめていると、隣に座っていた白髪混じりの中年男性が話しかけてきた。

中年男性「落ち込んでいるようですが、どうかされましたか」

ショウ「はい。いやなことがいろいろありまして」

中年男性「そうですかそれは大変ですね」

ショウ「聞いてくださいよ。」

中年男性「今回は話をしてくれるのですね」

ショウ「今回?」

中年男性「私があなたに話かけるのは初めてじゃあないですよ」

ショウ「え、いつお会いしました?」

中年男性「3年ぐらい前、重そうな荷物を運んでいました」

あの臼を薬工房まで運んでいるときに声をかけてきてうっとうしい人がいたのを思い出した。

ショウ「あのときの」

中年男性「覚えておられましたか。私はマコトといいます。それで、今日はどうされたのですか。」

ショウはこれまでのことすべてを1時間以上かけてマコトに話をした。マコトはたまに相ずちを打ちながら静かにショウの話を聞いていた。話を聞き終わってマコトは

「名前はショウさんというのですね。それは大変でしたね。」

「理解してくれて、うれしいです」ショウは少し気分が楽になった。

「このラビリンスワールドに来てからずっといいことがないんですよ。どうすれば、しあわせになれますか」

「しあわせになれますよ」とマコトはこたえた。

「どうやってですか」

「意識を変えればいいんですよ。まずは自分に起こっているすべての責任を負うという覚悟が必要だと思います」

「意識を変える?責任を負う?」ショウには何をいっているのかまったく理解できなかった。

「そうです。自分の言動だけでなく、自分のいる環境や出来事も責任を負うということですよ」

「自分の言動ならともかく、環境までは責任はとれませんよ。環境なんて私の力では変えれませんから」

「そのような考えから変えていったらどうでしょう」

「無理ですよ」

「そう思っている限り、これまでと何も変わりませんよ」

「でも、無理なものは無理でしょう。環境を自由に変えられる人なんていませんよ」

「その考えを変えてみましょうとお誘いしているのです。まずは今身の回りで起こっているすべてのことの責任は自分にあると考えることにする。考えるだけですから、タダですしね。もし、途中で道を間違えたと思ったら、この考えをやめればもとに戻れますから」

「わかりました。ただそう思えばいいのですね」

「そうです。それがしあわせへの最初のステップだと思うんです。自分に起こるすべての原因が自分にあり、言動をはじめ環境も自分で創っているのだとすれば、自分で変えられるということになりませんか。他人は一切関係なく、自分で創っているのですから。」

「そうなりますね」とショウはこたえた。

「そうすると、自分の望む言動や環境を創るのに他人を変える必要はないんですよ」

「そうなりますね」とショウは再びこたえた。


「そうでしょう。そうすると、自分が変わればいいだけですから思っているより難しくはないと思いませんか。」

「そうなりますか?」ショウはマコトの話についていくのが難しくなってきた。

「理解が追い付いていないようですね。今日はこれまでにしましょう。また、興味があれば続きをお話ししますよ」といって、俺たちは連絡先を交換した。


「1つ大事なことをいい忘れていました。しあわせへの道はこの方法が唯一の道ではありません。自分に合わないと思ったら、考え直せばいいですよ。私は強制しませんので、ご自分の意思で決めてくださいね」

「はい、わかりました」

カプセルホテルに戻り、マコトのいったことをよく考えてみた。自分の周りで起こっていることは、自分が原因で起こっているという意味のことをいっていたよな。

そういうことにするということはわかったが、こんな、最悪な人生を自分で創った記憶はないんだけど。それに悪口をいう奴はそいつが悪いに決まっているじゃないか。マコトさんは何をいっているんだ。


次の日も同じようにインゴットづくりを行っていたが、気分はおもく相変わらずさえない1日であった。仕事終わりにカフェに寄るとマコトがいたので、話しかけてみた。

「やっぱり、今の状況を自分で創ったなんて思えないのですが」

「そうですね。その気持ちはよくわかります。信じられないのであれば仮定として考えてみてはどうでしょう。つまり、今の状況は自分で創ったと仮定するという具合に」

「それならできそうですね」

「それじゃあそういうことにしましょう。今の状況を自分で創ったのであれば、自分で変えることができるということになりますね」

「そうなりますね。」

「それじゃあ、今の状況を変えてみましょう」

「どうやって?」とマコトに聞き返した。


「考えや思い込みを変えてみるのですよ」

「考えや思い込みを変える?」

「そうです。考えや思い込みが今の状況を創っていると仮定してみましょう」

「今の状況は自分の考えや思い込みによって作られていると仮定する?」

「そうです。そう仮定するのです。理解できていますね。普通の人は常に頭の中で考え事ばかりしています。ショウさんはどのような考えをしていますか」

「明日なんの鉱石を取ろうかとか、のどくらいの量を取ろうかとか。いやな奴にと会わないようにするにはどうしたらよいかとかですかね」

「気を付けてみてみると、頭の中ではひっきりなしにいろんな考えが浮かんで、いつも何かを考えていますよね」

「はい」

「まずは、少しでいいので考えを止める練習をしてみましょう。今ここにあるものに集中することで、頭の中の考えが止まります」


「そうなんですか」

「いつでもどこでもできるので、よく使われる手法は自分の呼吸に集中することです。息を吸い込むときの鼻から空気が入る感じ、空気で胸が膨らむ感じを感じます。息を吐くときも口から息をはいている感じ、胸から空気が抜けていく感じに集中し見ましょう。呼吸に集中することによって頭で考えないようにします。」

ショウはしばらく呼吸に集中してみることにした。

(息を鼻から吸って、口からはく。あれ、これって考えてる?ダメだ、呼吸をしている感覚を感なければ。これってちゃんとできているのかな。あだめだ、また考えている、難しいな)


「ダメです。うまくできません」とマコトに伝えた。

「はじめは、うまくいかないものです。周りに人がいるから集中できないのかもしれませんので、カプセルホテルのご自分の部屋で練習してみてはいかがでしょう」

「わかりました」

そういって今日はカプセルホテルに帰ることにした。


カプセルホテルで試してみたがあまりうまくいかなかった。

毎日、続けていると少しずつ呼吸している感覚を感じることができるようになった。

1週間ぐらい練習して15秒ぐらいは呼吸に集中できるようになってきた。

前回あってから1週間後にまたカフェにいった。

「少しは呼吸に集中できるようになりました」

「それはよかったですね。頭の中は思考でいっぱいだということがわかりましたね」

「よくわかりました」

「その思考が現状を作っているのだとしたら、その思考を変えればいいですよね。」

「でも、すべての思考が悪いというわけじゃあないでしょう」

「そうですね。それじゃあ気分が悪くなるような思考やブルーな気持ちになるような思考などのネガティブな思考を手放していきましょう」

「はい」

「普段はどんな気分のことが多いですか」

「いつもいやなことがあるので、気分はブルーです」

「それはよくないですね。ブルーだといやな気分ですよね。まずはこのブルーな気分を手放すワークをやっていきましょう。それではそのブルーな気分を意識して見てください。そしてその気分は好きではないですよね。それでは好きではないと決断します。そして、この気分を選択したのは自分です。この選択は間違っていました。選択したときには間違ったとは思っていなかったかもしれませんが、今は間違った選択だと考えています。間違った選択だったと決断しましょう。そしてこのブルーな気分を手放します。この気分にしがみつくのをやめて手放してやります。そうすると体の力が抜けていくのがわかります。最後に正しい選択ができるよう神にゆだねましょう。ではやってみましょう」とマコトは説明した。

「はい、まずはブルーな気分を意識する。この感覚は好きではないと決断する。間違った選択をしたと決断する。そして手放す。ふー。最後に神様に正しい選択ができるようゆだねる。できました。さっきまで、あったブルーな気分がだいぶ軽くなりました」ショウは気分が軽くなったことを実感していた。

「それはよかったですね。成功です。この方法はネガティブな感情や思考を手放すのに使えますよ。でも、ネガティブな感情を手放しても、それを創っている元の思考が残っている限り、一時しのぎでしかないことを忘れないでください」

「わかりました」

「まずは一時しのぎでも気分的にはだいぶ軽くなると思います。続けてみてはどうでしょうか」

その言葉をきいてショウは少し気分が明るくなったような気がした。これはいいことを教えてもらったと思った。

それから、いやなことがあると手放しのワークを行い、ブルーな気分になる時間は短くなっていったが、しばらくすると手放したはずの思いが再び湧き上がってくるのに気が付いた。


仕事終わりにカフェに行って、マコトに話しかけた。

「ブルーな気持ちになったときに手放しのワークをすると、気分が軽くなりとてもいいのですが、しばらくするとまた同じようにブルーになるんです」

「そうですね。それでは次に進みましょうか」

「よろしくお願いします」

「とはいっても、やることは同じなんですよ。手放しのワークをするだけです」

「同じことをしても、繰り返しになるだけじゃあないですか」

「同じといっても、手放す対象を広げるです」

「手放す対象を広げる?」

「そうです。いままではブルーな気分やネガティブな気分を見つけては決断して手放すということをやってきましたが、このネガティブな気分を生み出している元の思い込みや考えを手放していきましょう」

「考えを手放すのですね」

「考えをすべて手放すのではなく、不必要になった考えや思い込みを手放すのです。例えば、以前、友人との約束を破ってしまったことに対してとても悪いことをしたと思っているとしましょう。約束を破ったときに、あやまって許してもらったにもかかわらず、いまだに思い出すたびにブルーな気持ちになるのなら、この出来事に対する思いが残っています。この思いを手放すのです。何かのはずみでふと思い出したときに手放しのワークを行ってみましょう」

「そういうときにも使えるのですね」

「そうです。それから、ブルーな気分になったときにも、ブルーな気分を手放すだけでなく、その元となる考えや思い込みがないか探り、見つけられたらその考えや思い込みに対しても手放しのワークを行っていきましょう。」

「わかりました。できそうな気がします。やってみます」

ショウは次の日からブルーな気分が湧き上がってきたときには手放しのワークでブルーな気分を手放した後、この気分がどこから来たのか自分自身の中を探し、見つけられたときには元の考えを手放すようにした。いやな気分になったときにはこの手放しのワークをやることが普通にできるようになった頃にはだいぶブルーになる回数も減ってきていた。

効果があると感じたので、カフェに行ってマコトにお礼をいうことにした。

「マコトさんおかげさまで、気分がブルーになることがだいぶ少なくなってきました。どうもありがとうございました。」

「そではよかったですね。自分の経験が役に立ててうれしいです。いままではネガティブに目を向けて手放してきましたが、今度は楽しいことを見つけて実行していってはいかがでしょう」

「楽しいことを見つける?どうやって見つけるのですか」

「自分の内側に入って探してみましょう」

「内側に入るとはどうやるんですか」

「そうですね。自分の内側にある安らぎの場所を探してみましょう。私のいう通りにやってみてください」

「わかりました」

「まずは、気持ちを楽にして目をつぶってみましょう。いいですか」

「はい」

マコトは安らぎの場所を探すための説明をしだした。

「ショウさんは今そそり立つ崖のふもとにいると想像してください。この崖を登らなければなりません。崖を登り始めてください。

手はゴツゴツした岩をつかみ足は岩と岩の間のわずかなスペースを探してつま先をかけて登ります。岩は固く登っていると指が痛くなってきました。それでも我慢して登ります。時には腕力だけで上がらなければならないことろもあり、腕の筋肉がとても疲れてきました。


少し休んでは崖の頂上を目指して登ります。頂上までどのくらいあるか見上げてみると頂上はまだまだ先にあり、上を向いたときに砂が顔に降ってきて目に入って涙が出てきました。ようやく砂を振り払い、負けずに登っていきますが今度は雨が降ってきました。雨はだんだん強く降りだし登れないくらい降ってきました。


雨が小降りになるまで崖の途中で休憩します。頭の先からつま先までビショビショになりました。しばらく、耐えていると雨は小雨になってきたので崖のぼりを再開させます。岩が濡れているのですべりやすくなっているのでこれまで以上に指先に力が必要になってきました。


霧が出てきてあたりがよく見えなくなってきました。それでも頑張って頂上を目指します。頑張って、頑張って、頑張って頂上を目指しますが、指や足の筋肉が限界をむかえてたそのとき、霧が晴れ上を見上げるとあと少しで頂上にたどりつくことがわかりました。最後の力を振り絞り頂上を目指します。

やっとの思いで頂上にたどりつきました。そこは安らぎの場所です。ショウさんの安らぎの場所はどんなところですか」


「そこは緑一面の草原がひろがっています。草原を少し歩くと草原がお花畑に変わっています」

「そのお花畑に仰向けに倒れこみました。やっと頂上にたどりついたという気分になります。はい。このときの気分を覚えておいてください。このすがすがしい、何ともいえない心地よい気持ちが自分の内側にある安らぎの場所です。

この安らぎの場所で静かに安らかに浸ってください。心地よさをあじわってください。そうしているとフッと頭に浮かんできたりします。

決して頭で考えて探さないでください。自然に浮かんでくるのを待ちましょう。いくら待っても浮かんでこないときもありますが、落ち込む必要はありません。日常生活を送っているときにフッとおもいつくこともあるのです。しばらくこの安らぎの場所をあじわってください」

「あじわえましたか」とショウにたずねた。

「はい」

「なにかやってみたいことがわかりましたか」

「なんかガーデニングにひかれますね。あ、いや、男がガーデニングなんておかしいですね。」

「その考え方を変えましょう。ガーデニングが好きならどんどんやればいいじゃないですか。なんの支障もないですよ」

「そうなんですね。でも、周りの目が気になります。」

「他の人のことはおいておきましょう。ご自分のやりたいことをやってみましょうよ」

「・・・やってみます」

「そうです。ご自分のためです」

「ありがとうございました」

とお礼をいって、カフェを後にした。


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