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土の香り  作者: ふみりん
9/9

穏やかな時間

年取るって大変だね

いつの頃からだろう。食べても太れなくなったのは

筋肉が少なくなったせいか、腰が曲がってきた。ご飯を食べる時も首を下げるのが辛そうなので、テーブルを少し高くした。

食事も少しでも栄養のある缶詰が主になってきた。歯も弱くなっているのでドライはふやかしたり、コーヒー豆用のミキサーで砕いたりした。


そんな高齢犬ララは頭はしっかりしていて、来客が来ると嬉しそうだった。母が来た時も口をペロペロ舐めて覆いかぶさろうとする。安心すると昼寝している母の横でスヤスヤ寝ている。大好きなカミュの飼い主さんが来た時も飛びついてコーヒーが溢れてしまった。会えた事がどれほど嬉しかったのかまたまた妬けてしまった。

「今迄に何処にいたの?寂しかったよ」

ララの声が聞こえるようだった。


ララの片目は義眼であるが、片方も白内障が進んで白っぽくなってきた。しかし家の中は大体分かっているのかぶつかる事なく過していた。

眼科通いも月に一度から2ヶ月おきになった。


しかしある日ララが急に暴れ出した。

「どうしたの?ララちゃん」

暫くしてパタンと気を失った。病院に行くとてんかん発作だと言われた。薬は飲んでいたが、それからも何度か発作を起こした。いつもの散歩はゆっくりなのに、この時ばかりは体操選手の様にジャンプしたり、家の中を走り回る。倒れるまでは噛まれないように見守って下さいと主治医に言われた。

「ああ、ララちゃん大丈夫なのかな?」

心配になった私は単身赴任の夫に相談した。夫は暫くして単身先からララの元に戻ってきてくれた。


筋肉が段々なくなって、散歩もハーネスを着ける様になり、距離も少しになった。

「帰りたいな」

ララの気持ちが伝わって、外の空気を吸ってオシッコしたらすぐ帰る日が続いた。


力が大切な事も痛感した。踏ん張る力の弱いのでウンチを出すのが大変だった。ウンチを出そうと力を入れすぎて足から出血していた。主人が痛くないようにと包帯を巻いて寝かせた。


「あーっ、ララちゃんウンチしてる」

オムツはかぶれるので余り使わなかったが、踏ん張って、やっとウンチを出したようだ。

朝起きるとララをタオルで拭き、ゲージの中や外を掃除するのが日課になった。痩せたララは寒がりで暖かい服を着るようになった。炬燵の中に寝かせたりもした。若い頃には考えられない事だった。お風呂に入れると痩せた体に涙がでた。12キロ位あった体重が半分位になってきたときは本当に心配した。


3月3日に18才を迎えて、「ララちゃんお誕生日おめでとう、今年も桜見ようね」と声をかけた。

3月の終わりにいつもの桜を見に出かけた。抱っこして、首を支えて写真を撮った。

「良かったね。桜見れて、綺麗だね」


昼休みに自宅に帰って、ララの様子を看ていたが、その日は主人が昼まで家に居たので帰らなかった。夕方帰宅すると、ララが泣いていた。

「ごめんなさいね。今オシッコ行こうね」

いつもの様にハーネスを付けて玄関に出た。するとすぐオシッコとウンチが出た。

「ララちゃん」と声をかけると何だかいつもと違うのに気がついた。

「まだ、大丈夫」

自分に言い聞かせて病院に向かった。


「ララちゃん、頑張りましたね」

先生から声をかけられた。

その後こらえていた涙が噴き出した。

夫は電話に出られなかったので、娘や母、妹に泣きながらララの最期を伝えた。


暫くは色々後悔していた。その日の昼休み帰らなかった事。オシッコした後病院行かずにしっかり抱きしめていた方が良かったのではと寂しい日々が続いた。


しかし今は我が家に来てくれたララに感謝している。

私を待っていてくれて本当にありがとう。



18才まで一緒に暮した柴犬ララは高齢になって歩くのも大変そうだった。天国に旅立つ前に私を待っていてくれて感謝します。ララちゃん、ありがとう。

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