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土の香り  作者: ふみりん
8/9

家族旅行

初めてのお泊りはドキドキしたよ!

人も年を取ると今迄に出来ていたことが出来なくなる。犬も同じだ。


片目になったララは最初バランスを取るのが大変で、色んな所にぶつかるようになった。若い時は昼は外で夜だけ家で寝ていたが、手術をきっかけに家の中で過ごすようになった。子犬は可愛い。しかし老犬には何とも言えない愛おしさがある。年を取って甘えてくるララがたまらない。


「ララちゃん、旅行行こうか?」

いつもお留守番ばかりしているララと家族で箱根に出かけた。初めての旅行にララは興奮していた。桜を見たり、湖近くの公園を散歩したりした。

「もう、何処行くのかな?胸がドキドキしてねむれないよ」

見た目は若いが13才のララは人で言うと立派な中年だ。はしゃぎたいがすぐ疲れる。車のドライブも両足でしっかり立って後を見張っている。

「悪い人が襲ってこないかな?」

休まず立っているので疲れないか心配だった。


犬も一緒の部屋に泊まれるペンションに着くと、数組の家族が宿泊していた。食事も一緒だったが、他の家族や犬がいてララは落ち着かない。寝る部屋も初めて一緒だったので興奮してずっと歩き回っていた。

「今日は、パパもママもお姉ちゃん達も一緒だ!」

「嬉しいな」


「お願いだから寝てちょうだい」

皆の願いが聞こえたのかいつもより大分遅かったが寝てくれた。


翌日朝の散歩は家族全員でとっても嬉しそうだった。

土や犬の匂いに安心したのか、ララはドンドン進んでいった。

「まだまだ歩けるね」

ホッとした私はララとの時間がもっともっと続いて欲しいと願った。


犬の生理は高齢になっても続く。ある日体調が急に悪くなって夜間救急病院で診てもらった。色々検査して貧血と子宮に炎症がおきていた。翌日いつもの先生に診てもらうと子宮を摘出する方が良いと言われた。高齢のララに大丈夫だろうか?

手術後病院に会いに行くと帰りたそうにしている。

「ママ、早くお家帰りたいよ」

翌日病院から電話がかかってきた。

「ララちゃん、何も食べないから退院しましょう」

前の時もそうだったが、ララは環境が変わると食事が喉に入っていかないらしい。

「可哀想な事をしたかも」

胸が痛んだ。


手術後元気になったララと散歩した。

「歩こう、歩こう、私は元気、歩くの大好き、どんどん行こう!」

この曲を歌いながらララを勇気づけ、自分を勇気づけ毎日を過していたことが懐かしい。

歩いて、土の匂いを嗅いで、今を生きていると実感していたのだろう。


記憶の中のララはいつも元気でウキウキしている。




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