フェロモン
人の数倍早く成長するララはあっという間に大人になった。
「ララちゃん、おめでとう」
1年もしないうちに生理が始まった。
犬の成長は人の数倍速いという。
急いで生理パンツとナプキンを買いに行った。しかし着けたら直ぐにとってしまった。多少汚すことはあったが殆ど自分で舐めていた。気持ち悪くならないか心配だったがララは高齢になって子宮の手術をするまで自分で処理していた。
出来るだけ自然な形でと言う事で避妊手術をしなかったが、病気になった時は早めにしておけばと後悔した。
ララが生理になると、近所の雄犬が興奮する。数軒先の犬は朝早くから遠吠えしている。またある時は遠くの牧羊犬が散歩中にピタッと静かにララの背後に来ていた。ララのフェロモンは人と違って3週間位出ていた。雄犬には申し訳ないことをしたのかもしれない。
人も発情すると異性を求める。それが愛であれば美しいし、そうでなければ悲劇だろう。ララも生理の度に雄犬に恋したかったのだろうか?母になることなく一生を終えた事に後悔はなかったのだろうか?
「ララちゃん、散歩行こう」
いつものコースを通っていると、門の前で猫がじーっと見ている。知らんぷりして通ろうとすると
「シャーッ」と言ってララに飛びかかってきた。
「猫が飛びついてきた」ビックリした私はララを抱っこして走った。
「怖かったね、ララちゃん」
暫くは違うコースを散歩した。
猫の気持ちはわからないが、きっと猫のテリトリーだったのだろう。自分より大きな犬にも向かって来る猫はやはり苦手だ。
ララはお腹を見せるのが嫌いだ。ゴールデン・レトリーバーが主人の前で自らお腹見せているのを見ると羨ましく思う。ララは私達に心を許していないのかと寂しく思う時もある。部屋で無理やりお腹をさすっても力いっぱい抵抗してくる。
「ママ、止めて」
一緒にはいるけど、私は私なのと誰にも服従しない柴犬の頑固さを示しているようだった。
人の言葉を犬は理解する。ララと呼ぶと寄ってくる。
「ご飯食べる?」と話すと走ってくる。1番反応が良いのは散歩行くだ。「行く」と聞いただけで目がキラキラしてシッポを振って玄関に行き、お座りしている。そんなララに私は何度か助けて貰った。祖母や父が亡くなった時、仕事が上手くいかなかった時、子育てで大変だった時、そばにいて、一緒に散歩に行くと何だか元気が出た。夕日を見たり、満月を眺めたりした。ララは私が泣いていると優しくスリスリしてくれた。
ありがとう、ララちゃん
どういたしまして、ママ